三毛猫の毛色を決める遺伝子ARHGAP36を発見、60年の謎が解明
ベストカレンダー編集部
2025年5月17日 10:15
三毛猫遺伝子発見
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三毛猫の毛色を決める遺伝子の発見
2025年5月16日、アニコムグループは、三毛猫やサビ猫の毛色を決める遺伝子がついに発見されたことを発表しました。この研究は、60年間の謎を解明するものであり、猫の毛色に関する理解を深める重要な一歩となります。
三毛猫やサビ猫は、オレンジ色と黒色の毛色を持つことが特徴で、ほとんどがメスです。これまで、オレンジ/黒の毛色を決定する遺伝子がX染色体上に存在することは知られていましたが、その具体的な遺伝子の特定は行われていませんでした。
研究の概要と発見の詳細
今回の研究では、九州大学の研究グループが中心となり、オレンジ色の毛を持つ猫のX染色体上にある「ARHGAP36」という遺伝子領域に約5,000塩基の欠失があることを明らかにしました。この発見は、三毛猫やサビ猫の毛色を決める仕組みが実際に働いていることを証明するもので、世界で初めての成果です。
研究チームは、福岡市内のさまざまな毛色を持つ18匹の猫のDNAを解析し、オレンジ毛を持つ猫のX染色体におけるARHGAP36遺伝子内の欠失を特定しました。さらに、50匹以上の猫を調査し、海外のデータも参照した結果、この欠失の有無とオレンジ毛の有無が完全に一致することが確認されました。
具体的な研究成果
研究チームは、次のような具体的な成果を得ました:
- オレンジ毛の猫は、ARHGAP36遺伝子内に約5,000塩基の欠失を持っている。
- この欠失が、メラニン合成遺伝子群の発現を抑制し、黒色のユーメラニンからオレンジ色のフェオメラニンへの合成切り替えを引き起こす可能性が示唆されている。
- ARHGAP36は、X染色体の不活性化に伴って高度にメチル化されることが確認された。
これらの結果から、オレンジ遺伝子の正体がARHGAP36であることが明らかになり、60年前に提唱された理論が実証されました。
研究の背景とエピジェネティクスの重要性
三毛猫やサビ猫がほぼ全てメスであること、オレンジ/黒の毛色を決める遺伝子がX染色体上に存在することは、120年以上前から知られていました。1961年に提唱されたX染色体のランダム不活性化の仮説は、エピジェネティクスの代表例として広く受け入れられています。
この仮説によれば、メスの初期胚の細胞では、2本のX染色体のうち1本がランダムに不活性化され、その後その細胞が増殖して体の各部位を占めることが示唆されており、三毛猫やサビ猫の斑状の毛色の形成を説明するものとされています。しかし、具体的なオレンジ遺伝子の実体については長年の間不明でした。
研究の意義と今後の展望
今回の研究成果は、単なる遺伝子の発見に留まらず、エピジェネティクスの理解を深めるものです。また、ARHGAP36遺伝子がヒトにも存在することから、この研究がヒトの病気の解明にも寄与する可能性があります。今後は、ARHGAP36遺伝子の機能やその影響をさらに探求していくことが期待されています。
また、オレンジ毛を持つ猫の多くが同じ欠失を持つことから、この変異の歴史的な起源についても研究が進むでしょう。古代の猫の絵画やミイラを調査することで、この欠失がいつどこで生じたのかを特定する手がかりを掴めるかもしれません。
研究成果のまとめ
今回の研究において、三毛猫やサビ猫の毛色を決める遺伝子の正体がARHGAP36であることが明らかになりました。以下に、研究の主な成果をまとめます。
| 研究成果 | 詳細 |
|---|---|
| 遺伝子の特定 | 三毛猫やサビ猫のオレンジ毛を決定する遺伝子はARHGAP36である。 |
| 欠失の発見 | オレンジ毛を持つ猫のX染色体に約5,000塩基の欠失が確認された。 |
| メラニン合成のメカニズム | ARHGAP36の発現が上昇し、メラニン合成遺伝子群が抑制されることで、黒色からオレンジ色への合成切り替えが起きる。 |
| エピジェネティクスの理解 | X染色体の不活性化に伴うメチル化の影響が示された。 |
この研究は、猫の毛色に関する理解を深めるだけでなく、エピジェネティクスの重要性を再認識させるものとなりました。今後もさらなる研究が期待されます。
参考リンク: