旭化成と旭化成ファーマが第71回大河内記念技術賞を受賞、革新的技術に注目

第71回大河内記念技術賞受賞

開催日:3月25日

第71回大河内記念技術賞受賞
旭化成が受賞した技術ってどんなもの?
旭化成は錠剤の賦形材料として、高成形性・高流動性を持つ結晶セルロース「セオラスTM」を開発し、受賞しました。
スマートセル技術って何に使われるの?
スマートセル技術は、酵素やタンパク質の生産能力を向上させる技術で、医薬品や診断薬の原料生産に活用されます。

第71回大河内記念技術賞の受賞について

旭化成株式会社(本社:東京都千代田区、社長:工藤 幸四郎)および旭化成ファーマ株式会社(本社:東京都千代田区、社長:青木 喜和)は、2025年3月25日に日本工業倶楽部会館で行われた贈賞式において、第71回大河内記念技術賞をそれぞれ受賞しました。この受賞は、両社が開発した技術の顕著な成果が評価された結果です。

受賞テーマは次の通りです。

  • 旭化成:「錠剤賦形材料としての高成形性・高流動性結晶セルロースの開発」
  • 旭化成ファーマ:「スマートセル活用によるコレステロールエステラーゼ大量生産技術開発」

大河内記念技術賞は、1954年に設立された公益財団法人 大河内記念会が生産工学および高度生産技術における顕著な業績を表彰する、伝統と権威のある賞です。

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旭化成の受賞内容

旭化成は、錠剤の賦形剤として使用される高成形性・高流動性結晶セルロースの開発により、この栄誉を得ました。具体的には、旭化成が製造する結晶セルロース「セオラスTM」は、パルプを原料とした白色の粉末であり、錠剤製造においては以下の特性が求められます。

  • 割れ欠けを防ぐための成形性
  • 製造装置内で均一かつ迅速に充填できる流動性

従来技術では、これらの特性を高いレベルで両立させることが難しかったのですが、旭化成は多孔質状の粒子形状を持ち、内部に適切な空隙を有する「セオラスTM(UFグレード)」を工業的に生産する技術を開発しました。この技術によって、小型の錠剤や微量または複数の有効成分を含む錠剤の生産性が向上し、より飲みやすい医薬品や健康食品の提供に貢献しています。

結晶セルロース「セオラスTM」は1970年に販売を開始し、2008年よりUFグレードをラインアップに追加しました。近年、医薬品錠剤向けの需要が国内外で堅調に拡大しており、これに対応するために2023年には岡山県倉敷市の水島製造所内に第2工場を建設し、生産能力を強化しました。今後もこの技術を活用し、新たな賦形材料の開発を進め、国内外の医薬品製造に貢献していく方針です。

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受賞者情報

受賞者は以下の通りです。

  • 天川 英樹(旭化成株式会社 環境ソリューション事業本部 ポリマー事業部 品質保証部)

贈賞式当日の写真も公開されており、受賞の喜びが伝わってきます。

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旭化成ファーマの受賞内容

旭化成ファーマは、「コレステロールエステラーゼ(CE)」の大量生産技術の開発により受賞しました。CEは脂質異常症の診断薬に用いられる原料酵素の一つで、健康診断などでLDLコレステロール値やHDLコレステロール値の算出に使用されます。

CEは微生物によって生産されますが、その生産メカニズムが複雑であるため、従来技術では大量生産が難しいとされていました。旭化成ファーマは、国立研究開発法人 産業技術総合研究所と共同で「スマートセル技術」を開発し、この課題に取り組みました。その結果、CEの大量生産に寄与する機能未知遺伝子を特定することに成功しました。

この技術により、CEの大量生産が実現し、従来製法比で生産能力が30倍以上向上しました。また、製品化も成功し、この成果が高く評価され受賞に至りました。

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スマートセル技術の詳細

スマートセル技術は、生物の細胞を人工的に改変し、酵素やタンパク質の生産能力を向上させることで、工業製品の素材や医薬品の原料を効率的に生産する技術です。この技術は、CEの設計図となるCE遺伝子をプラスミドと呼ばれる環状DNAに組み込み、微生物に導入することで成り立っています。

プラスミドは微生物内で複製されるため、CE遺伝子も同様に複製されます。しかし、微生物内にはプラスミドを排除したり、その複製を抑制する働きがあるため、CE遺伝子を増やすことが困難でした。旭化成ファーマは、プラスミド排除と複製抑制の働きを持つ遺伝子を特定し、その遺伝子を破壊することで、プラスミドの排除と複製抑制を解除しました。これにより、プラスミドを多数保持可能となり、大量のCE生産が可能になりました。

さらに、プラスミド上に組み込む遺伝子をCE遺伝子から別の遺伝子に変更することで、別の酵素を大量に生産することも可能です。

受賞者情報

受賞者は以下の通りです。

  • 小西 健司(旭化成ファーマ株式会社 診断薬事業部 酵素製品部)
  • 村松 周治(旭化成ファーマ株式会社 診断薬事業部 開発研究部)
  • 酒瀬川 信一(国立研究開発法人産業技術総合研究所 生命工学領域 生物プロセス研究部門)
  • 安武 義晃(国立研究開発法人産業技術総合研究所 生命工学領域 生物プロセス研究部門)
  • 田村 具博(国立研究開発法人産業技術総合研究所 生命工学領域)

贈賞式当日の写真には、受賞者たちの喜びの瞬間が収められています。

参考情報

旭化成および旭化成ファーマの受賞に関する詳細な情報は、以下のリンクから確認できます。

まとめ

第71回大河内記念技術賞において、旭化成と旭化成ファーマはそれぞれの分野で顕著な成果を上げ、受賞の栄誉に輝きました。旭化成は高成形性・高流動性結晶セルロース「セオラスTM」の開発により、医薬品や健康食品の製造に貢献し、旭化成ファーマはスマートセル技術を活用したコレステロールエステラーゼの大量生産技術の開発に成功しました。このような技術革新は、今後の医療や製薬業界において重要な役割を果たすと考えられます。

受賞者 受賞内容 受賞テーマ
旭化成 天川 英樹 高成形性・高流動性結晶セルロースの開発
旭化成ファーマ 小西 健司、村松 周治、酒瀬川 信一、安武 義晃、田村 具博 スマートセル活用によるコレステロールエステラーゼ大量生産技術開発

今後も両社の技術が医療分野においてどのように活用され、発展していくのかに注目が集まります。