フェローとは？学術から企業まで広がるその役割と意義

フェローとは？

フェロー（fellow）とは、フェローシップ（fellowship）の略語で、「仲間であること」「交友」「共同体、組合」「同好の集まり、趣味の会」などを意味します。元々は仲間や友達といった意味合いを持つ言葉ですが、特に学術や研究の分野では「大学の特別研究員」などの意味でも使用されます。

フェローの概念は、国や業界によって異なります。以下では、イギリス、日本、医学界、企業などの異なるコンテキストでのフェローの使われ方を詳しく解説します。

イギリスにおけるフェロー

イギリスにおいて、フェローは以下のような位置づけを持ちます。

• 研究費を支給されている大学の特別研究員
• 卒業生から選抜された者で運営に意見ができる大学の評議員
• 運営に直接携わる学術団体の特別会員

このように、大学や学芸団体において著しい成果を残した人に与えられる役職が、イギリスではフェローと位置づけられています。

日本におけるフェロー

日本では、フェローは主に研究職に従事する者を指しますが、大学と企業での使われ方には違いがあります。

大学におけるフェロー

日本の大学においてフェローは、研究職に従事する者を指すことが多いですが、特定の分野で著しい成果を残した人に授与される「フェロー称号」を持つこともあります。これは大学ごとに独自の基準で設定されています。

企業におけるフェロー

日本の企業においてフェローと呼ばれるのは、専門領域を極めてその企業の技術開発に大きく貢献した人物です。また、国内外から高い評価を受けた人がフェローに任命されることもあります。例えば、2019年のノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏は、旭化成の名誉フェローという肩書きを持っています。

医学界におけるフェロー

医学界でもフェローはよく使われる肩書きです。ただし、国によってその意味は異なります。

日本の医学界

日本では、3年目以降の若手医師を「修練医」「専攻医」「フェロー」と呼ぶことが多いです。これらの若手医師は研修医として大きく括られますが、その分野を3年以上学び、現場でも十分に動ける能力を持っています。患者が不安に思わないように「修練医」「専攻医」「フェロー」と呼ぶことがあります。

外国の医学界

アメリカやオーストラリアでは、トレーニングを終了して「専門医」となった時点でフェローと呼びます。トレーニング中の研修医はアメリカでは「レジデント」、オーストラリアでは「レジストラ」という位置づけです。

フェロー制度のメリット

大学や企業、団体がフェロー制度を導入する理由は、次のようなメリットがあるからです。

• 卓越した実績を持つ人材を取り入れて、組織の競争力を高める
• 従業員の持つ専門性を経営に生かす仕組みを強化する
• 新たなビジネス領域や顧客企業の開拓を通じて企業の価値を向上させる
• 専門性の高い従業員のモチベーションを高める

フェロー制度を導入することで、組織に属する人もより良い経験と実績を積むことができます。

フェロー制度の導入事例

高い技術や豊富な知識を持つ人を「フェロー」として設定し、他より高い処遇を与える制度がさまざまな組織で導入されています。以下はその一例です。

三菱ケミカル

三菱ケミカルは、次に該当する人材を「フェロー」「エグゼクティブフェロー」として任命する制度を導入しています。

明治安田生命

明治安田生命は、卓越した知見と実績を持つ専門性の高い人材を「シニア・フェロー」「フェロー」とする制度を2020年より導入しています。経営基盤を支える専門分野を定め、各分野を牽引する人材を「プロフェッショナル職制」に登用しています。

東京大学

東京大学は、部局における教育研究活動に対して助言、または支援等を委嘱された者のうち、次に該当する場合、「Global Fellow」の称号を付与する制度を導入しました。

• 外国の大学、もしくは研究機関に所属する教員や研究者で顕著な業績を有している者
• 外国の大学、もしくは研究機関に所属する教員や研究者で、グローバルな教育研究活動の推進の助けをすると認められる者

信州大学

信州大学は、意欲を持った博士課程の優秀な学生に対して「共創フェロー」というポジションを与えています。また研究に専念できる環境を提供する「信州産学共創フェローシップ制度」も創設しています。

日本機械学会

日本機械学会は、学会を代表するにふさわしい技術者をフェローと認定しています。フェロー制度の導入によって海外の姉妹学会との連携が深まり、会員が国際社会で活躍する足がかりとなりました。

コード・フォー・ジャパン

コード・フォー・ジャパンは、企業の従業員を自治体職員として派遣するフェロー制度を実施しています。地元の市民団体とともに地域の課題解決を行っています。

フェロー制度に対する国家の支援

政府が大学のフェロー制度を支援する取り組みも行われています。目的は博士人材・研究者の育成を支援することです。

科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ創設事業

「大学フェローシップ創設事業」は博士後期課程学生の処遇向上やキャリアパスの確保を目的とした、文部科学省による大学への補助金制度です。この取り組みには「ボトムアップ型」と「分野指定型（情報・AIや量子、マテリアルなど）」の2つがあります。

フェロー制度の導入は、組織や企業にとって多くの利点をもたらします。卓越した知識と経験を持つ専門家が組織に加わることで、競争力が向上し、革新が促進されるのです。