2025年6月9日発表:OND SAUNAがArchitizer A+Awardsで世界1位の建築賞を受賞、その革新設計とは
ベストカレンダー編集部
2025年6月10日 05:46
OND SAUNA建築賞受賞
開催日:6月9日

OND SAUNA、世界最大規模の建築賞 Architizer A+Awards で最優秀賞を受賞
合同会社あまね設計(本社:東京都世田谷区/代表:下川太郎)は、2025年6月9日に、佐賀県武雄市・武雄温泉保養村内のONDPARKに位置するサウナ施設「OND SAUNA」が、世界的な建築アワード「Architizer A+Awards(第13回)」において、Spa & Wellness部門のPopular Choice Winner(一般投票 世界1位)を受賞したことを発表しました。この受賞は、世界80か国以上から寄せられた数千件の応募作品の中から、専門家による審査を経てファイナリストが選出され、一般投票によって最も支持された作品に贈られるものです。
「OND SAUNA」は、木のサウナ外観が特徴で、離散配置された壁が森の成長のリズムに呼応するデザインが施されています。サウナ室内では、様々な方向に開いた縦長の窓越しに森の気配を感じながら、方向の異なるベンチ配置によって適度に多様で親密な交流が生まれるよう工夫されています。

設計のポイント
本建築は、佐賀県武雄温泉保養村の雄大な森との繋がりを感じられる開放的な空間にあり、心身の解放や自然や人々との新たな調和の形を目指して設計されています。以下に設計のポイントを示します。
- 森との向き合い方
- 付かず離れずの壁
- 着席位置によるコミュニケーション密度の変化
- 離散集合体としての構造形式

森との向き合い方
敷地は佐賀県武雄市ONDPARK内にあり、森に囲まれた平地に「武雄の恵みで温度をあげる」新しい遊び場として構想されています。陰陽五行思想に基づいた5つのサウナが順次計画されており、本計画はその第一弾として「木のサウナ」と更衣棟の建設を行っています。
木のサウナは「成長」というテーマで設計され、垂直性を強調した外壁が乱立する形で表現されています。サウナ→水風呂→外気浴という一連の体験が、立体的に展開されることで、樹木と同じ高さで森を見渡す屋上外気浴へと導かれます。

付かず離れずの壁
サウナという空間では、見ず知らずの人同士がほぼ裸で密接距離に身を置く特異な近接性があります。この特異な近接性と日本人の精神性を調和させる空間を実現するために、「押しつけがましくなく親密すぎず、しかし共体験を通じて共有認識が生まれる」ような集社会的空間(ソシオペタル)を構想しています。
そのために考案されたのが、”付かず離れずの壁”です。この壁は、森に共鳴する垂直性を持ち、隙間を通じて森を引き寄せると同時に、隣人との親密度を調整します。

着席位置によるコミュニケーション密度の変化
内部には不整形多角形の平面を採用し、視線のコントロールと多様な景観の切り取りを実現しています。人々の談話は、横並びよりも鈍角配置の方が自然に生まれることが知られており、本計画ではその原理を活かしてベンチを鈍角に配置しています。
この配置により、私的空間を保ちながらも適度な会話が生まれるよう工夫されており、火を囲むような集いの構成が空間の共有体験を支えています。

離散集合体としての構造形式
構造にはCLT(Cross Laminated Timber)を用い、150mm厚の床版を採用しています。不整形平面と非直角接合の合理化をCLTで解決し、梁を排したことで現場施工の効率化にも寄与しています。また、寸法モジュールに沿った壁の離散配置をCLT版が繋ぎ、構造自体が集社会的な性質を持つ集合体となっています。

OND SAUNAの他の建物
更衣棟は長屋門型の形式をとり、サウナゾーンと公園の他エリアを分節する「結界」の役割を果たしています。中央に貫通する通路を設け、その両側に男女の更衣室を配置しています。下見板張りの外壁や連続する基礎型枠、CLTの野地板などにより、日本建築の伝統と現代的要素が融合した質実な建築が実現されています。
また、金のサウナ「秩序」は、直線的なフレームを通して自然と向き合い、「秩序」を建築として表現しています。鏡張りのサウナ室はその存在を風景の中に溶け込ませるように透明化されており、外気浴スペースは、鉄骨フレームに囲まれた自然の中に異質に挿入された人工的な構造体です。

