岡山大学、11月3日に早生樹アカシアの遺伝子解析成果を発表
ベストカレンダー編集部
2024年11月4日 05:12
アカシア遺伝子解析発表
開催日:11月3日
岡山大学による早生樹アカシアの遺伝子解析と育種マーカーの同定
国立大学法人岡山大学は、2024年11月3日に早生樹アカシア(Acacia crassicarpa)の網羅的な遺伝子解析を実施したことを発表しました。この研究は、岡山大学の田村隆教授と住友林業株式会社筑波研究所グループとの共同研究によるもので、次世代DNAシーケンサーを用いて行われました。
研究の成果は、2024年8月29日にスイスの植物科学専門誌「Frontiers in Plant Science」に掲載され、早生樹アカシアの遺伝子解読により、育種に必要なマーカー配列の同定が可能となったことが強調されています。
早生樹アカシアの特性と育種の課題
早生樹アカシアは、5年で森をつくることができるマメ科の樹木であり、主に東南アジアやオーストラリアに自生しています。この樹木は天然バイオマス資源としての利用が期待されており、発電燃料としての用途開発も進められています。しかし、カリウム含量が高く、燃焼によって強アルカリ性かつ粘着性の高い灰を生成するため、燃焼炉のベルトコンベアを破損させるなどの育種上の課題が存在します。
従来の樹木育種は、数世紀にわたって優良品種の出現を待つ必要があり、長い時間をかけて選抜を行っていました。このような背景から、早生樹アカシアにおける遺伝子の網羅的解析は、育種の効率化に向けた新たなアプローチとして注目されています。
遺伝子解析の成果と育種マーカーの同定
本研究では、早生樹アカシアの培養細胞における発現遺伝子を網羅的に解読し、93,317個の遺伝子の塩基配列を明らかにしました。この成果により、ゲノム編集に必要なターゲット配列の設計が可能となり、短期間での樹木の品種改良が期待されます。
また、個体を識別するためのマーカー配列を持つ転写因子遺伝子群も同定され、これにより分子レベルでの優良品種の識別が可能になるとされています。この情報は、育種と新品種の選抜において非常に重要な役割を果たすと考えられています。
研究の背景と今後の展望
田村隆教授は、マメ科の植物が窒素固定細菌と共生することにより、大気から窒素を吸収し、成長を促進することを指摘しています。早生樹アカシアも同様に、驚異的な成長スピードの背景には窒素固定生物との関係がある可能性があると述べています。
この研究で公開されたアカシアの遺伝子のカタログは、今後の研究において多くの謎を解明するための知的基盤を提供することが期待されます。具体的には、カーボンニュートラルなバイオマス発電を目指した早生樹の分子育種技術の開発が進むことが予想されます。
論文情報と研究資金
本研究の詳細は、以下の論文として発表されています。
論文名 | Illumina-based transcriptomic analysis of the fast-growing leguminous tree Acacia crassicarpa: functional gene annotation and identification of novel SSR-markers |
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掲載紙 | Frontiers in Plant Science |
著者 | Ishio, S. Kusunoki, K., Nemoto, M., Kanao, T., Tamura, T. |
DOI | 10.3389/fpls.2024.1339958 |
URL | 論文リンク |
この研究は、住友林業株式会社との共同研究および科学技術振興機構によるターゲット駆動型研究開発による支援を受けて実施されました。
まとめ
岡山大学による早生樹アカシアの網羅的遺伝子解析は、育種における新たな可能性を示唆しています。具体的には、以下の内容が重要な成果として挙げられます。
成果内容 | 詳細 |
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遺伝子の解読 | 93,317個の遺伝子を網羅的に解析 |
育種マーカーの同定 | 転写因子遺伝子群のマーカー配列を同定 |
研究の意義 | 短期間での樹木品種改良の可能性を提示 |
この研究は、今後の森林資源の持続可能な利用やカーボンニュートラルな社会の実現に向けた重要なステップとなるでしょう。
参考リンク: