製薬思想で香りを解く 新蒸留研究所がSAKE AWARD優勝
ベストカレンダー編集部
2026年3月5日 14:00
SAKE AWARD優勝
開催期間:3月2日〜3月5日
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製薬思想を香りへ転換する試み ― 新蒸留研究所の理念と技術
富山県富山市に本社を置く株式会社MAE(代表取締役:前田大介)が運営する新蒸留研究所は、製薬業で培われた研究手法を香りの世界に応用することを目指す実験的プロジェクトです。プロジェクトは「分ける、分かる、分かちあう。」をコンセプトに掲げ、ボタニカルが持つ複雑な香りを科学的に分析し、理解し、製品化する一連の工程を一貫して行っています。
具体的には、ジンやスピリッツの香り成分をガスクロマトグラフィー(GC)などの香気分析手法で可視化し、製薬分野で培われた処方設計や条件検討といった技術を活用して新たな蒸留製品を設計・製造しています。製薬思想を背景に持つ点が、原料選定や抽出・蒸留の条件設定、品質管理における特徴となっています。
- コンセプト
- 「分ける(分析)・分かる(理解)・分かちあう(製品化)」
- 背景
- 株式会社MAEは富山で60年にわたり外用剤の製造を中心とした事業を展開してきた製薬会社
- 主な技術
- ガスクロマトグラフィー等を用いた香気成分の可視化と製薬的処方設計
ICCサミット FUKUOKA 2026『SAKE AWARD』での挑戦と優勝
新蒸留研究所は、2026年3月2日〜3月5日にヒルトン福岡シーホーク(メイン会場)などで開催されたICCサミット FUKUOKA 2026のプログラム「SAKE AWARD」に出場し、優勝を果たしました。ピッチ登壇者は株式会社MAE執行役員の石川和則で、2日間にわたる審査を経ての受賞となりました。
この受賞は富山県の企業として初の快挙であり、製薬思想に基づく香りの研究とものづくりの取り組みが評価された結果です。大会の詳細はICCサミットの該当ページに掲載されています(https://industry-co-creation.com/news/121817)。
- イベント名:ICCサミット FUKUOKA 2026
- プログラム:SAKE AWARD
- 開催期間:2026年3月2日〜3月5日
- 会場:ヒルトン福岡シーホーク(メイン会場)ほか
- 受賞:新蒸留研究所(株式会社MAE)優勝
- 登壇者:石川和則(株式会社MAE 執行役員)
出品酒と研究の詳細:香りの構造を解きほぐす4つの取り組み
新蒸留研究所がSAKE AWARDに出品した一連の製品は、それぞれ異なる研究テーマと明確な製造方針を持っています。ここでは出品された4つの製品と、それぞれの研究背景・技術的な特徴を詳述します。
各製品は分析結果に基づく処方設計や蒸留条件の調整が行われ、ボタニカルの持つ微細な香気成分を意図的に引き出すことを目標としています。研究は原料栽培(自社農園含む)から抽出・蒸留、熟成に至るまで一貫した管理のもとで行われています。
No.1 「ジンの香りの原点に関する研究」
「ジンを、ジンたらしめる香りとは何か?」という問いに対して、世界中で販売される様々なジンをガスクロマトグラフィーで香気分析した結果を基に開発された製品です。分析により抽出された特徴的な香気成分に着目し、最小限のボタニカルでジン性を表現しています。
処方はジュニパーベリー、コリアンダーシード、アンジェリカルートの3種のみを配合。極めてシンプルな組成ながら、ジンの原点と呼べる香りの核を感じられる設計になっています。分析→処方設計→蒸留という流れが明確に反映された製品です。
No.8 「ラベンダー由来の柑橘香に関する研究」
自社農園で育てたラベンダーから抽出したアロマオイルを起点に、ラベンダーに含まれる柑橘系の香り成分を蒸留条件の最適化によって引き出した製品です。研究タイトルは「ラベンダーの中にライムを探す」。
蒸留条件の微調整によりラベンダーの中の柑橘香を増幅させることで、ジンとの相性が良いライム様の香りを顕在化させています。原料の栽培から抽出までを自社で管理している点が特徴です。
No.10 「琵琶湖蒸溜所における熟成ジンの研究」
琵琶湖蒸溜所との共同開発による製品で、研究テーマは「ウイスキーの表情を持つジン」。「No.1 ジンの香りの原点に関する研究」を基にしたジンを樽熟成させるアプローチを採っています。
使用した樽はオロロソシェリーで12年熟成された後、ピュアモルトウイスキーでさらに3年熟成されたもの。結果として樽香とジュニパー香が調和し、ジンとウイスキー双方の表情を併せ持つ製品が生まれています。
No.3 「緑茶の香気抽出に関する研究」
「お茶よりも、お茶らしい」というテーマで、文久元年(1861年)創業の「北川半兵衞商店」が手掛ける祇園 北川半兵衞と2年をかけて共同開発した製品です。茶葉の選定力と研究所の科学的条件検討が融合した成果として誕生しました。
老舗茶問屋の審美眼により調達された茶葉を対象に、香気抽出と蒸留条件の最適化を重ねることで、従来の淹れたてのお茶以上に「お茶らしさ」を引き出す香気特性を実現しています。
ICCサミット『SAKE AWARD』の位置づけと今回の意義
ICCサミットは起業家、経営者、投資家らが集う国内有数のカンファレンスで、2016年から開催されています。スタートアップのピッチと産業別アワードが組み合わさった仕組みで、日本発のイノベーションや新しいビジネスモデルの発信の場になっています。
「SAKE AWARD」は日本酒・クラフトジンなど日本の酒文化に関係する革新的取り組みを集め、参加者による試飲や評価を通じて優れた事例を選出する企画です。新蒸留研究所の優勝は、製薬思想を持ち込んだ香気研究と製品化のプロセスが、酒文化領域でも高く評価されたことを示します。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 企業 | 株式会社MAE(本社:富山県富山市、代表取締役:前田大介) |
| プロジェクト | 新蒸留研究所(コンセプト:「分ける、分かる、分かちあう。」) |
| 受賞 | ICCサミット FUKUOKA 2026「SAKE AWARD」 優勝 |
| 登壇者 | 石川和則(株式会社MAE 執行役員) |
| 開催期間・会場 | 2026年3月2日〜3月5日、ヒルトン福岡シーホーク(メイン会場)ほか |
| 出品酒(研究テーマ) | No.1 ジンの香りの原点 / No.8 ラベンダー由来の柑橘香 / No.10 熟成ジン(琵琶湖蒸溜所) / No.3 緑茶の香気抽出 |
| 技術的要点 | ガスクロマトグラフィー等による香気分析、製薬分野の処方設計の応用、原料栽培から抽出・熟成までの一貫管理 |
| 関連リンク | 新蒸留研究所 公式サイト / ICCサミット ニュース |
この記事では、株式会社MAEが運営する新蒸留研究所の理念、技術、ICCサミットでの受賞および出品酒の内容を整理しました。研究は香りを構成する要素を可視化することから始まり、処方設計と製造条件の最適化を経て製品化へとつながっています。今回の受賞は、製薬由来の研究手法を香りと酒の領域に応用した取り組みが評価された結果であり、今後の展開に関する示唆を含んでいます。