国産ロケット初打ち上げの日 (記念日 9月20日)

国産ロケット初打ち上げの日

全長5.93メートル、重量378キログラムの機体が、秋田県道川海岸から空へ放たれました。1957年(昭和32年)のこの日、東京大学生産技術研究所の糸川英夫博士が率いるチームが打ち上げた観測用ロケット「カッパ4C型1号機」は、高度約4万5000メートルに到達し、搭載したガイガーカウンターで宇宙線の観測に成功しました。これが日本における国産ロケット初の実験成功として歴史に刻まれた瞬間です。道川海岸が発射場に選ばれた理由は、広大な太平洋に面しており、打ち上げ方位の自由度が高く、万が一の落下事故が起きても市街地への被害を防ぎやすいという立地条件があったからです。東京大学生産技術研究所は1955年にこの地に秋田ロケット実験場を開設し、小型ロケットの試験を重ねてきました。その積み上げがカッパ4C型によって実を結びました。

糸川英夫博士は、1950年代初頭から国産ロケット開発を牽引した人物であり、「日本の宇宙開発・ロケット開発の父」と称されています。全長わずか23センチメートルの「ペンシルロケット」を1955年に水平発射実験で初めて飛ばし、そこから段階的に機体を大型化していきました。カッパシリーズはその延長線上にある観測用ロケットであり、単なる飛翔実験にとどまらず、科学的なデータ取得を目的としていた点が画期的でした。

カッパ4C型が観測した「宇宙線」とは、宇宙空間から絶え間なく降り注ぐ高エネルギーの粒子線のことです。大気圏内では大気に遮られて直接観測しにくく、成層圏上部まで到達できるロケットを使うことで初めて精度の高い計測が可能になります。高度4万5000メートルという到達点は、現在の旅客機の巡航高度(約1万メートル)の4倍以上に相当する領域であり、当時の国産技術としては驚異的な成果でした。

この成功は、同年に始まった国際地球観測年(IGY)への日本の参加とも連動していました。世界各国が協調して地球・宇宙の科学観測を進めるこの国際プログラムに、日本もロケット技術を武器として名乗りを上げることができました。道川から打ち上げられた一本のロケットは、日本の宇宙科学が国際舞台へ踏み出すための第一歩でもありました。