扶養家族の基本と税法・社会保険の違いを徹底解説
ベストカレンダー編集部
2024年05月22日 11時51分
扶養家族とは
扶養家族とは、自分の収入で養っている家族を指します。具体的には、家族の生活費や教育費などを負担している場合、その家族は「扶養家族」となります。扶養家族は、税法と社会保険の両方に関連しており、それぞれの制度で異なる条件やメリットがあります。
例えば、会社勤めのA氏が自分の収入で小学生の子どもを育てている場合、その子どもはA氏の扶養家族となります。しかし、税法と社会保険では扶養家族の条件が異なるため、注意が必要です。
以下では、税法と社会保険における扶養家族の条件や対象範囲、メリットなどについて詳しく解説します。
税法上の扶養家族
税法上の扶養家族とは、配偶者以外の親族(六親等内の血族および三親等内の姻族)を指します。配偶者は「扶養家族」に含まれませんが、配偶者が無職の場合は「配偶者控除」や「配偶者特別控除」という別の枠で控除が受けられます。
税法上の扶養家族の条件は以下の通りです:
- 納税者と生計を一にしている
- 合計所得金額が48万円以下
- 青色申告者の専従者として給与を受けていない
- 白色申告者の専従者ではない
「納税者と生計を一にしている」とは、生活費や教育費などを負担していることを意味します。必ずしも同居している必要はありません。扶養家族の所得条件は「48万円以下」であり、給与収入が103万円を超えると条件から外れます。
具体的な計算方法は以下の通りです:
(給与収入)103万円-(給与取得控除)55万円=(合計所得金額)48万円
税法上の扶養家族のメリットとして、所得控除の対象となり、本人の所得税や住民税などの税負担が軽減されます。
社会保険上の扶養家族
社会保険上の扶養家族とは、本人の直系尊属・配偶者・子・孫および兄弟姉妹を指します。配偶者が事実婚であっても扶養家族として認定される点が特徴です。
社会保険上の扶養家族の条件は以下の通りです:
- 年収130万円未満
- 対象者が本人(被扶養者)の年収の半分未満
- 75歳未満
年収130万円未満が基本ですが、被扶養者の年収が260万円未満である場合は、年収が130万円未満であると同時に、被扶養者の年収の半分未満でなければ扶養家族となることはできません。被扶養者の年収により扶養家族になれる年収条件が異なる点に注意が必要です。
社会保険の扶養家族のメリットとして、扶養家族は自分で社会保険料を支払う必要がなく、被扶養者の勤務先が発行する健康保険証を利用できる点があります。また、厚生年金に加入している配偶者の扶養家族となった場合、「国民年金第3号被保険者」として扱われ、将来国人年金を受け取ることができます。
扶養家族の手続き
扶養家族になるためには手続きを行わなければなりません。税法と社会保険の手続きは異なります。
従業員から「子どもが生まれた」「結婚して配偶者を養うこととなった」「親を養うことになった」といった問い合わせが来た場合、会社で手続きを行わなければなりません。
一般的な流れについてみていきましょう。
税法
税法の扶養に入れる場合は、毎年、年末調整時に出す「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」内に必要事項を記入してもらいます。税法では、12月31日の扶養者数で税金の計算を行うことを把握しておきましょう。
年末調整を出した後で、年内に親を扶養することになったと従業員から届け出があった場合はタイミングにより処理方法が異なります。社内で訂正が出来る場合は、訂正を行いましょう。既に、届出を済ませている場合は、従業員本人に確定申告を行ってもらう必要が生じます。
社会保険
社会保険の扶養に入れる場合は、被扶養者となる事実が発生した日から5日以内に「健康保険被扶養者(異動)届」と必要な添付書類を、所轄の年金事務所や所属している健康保険組合などに提出します。郵送・窓口持参・電子申請といった提出方法が可能です。
必要な添付書類は次のとおりです:
- 被保険者との続柄が分かる書類:戸籍謄本・戸籍抄本・住民票の写しなどいずれか1つ
- 収入要件確認の書類:退職者の場合「退職証明書」「雇用保険被保険者離職票の写し」など
- 年金受給者の場合「年金額の改定通知書の写し」など
- 別居中の家族に仕送りしている場合は、仕送りが証明できるもの(通帳の写しなど)
扶養家族のメリットとデメリット
扶養家族にすると、税法と社会保険それぞれにメリットが生じます。詳しく見ていきましょう。
税法
扶養家族がいると所得控除の対象となります。そのため、扶養家族がいない場合と比較して、本人の所得税や住民税などの税負担が低くなる点がメリットです。
社会保険
社会保険の扶養家族になると、扶養家族は自分で社会保険料を支払う必要がありません。社会保険料の負担がないまま、被扶養者の勤務先が発行する健康保険証を利用できる点がメリットです。健康保険料の支払い負担なく、医療機関を3割負担の医療費で受診できます。
また、厚生年金に加入している配偶者の扶養家族となった場合、「国民年金第3号被保険者」として扱われるため、将来国人年金を受け取ることができます。第3号被保険者は保険料の支払いが不要です。
扶養家族の収入上限
扶養家族の収入上限は、所得税・住民税と社会保険についてそれぞれ異なります。以下の表にまとめました。
項目 | 所得税・住民税 | 社会保険 |
---|---|---|
給与収入額(年間) | 103万円以下 | 130万円未満 |
所得額または収入額 | 48万円以下 | 130万円未満 |
パートやアルバイトとして給与収入だけを得ている方は「給与収入額(年間)」をご参照ください。副業などによって給与以外の収入がある方は「所得額または収入額(年間)」をご参照ください。
まとめ
扶養家族とは、自分の収入で養っている家族を指します。税法と社会保険の両方に関連しており、それぞれの制度で異なる条件やメリットがあります。税法上の扶養家族は、配偶者以外の親族(六親等内の血族および三親等内の姻族)が対象であり、所得控除の対象となります。社会保険上の扶養家族は、本人の直系尊属・配偶者・子・孫および兄弟姉妹が対象であり、社会保険料の負担がなくなります。
扶養家族の手続きや条件については、税法と社会保険で異なるため、注意が必要です。扶養家族のメリットを最大限に活用するためには、各制度の条件や手続きを正しく理解することが重要です。
さらに詳しい情報や具体的な手続きについては、以下のリンクを参考にしてください: