いずし時の記念日 (記念日 9月8日)

いずし時の記念日

兵庫県豊岡市出石町の中心部に立つ「辰鼓楼(しんころう)」は、高さ約13メートルの木造三層建て。日本最大かつ最古の現役時計台として知られ、1871年(明治4年)に太鼓で時を告げる太鼓櫓として誕生しました。その後、1881年(明治14年)9月8日に機械式大時計が取り付けられ、現在に至る姿になりました。「いずし時の記念日」は、この初号機が動き出した日を記念して制定されています。時計台への転換には、一人の医師の物語が深く関わっています。出石藩の藩医・池口忠恕(いけぐち ちゅうじょ)が大病を患った際、多くの出石町民が病気快癒を祈願しました。回復を果たした忠恕は、町民たちの厚意に感謝の意を示すため、辰鼓楼に機械式の大時計を寄贈したのです。一人の医師の生死をめぐる人々の絆が、町のシンボルを生み出したともいえます。

辰鼓楼が立つ出石は、「但馬の小京都」とも称される城下町です。1604年(慶長9年)、小出吉英によって築かれた出石城の城下として発展し、整然とした町割りが今も残ります。関西屈指のそば処としても名高く、江戸時代中期に信州から移住した蕎麦職人が技術を伝えたとされる「出石皿そば」は、小皿に盛り付けて食べるスタイルが特徴で、全国から訪れる観光客を集めています。

辰鼓楼の外観は、1881年当時のままを保っています。一方、時計本体はすでに3代目が時を刻んでいます。初号機から140年以上、出石の人々の暮らしとともに時を刻み続けてきたことになります。「いずし時の記念日」は、但馬國出石観光協会が2021年(令和3年)に認定・登録し、この時計台と城下町の歴史を広く伝えることを目的としています。