Architizer A+Awards とは
「Architizer A+Awards」は、米国の建築メディア Architizer が主催する、世界最大規模の国際建築アワードです。建築・空間デザインにおける卓越した実践を顕彰する場として知られ、2025年で第13回を迎えます。今年は80カ国以上から数千を超えるエントリーが集まりました。
評価は2段階で構成され、第一に建築家、デザイナー、評論家など250名以上による国際審査員団が部門ごとにファイナリストを選定します。第二に、そのファイナリストに対して世界中の一般ユーザーによるオンライン投票が行われ、「Popular Choice Winner」が決定されます。
受賞作品は、Architizerの公式メディア、ギャラリー、書籍(『The World’s Best Architecture』)などを通じて国際的に紹介されます。

計画概要
プロジェクト名:ONDPARK サウナ棟新築工事
主要用途:サウナ(公衆浴場)、更衣棟(更衣室)
建設予定地:佐賀県武雄市武雄町大字永島字池ノ上18293 他(地番)
事業主体:朝日I&R ホールディングス株式会社
プロデュース:小林純/RE FACTORY
設計:下川太郎・川野元揮/あまね設計
構造:黒岩裕樹・板井臨/黒岩構造設計事務所
設備:山崎設備設計
ストーブ:高橋憲三・高橋和雅/ケンズメタルワーク
フードメニュー監修:山崎真人
ロゴ:MARUKAJIRI
写真:川辺明伸/helico・宮本和義/fusion graphic
HPデザイン:fusion graphic
構造形式:木造在来工法(一部CLT構造)
建築面積:151.59 ㎡
延床面積:117.50 ㎡
工事期間:令和6年3月~8月
受賞歴:
A’ Design Award & Competition 2025ブロンズ賞(イタリア)
Architizer A+Awards 2025 Spa & Wellness部門Popular Choice Winner(アメリカ)

ONDPARK(オンドパーク)とは
ONDPARKは、「武雄の恵みで温度があがる」をコンセプトに、佐賀県武雄市の保養村内に整備された自然体験型の滞在施設です。かつての温泉保養地を再活用し、星空観察、桜、ホタル、森などの豊かな自然と共に過ごす“熱のある時間”を提供します。
敷地内にはサウナ・宿泊・レストラン・自然遊びのエリアがあり、地域資源を活かした遊びや食体験を通じて、人と人、人と自然が心地よくつながる場となることを目指しています。また、PARK-PFI制度を活用し、民間の知恵と地域の魅力を融合させた次世代型の公共空間として位置づけられています。

今後の展開
OND SAUNAは、2025年6月24日から3週間の改修期間を経て、7月中旬より営業を再開予定です。再開後には、受賞を記念した限定体験や新たな空間演出も検討されています。世界に認められたこの建築をぜひ体感していただければと考えています。

企業概要
合同会社あまね設計は「普通で特別なもの」をつくる設計事務所として、日々の生活の中で小さなしあわせを感じられる瞬間を増やす建物を目指しています。代表は下川太郎で、東京都世田谷区代田6-11-8-2Fに事務所を構えています。
近年の代表作には、「ONDPARK」「休昌院 令和の大改修」「国賀荘ヂナカチ」「大室山の高床」などがあります。

まとめ
項目 | 詳細 |
---|---|
プロジェクト名 | ONDPARK サウナ棟新築工事 |
受賞歴 | A’ Design Award & Competition 2025ブロンズ賞、Architizer A+Awards 2025 Spa & Wellness部門Popular Choice Winner |
設計事務所 | 合同会社あまね設計 |
所在地 | 東京都世田谷区代田6-11-8-2F |
建設予定地 | 佐賀県武雄市武雄町大字永島字池ノ上18293 他 |
工事期間 | 令和6年3月~8月 |
以上の情報から、OND SAUNAはその革新的なデザインと機能性により、世界的に評価された建築であることがわかります。今後の展開にも注目が集まるでしょう。
参考リンク: