2025年6月6日、ispaceの民間月面着陸ミッション2が通信途絶により終了を発表

ispaceミッション2終了

開催日:6月6日

ispaceのミッション2って何があったの?
ispaceのミッション2は日本初の民間月面着陸を目指した試みでしたが、着陸時に通信が途絶え、月面への安全な着陸が確認できずミッション終了となりました。
今後のispaceの月探査計画はどうなるの?
ミッション2の原因解析を進めつつ、2027年にミッション3とミッション4の打ち上げを予定しており、引き続き月面輸送サービスの提供を目指しています。

株式会社ispaceのミッション2に関する重要な報告

2025年6月6日、株式会社ispace(東京都中央区、代表取締役:袴田武史、証券コード9348)は、Mission 2 “SMBC x HAKUTO-R VENTURE MOON”(以下ミッション2)に関する重要な発表を行いました。本日、同社が予定していた民間企業として日本初、アジア初の月面着陸の試みが、通信の回復が見込まれないことから終了することが決定されました。

ミッション2は、RESILIENCEランダー(月着陸船)を用いて行われるもので、6月6日午前8時時点において、着陸を確認するためのデータが受信できない状況に至りました。これにより、ミッション2のマイルストーンSuccess 9の完了が困難であると判断され、ミッションの終了が決定されたことをお知らせいたします。

ミッションの進行状況と通信のトラブル

ispaceのエンジニアは、東京の日本橋にあるHAKUTO-Rミッション・コントロール・センターから、2025年6月6日午前3時13分(日本時間)に着陸シーケンスの実行を指示するコマンドを送信しました。RESILIENCEランダーは、月周回軌道を離脱し、高度約100kmから約20kmまで惰性降下を行いました。その後、主エンジンを噴射し、減速を開始しました。

ランダーの姿勢がほぼ垂直になったことを確認したものの、その後テレメトリが消失し、午前4時17分に予定していた着陸予定時刻を過ぎても、着陸を示すデータの受信には至りませんでした。この状況により、月面との距離を測距するレーザーレンジファインダーでの有効な計測値の取得が遅れたこと、また月面着陸に必要な速度まで十分に減速できていなかったことが確認されています。

ハードランディングの可能性

現在のところ、これらの状況から、ispaceのランダーは最終的に月面へハードランディングした可能性が高いと推測されています。ランダーからの通信が途絶えた後、リブート(再起動)を試みましたが、通信の再確立には至りませんでした。このため、ミッション2のマイルストーン「月面着陸」は達成が困難であるとの判断が下されました。

なお、これらの状況が発生した要因については、現在もテレメトリの詳細な解析を実施しており、解析が完了次第、詳細な報告を行う予定です。引き続き、管制室においてランダーの現状把握に向けた対応が行われています。

CEOのコメントと今後の対応

株式会社ispaceの代表取締役CEOである袴田武史氏は、現時点で月面着陸完了の見込みがないことから、まずはこれまで取得できているテレメトリの解析を迅速に実施し、原因究明に努めることが責務であると述べています。

袴田氏は、従業員やその家族、ビジョンに共感し続けている株主・ペイロードカスタマー・HAKUTO-Rパートナー・政府関係者、そしてispaceを応援している全ての人々に対して、遅滞なく報告し、信頼の回復に努める意向を示しました。

株式会社ispaceの概要とミッションの背景

株式会社ispaceは、「Expand our planet. Expand our future.」をビジョンに掲げ、月面資源開発に取り組む宇宙スタートアップ企業です。日本、ルクセンブルク、アメリカの3拠点で活動しており、約300名のスタッフが在籍しています。2010年に設立され、Google Lunar XPRIZEレースの最終選考に残った5チームのうちの1チームである「HAKUTO」を運営してきました。

同社は、月への高頻度かつ低コストの輸送サービスを提供することを目的とした小型のランダーと、月探査用のローバーを開発しています。また、民間企業が月でビジネスを行うためのゲートウェイとなることを目指し、月市場への参入をサポートするための月データビジネスコンセプトの立ち上げも行っています。

ミッションの歴史と今後の展望

2022年12月11日には、SpaceXのFalcon 9を使用して、同社初となるミッション1のランダーの打ち上げを完了しました。続くミッション2は2025年1月15日に打ち上げを完了し、6月6日に月面着陸に再挑戦しましたが、成功には至りませんでした。これからのミッション3(正式名称:Team Draper Commercial Mission 1)およびミッション4(旧ミッション6)は、2027年に打ち上げの予定です。

ミッション1の目的は、ランダーの設計および技術の検証、月面輸送サービスと月面データサービスの提供という事業モデルの検証と強化です。ミッション1では、10段階のマイルストーンの内Success8まで成功を収め、着陸シーケンス中のデータを含む貴重なデータやノウハウを獲得しました。これらのデータやノウハウは、後続のミッション2へフィードバックされています。

HAKUTO-Rプログラムの詳細

HAKUTO-Rは、ispaceが行うミッション1およびミッション2を総称する民間月面探査プログラムです。独自のランダーとローバーを開発し、月面着陸と月面探査の2回のミッションを実施しています。オフィシャルパートナーである株式会社三井住友銀行により命名されたMission 2 “SMBC x HAKUTO-R VENTURE MOON”には、新たな始まりやチャンスの意が込められています。

HAKUTO-Rのオフィシャルパートナーには、株式会社三井住友銀行の他、日本航空株式会社、三井住友海上火災保険株式会社、日本特殊陶業株式会社、シチズン時計株式会社、スズキ株式会社、高砂熱学工業株式会社、SMBC日興証券株式会社、Sky株式会社、Epiroc AB、株式会社ジンズ、栗田工業株式会社が参加しています。

項目 詳細
企業名 株式会社ispace
ミッション名 Mission 2 “SMBC x HAKUTO-R VENTURE MOON”
着陸日 2025年6月6日
通信の状況 通信の回復が見込まれず、着陸データが受信できず
ハードランディングの可能性 高いと推測される
CEOコメント テレメトリ解析を迅速に実施し、原因究明に努める
今後のミッション ミッション3およびミッション4は2027年に打ち上げ予定

今回のミッション2に関する報告は、宇宙ビジネスの進展において重要な意味を持ちます。株式会社ispaceは、様々な課題を乗り越え、今後のミッションに向けた準備を進めていくことが期待されます。

参考リンク: