スマホソフト競争促進法施行後の新規約問題
ベストカレンダー編集部
2026年1月29日 16:30
スマホソフト法全面施行
開催日:12月18日
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全面施行された「スマホソフトウェア競争促進法」とMCFの立場
一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム(以下、MCF)は、2026年1月29日15時00分付の発表で、2025年12月18日に我が国で全面施行された「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律(以下「スマホソフトウェア競争促進法」または「本法」)」についての見解を示しました。MCFはモバイル・エコシステムの寡占に起因する弊害の解消や多様な主体によるイノベーション活性化を求める立場から、本法の全面施行を歓迎しています。
本法は代替アプリストアの提供妨害禁止、代替決済手段や関連ウェブページ利用妨害の禁止など幅広い規制を設けています。MCFは、公正取引委員会を中心とする政府の対応を高く評価すると明示しつつ、現実に法の理念が効果を発揮するかは今後の運用・執行に依存する点を指摘しています。業界団体としての立場から、死活的な関心を持って対応を注視する意向を示しています。
Apple、Googleの新規約に対するMCFの具体的要望
MCFは指定事業者(Apple、Google)が本法全面施行に伴って公表したアプリ配信に関する新規約等に対し、手数料や契約条件の点で重大な課題があると指摘し、適正な法執行と早急な改善を強く要望しています。特に代替決済手段や関連ウェブページの利用について無償であるべきとの原則が新規約で担保されていない点を問題視しています。
以下、MCFが整理した主要な懸念点を項目別に詳述します。これらはいずれも本法の該当条項(特に第6条、不公正な取扱いの禁止、第8条(優越的地位の濫用の禁止)第1号・第2号)との関係で論点化されています。
1. 無償性の原則に反する根拠不明の手数料課徴
MCFは、代替決済手段や関連ウェブページへの誘導が無償であるべきだと明確に主張していますが、指定事業者の新規約では根拠が明らかでない手数料が課されており、結果として代替決済手段や関連ウェブページの利用が実効的に妨げられているとしています。
MCFはこれを優越的地位の濫用であり、本法第8条第1号及び第2号に違反すると考えています。また、米国市場では誘導が実質的に無償で運用されている点を挙げ、我が国でも同等の誘導条件(イコールフッティング)の確保を要望しています。
- 主張点:関連ウェブページへのリンクは一般的なインターネットの仕組みに基づくものであり、販売・決済システムはアプリ事業者が自ら構築しているにもかかわらず手数料を課される。
- 比較事例:米国市場ではリンク誘導が無償で運用され、アプリ事業者の収益改善とイノベーション促進に寄与している。
2. 7日間/24時間ルールによる広範囲な手数料徴収
指定事業者は、アプリからリンクアウトした関連ウェブページでの7日間または24時間における当該ユーザーによるすべての取引内容を報告させ、手数料を課すという取引条件を設定しているとMCFは指摘します。
この条件は、当該アプリで選択したデジタル商品が1個であっても、リンク先でユーザーが多数の商品を購入した場合にそれらすべてに手数料が課されるなど、根拠が乏しく常識的に受け入れがたいものであり、本法第8条第2号に違反すると問題提起しています。
- 例:アプリで1個を示した購入動線でリンクアウト後に20個購入されても20個に課金される。
- 対象範囲:検索や広告等オフライン起点の取引も含まれる可能性がある点を指摘。
3. ユーザー行動追跡の強制とプライバシー問題
MCFは、上記の広範な手数料徴収を実現するためにアプリ事業者へユーザーの行動追跡と報告を強制する点を問題視しています。指定事業者がこれまで主張してきたプライバシー保護と矛盾するダブルスタンダードであると断じています。
広告分野で適用されるAppTrackingTransparency(ATT)等の枠組みと整合しない強制は、消費者プライバシーよりも自社利益を優先する扱いであり、不公正な取扱いを禁止する本法第6条に抵触するおそれがあるとMCFは考えています。
- MCFのこれまでの取組
- 総務省の「スマートフォン・プライバシー・イニシアティブ(SPI)」に準拠した「アプリケーション・プライバシーポリシー」の普及活動等に共同で取り組んできた事実を挙げています。
- 懸念点
- 追跡・報告の強制は、消費者のプライバシー保護の観点から許容できないとしている。
4. 必要性がないのに指定事業者の決済手段を強制する問題
