飴の日 (記念日 9月6日)
「水無飴(みなしあめ)を造ろう。もし飴ができれば、武器を使わずとも天下を治めることができるだろう」——これは日本最古の正史のひとつ、『日本書紀』の神武天皇記に記された言葉です。天皇が平瓮(ひらか)を用いて水なしに飴を作ろうと試み、実際に飴が出来上がったとされるこの記述が、「飴の日」の日付の根拠となっています。飴はそれほど古くから、日本人の生活や文化と深く結びついてきた甘味だったのです。
その飴の文化を現代に伝えようと立ち上がったのが、長野県松本市の老舗飴屋三店による「松本飴プロジェクト」です。創業1672年(寛文12年)の山屋御飴所をはじめ、新橋屋飴店、飯田屋製菓という三店が手を組み、記念日の制定を申請しました。2019年(令和元年)に一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録され、「飴の日」として正式に誕生しました。
なぜ松本で飴なのか、と思う方もいるかもしれません。信州松本は内陸特有の乾燥した気候が続く土地ですが、その一方で豊かな湧き水に恵まれています。江戸時代、職人たちはこの清らかな水と、安曇野で獲れたお米を原料に飴を丁寧に炊き上げていました。乾燥した気候は保存にも適しており、飴づくりの産地として自然と根付いていったようです。
現在も松本の老舗では米飴を主原料とした、素朴でやさしい甘さの飴が作り続けられています。原料はシンプルながら、炊き方や引き方など職人の技が風味を左右する奥深い世界です。毎年1月には「松本あめ市」も開かれ、地元の人々にとっても年の初めを告げる風物詩となっています。「飴の日」には飴作り体験などを通じて「飴の街・松本」をPRする取り組みも行われています。コンビニでも手軽に買えるようになった現代だからこそ、飴の長い歴史や職人の仕事に改めて目を向けてみるのもよいかもしれません。何気なくなめている一粒の飴に、古代から続く甘さの物語が詰まっています。