接着の日 (記念日 9月29日)

接着の日

毎年9月29日は「接着の日」です。「くっ(9)つ(2)く(9)」という語呂合わせにちなんで制定されたこの記念日は、日本接着剤工業会が接着剤の機能や技術を広く知ってもらうことを目的に設けました。一般社団法人・日本記念日協会にも認定・登録されており、接着剤業界の活性化を目指す取り組みの一環として位置づけられています。接着剤の歴史は、現代技術をはるかに遡ります。石器時代の人類はすでに天然アスファルトを使って石の矢じりを木の柄に固定しており、約6000年前には漆で修繕された土器の存在も確認されています。日本では肉食の習慣が少なかったこともあり、ウルシの樹液である漆や米を原料とするでんぷんのりが古くから活用されてきました。襖や障子を仕立てる際のでんぷんのりは、日本の住文化と接着剤が深く結びついていた証です。

現代の接着剤は、その用途の広さと性能において驚くべき進化を遂げています。自動車1台には約100kgもの接着剤が使用されており、新幹線にいたってはドラム缶約2本分に相当する400kgもの接着剤が、窓ガラスの固定や床材の施工などに活躍しています。さらに意外なところでは、瞬間接着剤が開発当初に戦時中の応急縫合代替品として使われていたという事実があります。皮膚を素早く接着するその性質が、医療の現場でも注目されたのです。

日本の接着剤市場は2024年に約22億米ドル規模と推計されており、年平均約5%の成長が見込まれています。用途別では建築・合板向けが大きな比重を占める一方、近年は電気自動車の普及を背景に自動車用接着剤が急伸しており、2024年の国内出荷実績では前年比33%増という高い伸びを記録しました。軽量化と高強度を両立できる接着技術は、素材をボルトで締結する従来工法では実現しにくい設計の自由度をもたらすため、次世代モビリティの分野でもその重要性が増しています。

日本接着剤工業会は1966年(昭和41年)6月に設立され、2016年に50周年を迎えました。同工業会は消費者や産業界が安心して接着剤を使えるよう、日本接着剤工業会規格(JAI規格)を自主的に制定し、品質基準や試験方法の標準化を進めています。「人と人とをくっつける。人と暮らしをくっつける」という同工業会のスローガンは、接着剤が単なる工業資材にとどまらず、人々の生活や社会インフラを支える存在であることを端的に示しています。接着の日は、その縁の下の力持ちの存在に改めて目を向ける機会です。