指定事業者の決済手段を利用していない、または利用する予定がないサービスにまで、必要性がないのに指定事業者の決済手段を強制する行為は、優越的地位の濫用であり本法第8条第2号に違反するとMCFは主張します。
MCFは、代替支払管理役務等と指定事業者の支払管理役務の両方を利用できる選択肢を提供すべきであり、併用を強制することは不当だと指摘しています。また、リーダーアプリのエンタイトルメント利用時の問題や、公正取引委員会とAppleの合意後も不公正な契約条件で普及が進まなかった経緯を示しています。
- 影響例:ブラウザで既に決済を提供するWeb事業者がアプリ展開する際に、指定事業者の決済を強制されると収益・コスト負担が重く事業継続が困難になる。
- その他の影響:玩具や書籍と連動したサービス等でも同様の負担が生じる懸念。
5. 規約改正が追いついていない点の是正要求
MCFは今回の全面施行にあわせて指定事業者から新規約が公表されたものの、既存の規約等には本法に違反する規定が散見されるとして早急な改善を強く求めています。具体的には本法第8条第2号に係る「政令で定める場合」に違反する規約を問題視しています。
令第3条の規定(個別アプリ事業者が本個別ソフトウェアを通じて提供していない商品又は役務を関連ウェブページ等を通じて提供する場合等)に照らし、実務上問題となる具体例を挙げて説明しています。
既存規約の違反例と運用上の問題点
MCFは、AppleとGoogleそれぞれの規約・運用に関する具体的な違反例を指摘しています。Appleのガイドライン3.1.3(b)やGoogleの外部決済API仕様に関する運用上の齟齬など、実務に即した問題点を列挙しています。
以下に指摘された主要な実例を整理します。これらは本法の「政令で定める場合」に該当する可能性があるとしてMCFが問題提起しているものです。
- Apple:ガイドライン3.1.3(b)(マルチプラットフォームサービス)では、アプリ内で販売していない別のデジタルアイテムを外部で販売することが規約上禁止されているが、運用上は黙認されている事例があると指摘。
- Google:規約上はアプリ内と同一でないデジタルアイテムの販売は禁止されていないが、新たな外部決済API仕様はデジタルアイテムを起点とした購入導線となっており、実質的にウェブストア限定のデジタルアイテムをアプリから導線を張って販売することができない構造になっている。
MCFは、こうした運用や仕様は形式的には規約遵守に見えても実態として代替決済手段や関連ウェブページの利用を阻害することになりうると指摘しています。
また、MCFは代替アプリマーケットプレイス等のその他の課題についても今後随時発表していく旨を表明しています。
要求事項と参考資料
MCFは、次のような要求を明確にしています。第一に、指定事業者の規約や運用で本法に抵触する点がある場合は速やかに改正・改善すること。第二に、代替決済手段や関連ウェブページの誘導について米国市場と同等の誘導条件(イコールフッティング)を日本市場でも確保すること。第三に、ユーザーのプライバシー保護と両立しない形での行動追跡や報告を強制しないこと。
参考資料として、MCFが以前に公表した2025年6月12日の意見書へのリンクを提示しています(https://www.mcf.or.jp/mcfxswp/wp-content/uploads/2025/06/mcf_iken_20250612_jftc.pdf)。また、MCFの公式サイト(https://www.mcf.or.jp/)も参照先として示されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表者 | 一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF) |
| 発表日時 | 2026年1月29日 15時00分 |
| 対象法令 | スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律(全面施行:2025年12月18日) |
| 主要懸念点 |
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| 要求 | 適正な法執行、早急な規約改正、米国市場と同等の誘導条件確保、プライバシー保護との整合性確保 |
| 参考資料 |
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本稿では、MCFが示した発表の全文とその意図、指定事業者の新規約に対する具体的な懸念点および要求を整理して紹介しました。法の全面施行は市場構造の改善に向けた重要な一歩ですが、MCFは現行の規約運用が法の趣旨に適合しているかを厳格に点検し、必要な改正を求める姿勢を明確にしています。