矯正歯科選びの決め手は?患者と医師の意識ギャップを徹底分析
ベストカレンダー編集部
2025年5月6日 09:48
矯正歯科選定調査発表
開催日:5月6日
矯正歯科の選び方に関する調査結果
矯正治療は、費用が高額で治療期間も長期にわたるため、患者が慎重に医院を選ぶ代表的な歯科治療の一つです。全国には多くの矯正治療を提供する歯科医院が存在し、患者がどの医院を選ぶかは経営上の重要な課題です。株式会社ecloreが実施した調査では、独立開業歯科医師56名と矯正治療を受けた患者200名を対象に、「歯科医院の選択の決め手」に関する意識調査を行いました。
本記事では、歯科医師が考える「患者が矯正治療を受ける医院を選ぶ決め手」と、実際に患者が重視したポイントを比較し、両者の認識ギャップを明らかにします。この結果をもとに、今後の集患戦略や患者理解に役立つ示唆を探ります。
1. 歯科医師が想定する患者の選択基準
調査に参加した歯科医師56名が考える、患者が矯正医院を選ぶ際の決め手について紹介します。回答は複数選択可能ですが、特に重視したいポイントとして2つまでに制限されています。
- 治療費用(分割・ローン対応含む):60.7%の歯科医師が選択
- 治療実績や症例数:32.1%
- 医院スタッフの対応・評判:28.6%
歯科医師は、患者が医院選びで最も重視するのは「治療費用」であると考えています。矯正治療は保険適用外で高額になるため、患者が費用面を気にするのは当然です。また、治療実績や症例数も重視されると考えられています。高度な技術を要する矯正治療では、症例経験の豊富さが患者の安心感につながると予測されています。
一方で、「立地の良さ」や「予約の取りやすさ」は比較的低い割合にとどまり、歯科医師は患者が多少通いにくくても費用や実績を優先するだろうと考えています。
2. 患者が重視する選定基準
次に、矯正治療を受けた患者200名が選定時に重視したポイントを見ていきます。こちらも複数選択可能ですが、特に重要なポイントとして2つまでに制限されています。
- 治療費用(分割・ローン対応含む):53%
- 医院スタッフの対応・評判:39.5%
- 通いやすい立地:34.5%
- 治療実績や症例数:31.5%
患者側の回答でも、最も多かったのは「治療費用」で、53%が選択しました。これは、矯正治療の経済的ハードルの高さを示しています。次いで「医院スタッフの対応・評判」が39.5%、通いやすい立地が34.5%と続きます。これらの項目は、患者にとって費用、接遇、利便性、実績が総合的に重要な判断基準であることを示しています。
一方で、診療時間や予約の取りやすさは14%、最新設備の有無は8%と少数派にとどまり、院内の雰囲気やプライバシー配慮は2.5%、ネット予約の有無は0.5%と重視されていないことが分かります。
3. 歯科医師 vs 患者:矯正治療の「決定要因」ギャップ分析
ここでは、歯科医師と患者の回答を比較し、共通点と相違点を分析します。
3.1 共通点
両者ともに「治療費用(分割・ローン対応含む)」が最も重要な決め手であると認識しており、大きな認識差はありません。また、「治療実績や症例数」についても、歯科医師32.1%、患者31.5%と一致しています。
3.2 相違点(ギャップが大きい項目)
以下の項目では、歯科医師と患者の認識に大きなギャップが見られました。
- 通いやすい立地(駅近・駐車場):歯科医師14.3%/患者34.5%
- 医院スタッフの対応・評判:歯科医師28.6%/患者39.5%
- 診療時間や予約の取りやすさ:歯科医師8.9%/患者14%
患者は通院の利便性を非常に重要視しており、特に矯正治療は長期間にわたって通院が必要なため、立地が重要な判断基準として位置付けられています。一方、歯科医師はこの要素をそれほど重要視していない傾向が見られ、実際の患者のニーズとのズレが明らかになっています。
また、患者はスタッフの対応や医院の評判を治療費用に次ぐ重要な要素と考えており、良好なコミュニケーションが医院選びに大きく影響します。歯科医師の認識は患者の実際の重視度に比べて低めで、この点での認識ギャップが目立ちます。
4. 患者に選ばれる医院になるための戦略
患者に選ばれる医院を目指すためには、以下の3つの戦略が重要です。
4.1 通いやすさとホスピタリティの向上
立地の強みをアピールし、駅近や駐車場完備などの条件を積極的に発信します。また、夜間診療や土日診療の導入、オンライン予約システムの整備を行い、多忙な患者の通院を支援します。
スタッフの接遇品質を向上させるため、定期的な接遇研修を実施し、丁寧なカウンセリングや迅速なフォローを標準化します。これにより、患者の満足度が向上し、良好な口コミや紹介につながります。
4.2 費用の透明化と支払い負担の軽減
治療費用の総額や内訳を公式ウェブサイトや院内資料に明確に表示し、患者の納得感を高めることが重要です。また、分割払い、デンタルローン、クレジットカード決済など、多様な支払い方法を提供します。経済的な不安を軽減する仕組みも検討すべきです。
さらに、治療の健康・審美的メリットを症例写真やライフプランとの比較を交えて説明し、患者に「費用に見合う価値」をしっかりと伝える必要があります。
4.3 実績の適切な情報提供と信頼性の向上
治療内容やプロセスをわかりやすく伝えるために、患者の許可を得た治療前後の写真や一般的な治療プロセスを説明した資料を提供します。さらに、累計症例数や治療の一般的な特徴など、患者が客観的に判断できる範囲の情報を丁寧に提供し、信頼感を高めます。
医師やスタッフの資格、経歴、所属学会などの専門的背景を明示し、患者が安心して治療を受けられる環境づくりに努めることが大切です。
まとめ
今回の調査結果を通じて、歯科医師と患者の間には認識のギャップが存在することが明らかになりました。特に、患者は通いやすさやスタッフの対応を重視しているのに対し、歯科医師はそれをあまり重要視していない傾向があります。これらのギャップを理解し、医院の戦略を見直すことが、患者に選ばれる医院へとつながるでしょう。
| 項目 | 歯科医師の回答 | 患者の回答 |
|---|---|---|
| 治療費用(分割・ローン対応含む) | 60.7% | 53% |
| 医院スタッフの対応・評判 | 28.6% | 39.5% |
| 通いやすい立地 | 14.3% | 34.5% |
| 治療実績や症例数 | 32.1% | 31.5% |
| 診療時間や予約の取りやすさ | 8.9% | 14% |
このように、患者のニーズに応じた医院の運営が求められています。医院の強みを再構築し、持続的な集患・増患を実現するための戦略を検討することが重要です。
参考リンク: