94%が拠点病院を要望 摂食症支援の地域格差
ベストカレンダー編集部
2026年3月8日 15:03
摂食症相談実態調査
開催期間:7月14日〜11月30日
📅 カレンダーに追加:Google|iPhone/Outlook
地域に広がる支援の「すきま」と拠点整備への切実な要望
一般社団法人日本摂食症協会(旧:日本摂食障害協会)は、2025年7月14日から11月30日にかけて全国の精神保健福祉センター(69か所)を対象に行った「摂食症相談の実態調査」の結果を公表しました。回答は67施設、回収率は97%に達し、調査開始時点で拠点病院が設置されていたのは8都県にとどまる中、支援をめぐる地域差と現場の深刻な状況が明らかになっています。
調査結果は、相談対応の困難さ・リソース不足・拠点整備への期待という三つの構造的な課題を示しており、特に「拠点病院は必要だ」と回答した割合は94%に達しました。こうした数字は、全国どこに住んでいても適切な治療や支援につながる体制整備の必要性を示しています。
調査実施の背景と目的
2025年以降、コロナ禍の影響で患者数の増加や低年齢化が顕著になり、症状の遷延化や高齢化といった新たな課題も浮上しました。こうした状況を踏まえ、日本財団の助成を受けて、地域の精神保健・福祉の司令塔機能を担う全国の精神保健福祉センターを対象に現場の実態を把握するための調査が実施されました。
調査の目的は、各センターが実際にどの程度の相談に対応できているか、どのような障壁があるか、拠点病院などの専門的支援体制に対するニーズや期待を明らかにし、政策提言や支援整備の基礎資料とすることにあります。
調査で浮かび上がった「3つの壁」—数値で見る現場の実情
調査はWEBアンケート形式で実施され、設問数は基本情報+10問(自由記述含む)でした。回答率は67/69施設、97%と高い関心が示されています。結果は支援現場が直面する課題を「対応の壁」「知識・連携の壁」「ニーズの壁」として整理できる内容でした。
以下では、主な設問と得られた回答の要点を具体的に整理します。数値は調査報告に基づくもので、地域ごとのばらつきや現場の声を反映しています。
対応の壁:身体面と精神面の両面支援が難しい
相談に対応しているセンターのうち、身体面と精神面の両方に対応できる施設はわずか18%にとどまりました。一方で、16%の施設は両面とも対応が難しいと回答しています。これは、医療的な対応(栄養管理や身体合併症対応)と精神科的な治療の両輪を同時に整備することの難しさを示しています。
この結果は、特に低年齢で発症するケースや重症化したケースに対して適切な初期対応や継続治療を提供するための専門的資源が不足していることを示唆しています。
知識・連携の壁:専門知識・紹介先不足で現場が孤立
対応が困難だと感じる理由として、複数の要因が上位を占めました。代表的な回答は「ケースの重症化・複雑化」「専門知識の不足」「紹介先となる医療機関の不在」です。これらは人材・研修の不足と医療機関間の連携不足が同時に進行していることを示しています。
現場からは、家族支援のプログラムや研修会、情報提供や医療機関との連携強化のニーズが挙げられ、地域での孤立をどう解消するかが喫緊の課題となっています。
ニーズの壁:拠点病院整備への期待が圧倒的(94%)
「摂食症拠点病院(現在8自治体に設置)は必要か」という問いには、94%が『必要』と回答
拠点病院の整備により、治療可能な施設数の増加、医療レベルの向上、精神保健支援センターの機能をバックアップすることが期待されています。
報告会で交わされた議論:現場と行政、拠点病院の視点
本調査の公表に伴い、2026年2月22日(日)にハイブリッド形式で報告会が開催され、約90名が参加しました。会には全国精神保健福祉センター、拠点病院関係者、行政関係者らが出席し、現状の共有と今後の方向性が議論されました。
報告会では、各立場からの発言があり、地域支援の在り方や拠点病院の役割、情報発信・連携手法について具体的な提言が示されました。
行政・公的機関の発言
- 平賀 正司氏(全国精神保健福祉センター長会 副会長):精神保健福祉センターが地域の中核機能を担う重要性と、法改正に伴う包括的な支援体制構築の必要性に言及しました。
- 井野 敬子氏(摂食障害全国支援センター センター長):医療水準の全国的な底上げを目指すため、拠点病院の整備状況や情報ポータルの活用について報告しました。
- 林 美彩氏(日本財団 公益事業部):SNS等で情報が氾濫する状況に対し、適切な医療へアクセスできない現状を課題視し、本調査が当事者の支援につながる契機になることに期待を示しました。
拠点病院の現場からの報告
