間質性肺炎の原因と治療法を徹底解説
ベストカレンダー編集部
2024年05月23日 14時52分
間質性肺炎とは
間質性肺炎は、肺の間質と呼ばれる部分に炎症や損傷が生じる病気です。間質とは、肺胞の壁やその周囲にある結合組織のことを指します。間質性肺炎は、肺胞壁が硬くなり、ガス交換がうまくできなくなることで、呼吸困難や咳などの症状を引き起こします。
間質性肺炎の発症メカニズムは、さまざまな原因によって引き起こされることがあります。例えば、関節リウマチや皮膚筋炎などの膠原病、職業上や生活上での粉塵やカビ、薬剤の使用などが挙げられます。しかし、原因が特定できない場合も多く、そのような場合は「特発性間質性肺炎」と呼ばれます。
間質性肺炎の分類
間質性肺炎は、以下の3つの視点から分類されます。
- 発病の経過
- 原因
- 病気により変化した肺の形態
発病の経過に関しては、急性と慢性の2つに分けられます。急性間質性肺炎は数日から数週間で急速に進行し、慢性間質性肺炎は数か月から数年にわたってゆっくりと進行します。
原因に関しては、特発性(原因不明)と膠原病性、その他の原因に分けられます。膠原病性間質性肺炎は、関節リウマチなどの膠原病に合併することが多いです。その他の原因としては、薬剤、カビ、羽毛、石材、アスベスト、超硬合金などの吸入があります。
病気により変化した肺の形態に関しては、通常型、非特異性、器質化肺炎などの形で分類されます。この中で、通常型が最も多く見られます。
間質性肺炎の症状
間質性肺炎の主な症状は、息切れと咳です。息切れは、最初は階段の上りや荷物を持った時に感じられますが、病気が進行すると部屋の中の移動や服の着脱でも起こるようになります。咳は一般に痰を伴いませんが、乾性咳嗽と呼ばれる痰を伴わない空咳が特徴です。
また、間質性肺炎の患者は、胸部のレントゲンやCTの異常が受診の動機となることが多いです。病気が進行すると、安静時にも呼吸困難を感じるようになります。
間質性肺炎の診断
間質性肺炎の診断には、レントゲンやCTといった画像検査が重要です。胸部レントゲンでは、肺が縮小し、肺の下側がうっすら白くなります。CT検査が診断の中心となり、間質性肺炎の有無や形の分類、重症度など多くの情報が得られます。
さらに、KL-6やSP-Dという採血項目で病気の活動性を評価し、呼吸機能検査の肺活量、肺拡散能や血液中の酸素濃度の低下の程度で病気の重症度を評価します。また、気管支鏡を使って行う気管支肺胞洗浄や肺生検も補助的に行われます。
間質性肺炎の治療
特発性肺線維症(IPF)の場合、抗線維化薬(ピルフェニドン、ニンテダニブ)が使用されます。これらの薬は進行抑制が現実的な目標となり、治療薬による治癒が困難なため、進行を遅くする効果があります。また、急性増悪の抑制効果も示されており、特発性肺線維症の生存期間を延長することが期待されています。
一方、特発性肺線維症以外の特発性間質性肺炎では、ステロイド薬などの炎症を抑える薬が使用されます。特発性非特異性間質性肺炎(NSIP)や特発性器質化肺炎(COP)では、ステロイド薬がまず使われますが、病気が進行する場合は抗線維化薬の投与が考慮されます。
また、年齢が比較的若いにも関わらず、呼吸不全に至るような患者では、一定の厳しい基準を満たすことを確認した上で、肺移植の適応も検討されます。さらに、病気が進行し、酸素を十分取り込めないようになった場合には、在宅酸素療法が実施されます。必要であれば、呼吸リハビリテーションも行われます。
間質性肺炎の予後と療養
特発性肺線維症(IPF)の経過は個々の患者さんにより様々で、一般的には慢性経過で肺の線維化が進行する疾患です。平均生存期間は、欧米の報告では診断確定から28-52ヶ月、わが国の報告では初診時から61-69ヶ月とされています。ただし、患者さんごとにその差は大きく、経過の予測は困難です。
また、風邪の様な症状のあと数日内に急激に呼吸困難が進行する急性増悪が経過を悪化させることがあります。特発性肺線維症で亡くなる方の40%程度を占めるとされています。さらに、肺がんの合併も多く、10%程度の方が肺がんで亡くなります。
特発性肺線維症の患者さんは、無理のない日常生活を心がけ、感冒には特に注意を払い、予防や適切な治療を受けることが重要です。
間質性肺炎の日常生活での注意点
日常生活では、禁煙とともに、過労や睡眠不足など体に対する負担を減らすような生活を行うことが重要です。また、呼吸リハビリテーションも重要で、適度な運動を定期的に続けるよう心掛けることが推奨されます。
過食や体重増加は呼吸困難が増強する可能性があるため、適正体重を保つことも重要です。一方、間質性肺炎が進行すると体重が減少し、経過が不良となることから、バランスのとれた食事により体重を維持することが求められます。
感染予防もきわめて重要で、間質性肺炎の急性増悪は上気道感染(風邪のような症状)がきっかけとなることが多いです。冬季には外出時のマスク着用や手洗い・うがいの励行、インフルエンザや肺炎球菌、新型コロナなどの予防接種を受けることが推奨されます。
間質性肺炎の未来の展望
間質性肺炎の治療法はまだ限られており、完全な治癒は難しいとされています。しかし、近年の研究により新しい治療法が開発されており、今後の進展が期待されています。
例えば、抗線維化薬の効果をさらに高めるための研究や、新しい薬剤の開発が進められています。また、遺伝子治療や細胞治療など、革新的な治療法の研究も進行中です。これらの研究が実用化されれば、間質性肺炎の治療に大きな変革をもたらす可能性があります。
さらに、間質性肺炎の早期発見や予防に関する研究も重要です。例えば、リスク因子の特定や、早期診断のための新しい検査法の開発が進められています。これにより、間質性肺炎の発症を予防し、早期に治療を開始することが可能になるでしょう。
間質性肺炎の患者さんやその家族にとって、日常生活での注意点を守りつつ、定期的な検査や医師の指導を受けることが重要です。また、新しい治療法や予防法の研究が進む中で、最新の情報を常に把握し、適切な対応を行うことが求められます。