拠点病院の関係者からは、低年齢化する患者への対応、医療連携、受診につながる導線作りなど、現場視点の具体的な取り組みが報告されました。以下は当日の主な発言です。
- 古郡 規雄教授(栃木県拠点病院:獨協医科大学 精神神経科):2024年4月に拠点病院に選定され、全国で唯一小児科が拠点に参加しています。低年齢化する患者に対する早期対応、相談窓口の本格稼働、多職種チームによる支援体制を紹介しました。
- 河合 啓介副院長(千葉県拠点病院:国立国府台医療センター):受診先が見つからないという課題を解消する医療連携の重要性を強調し、相談者の多くが治療中断者である実態を提示しました。若年層に届くSNS(LINE等)の活用強化を提言しました。
組織名称変更の意義と摂食症の基礎知識
当協会は学会名の変更に合わせて名称を変更しています。これまで「障害」という表現が回復の可能性を伝えにくいとの指摘があり、偏見(スティグマ)軽減や早期受診の促進を目的に、学会の名称変更(日本摂食症学会、2025年10月18日)に合わせて当協会も「一般社団法人 日本摂食症協会」(旧:日本摂食障害協会)へと名称を変更しました。
名称表記の変更は順次進められており、外部向けのホームページ等も段階的に更新されます。団体の所在地や連絡先、理事長などの組織情報は以下に示されます。
摂食症の定義と主要な影響
摂食症とは心理的な要因により食行動の異常をきたす疾患群で、主に拒食症(神経性やせ症)と過食症に大別されます。拒食症は異常にやせている状態を特徴とし、過食症は過食発作を繰り返す疾患です。
調査資料に示された主な疾病情報は次の通りです。
- 性別比
- 患者の95%が女性であり、性差が大きい疾患であること。
- 有病率の比較
- 過食症の有病率は拒食症の5~10倍と報告されています。
- 死亡率・合併症
- 拒食症の死亡率は6~11%と高率で、若年者における重篤な疾患であること。成長期発症では身長発育遅延、初潮遅延、無月経、不妊、骨粗鬆症、歯の喪失などの後遺症が生じること。
- 社会的影響
- 適切な治療が行われないと慢性化し、就労不能や医療・福祉費の増大を招く可能性があること。
団体概要と連絡先
当協会の目的は摂食症の治療・予防、患者および家族支援、啓発活動、調査研究・発表などに寄与することです。組織は理事8名を中心に特別顧問、参与、フェローらの専門家で構成されています。
主要な組織情報と問い合わせ先は次の通りです。
- 名称:一般社団法人日本摂食症協会
- 理事長:鈴木 眞理
- 所在地:東京都千代田区紀尾井町3-33
- 公式HP:https://www.jafed.jp/
- 問い合わせ:info@jafed.jp
調査概要と主要事項の整理
最後に、本記事で触れた調査の基本事項と主要な結果を表形式で整理します。これにより、調査の対象・方法・期間・回答率・主要な示唆をひと目で確認できます。
以下の表は、本調査の公式発表内容に基づいて作成しています。詳しい分析や全文のレポートは、準備が整い次第、2026年4月以降に協会ホームページ(https://www.jafed.jp/)に掲載される予定です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査主体 | 一般社団法人日本摂食症協会(協力:日本財団、全国精神保健福祉センター長会) |
| 調査対象 | 全国の精神保健福祉センター(69か所) |
| 調査方法 | WEBアンケート(設問:基本情報+10問、自由記述含む) |
| 調査期間 | 2025年7月14日~2025年11月30日 |
| 回収率 | 67/69施設(97%) |
| 拠点病院設置状況(調査開始時) | 8都県に設置 |
| 主な調査結果(数値) | 拠点病院は必要:94%/身体・精神両面対応可能施設:18%/両面とも対応が難しい:16% |
| 報告会 | 2026年2月22日(日)ハイブリッド開催、参加約90名。行政、拠点病院関係者による意見交換 |
| 名称変更 | 日本摂食症学会の学会名変更(2025年10月18日)に合わせ、協会も「一般社団法人日本摂食症協会」へ変更 |
| 公開予定 | 詳細レポートは準備でき次第、2026年4月以降に協会ホームページへ掲載 |
| 問い合わせ | 一般社団法人日本摂食症協会 事務局(info@jafed.jp) |
本調査は、摂食症支援の地域格差や現場の資源不足を定量的に示す重要な基礎資料となります。表で整理した事項は、支援体制の整備や政策立案、医療機関間の連携強化、専門人材育成、情報発信の設計などにおける出発点となる情報です。詳細な報告書の公開を待ちつつ、調査で明らかになった課題に対する具体的な対応が求められます。