コンテンツ支出が過去最高に 音楽とリアル市場が牽引
ベストカレンダー編集部
2025年8月20日 21:46
コンテンツ支出調査2025
開催期間:2月25日〜3月13日
コンテンツ支出が過去最高を更新した背景──リアルとデジタルの相乗効果
株式会社博報堂DYホールディングスと株式会社博報堂の共同研究プロジェクト「コンテンツビジネスラボ」は、「コンテンツファン消費行動調査2025」の結果を公表しました。プレスリリースは2025年8月20日 10時00分付で配信され、生活者のコンテンツ支出が1人当たり85,137円(前年比+6,034円)と、調査開始の2011年以降で過去最高を記録したことが示されています。
この支出増加を牽引した主役は、リアルイベント市場の拡大と音楽ジャンルです。調査では、リアルイベント市場の推定市場規模が1兆2,596億円(前年比+22%)に達していること、関連グッズ市場が7,106億円、デジタルコンテンツ市場が4,827億円の高水準を維持していることが示されています。音楽ジャンルはカテゴリ別で最大の市場規模となり、合計8,005億円に上ります。
デジタル接触がリアルでの消費につながる構造
調査結果では、動画サイトやサブスクリプションサービス上で映像や音楽に触れた生活者が、コンサートや展示、ロケ地巡りなどリアルな体験に足を運ぶケースが増えている点が指摘されています。デジタルでの接触がリーチを生み、リアルでの体験が支出を誘発する好循環が市場全体の押し上げに寄与しています。
コンテンツホルダーにとっては、デジタルとリアル双方の接点を設計し、グッズや配信、イベントといった周辺領域で収益化する機会が拡大していると読み取れます。市場規模の具体的数値は以下の通りです。
- リアルイベント市場:1兆2,596億円(前年比+22%)
- 関連グッズ市場:7,106億円
- デジタルコンテンツ市場:4,827億円
- 音楽ジャンル市場:8,005億円(うちリアルイベント3,122億円、デジタル920億円、関連グッズ747億円)
支出層の“濃さ”が市場を支える一方、支出者数は減少
一方で本調査は、支出金額の増加と並行して支出する人数自体は減少していることを示しています。2019年と2025年を比較すると、多くのジャンルで支出層の人数が減少している傾向が確認されました。
特に音楽ジャンルにおいては、リアルイベント市場の支出層が648万人減少(2019年比 -37.1%)、関連グッズ市場の支出層が188万人減少(2019年比 -26.6%)という大幅な減少が見られます。つまり、支出総額が伸びているのは、音楽ファンなどの「熱心なコア層」が一人あたり多く支出しているためであり、支出者数そのものの拡大が伴っているわけではありません。
背景と示唆
デジタル化の進展により、無料で楽しめるコンテンツやレコメンド中心の消費が増え、利用の幅が狭まる傾向があります。これにより、新しいジャンルや従来とは異なるコンテンツに触れる機会が減り、支出層の減少が進んでいると推察されます。
したがって、コンテンツホルダーや企業は新規ファン獲得の施策と、既存の熱心なファンに対するさらなる深耕(ライブ、配信、ファンクラブ、グッズ等)を同時に進める必要があることが示唆されます。
「リーチ力・支出喚起力ランキング」と『Mrs. GREEN APPLE』の事例
本調査では、コンテンツの活用を促進するためにコンテンツビジネスラボが開発した独自指標「リーチ力」と「支出喚起力」を用い、アニメや音楽など全11カテゴリ・計1,700以上のコンテンツについてランキングを算出しました。これらの指標は企業のタイアップや商品企画の検討に資するものです。
指標の定義は次のとおりです。
- リーチ力
- そのコンテンツが一年間に到達できる人数を表す指標。キャラクタータイアップやCM起用、PR活動の際に参照される。
- 支出喚起力
- コアファンによる年間の関連市場規模を示す指標。コンテンツを組み込んだオリジナル企画の売上規模の推計に用いる。
ランキングの結果と目立ったコンテンツ
両指標のトップ20に連続してランクインしたのは、『鬼滅の刃』『名探偵コナン』『ONE PIECE』『ポケットモンスター』の4作品で、テレビアニメや映画といったメディア展開とグッズ・ゲーム等の支出機会が多いことが共通しています。
その中で注目されたのが音楽アーティストの『Mrs. GREEN APPLE』です。『Mrs. GREEN APPLE』はリーチ力で5位(前年18位)、支出喚起力で11位(前年はトップ20圏外)と大きく躍進し、初めて両ランキングに入賞しました。音楽アーティストが両指標でランクインしたのは、2022年の『嵐』以来のことです。
同アーティストのファンは、楽曲の視聴のみならずライブ配信やファンクラブ、コンサートやフェスの参加など幅広い支出を行っており、2024年における新曲発表の頻度とサブスクでの視聴の拡大が、ファン増と収益化の両立に寄与したと分析されています。
調査の方法・提供レポート・追加分析サービスと問い合わせ先
本調査「コンテンツファン消費行動調査2025」は、インターネット調査として実施され、全国15~69歳の男女を対象に全国7エリアを性年代別人口構成比で割付して有効回収サンプル数10,000のデータを得ています。調査実施期間は2025年2月25日(火)~3月13日(木)で、調査機関はQO株式会社です。
調査は11カテゴリを対象に行われ、カテゴリは次のとおりです。
- ドラマ・バラエティ
- アニメ・特撮
- マンガ・ライトノベル
- 小説
- 映画
- 音楽
- ゲーム
- 美術展・博覧会
- スポーツ
- レジャー施設・イベント
- 特定のタレント・人物
レポートと追加分析サービス
コンテンツファン消費行動調査のカテゴリ別レポートは有料で提供されており、リーチ力・支出喚起力ランキングの詳細、利用層・支出層のボリューム、支出内訳など市場概況が含まれます。無料サンプルレポートも用意されています。申込みは博報堂のビジネス情報ポータル「WizBiz」内の専用ページから可能です(リンク:https://contents.wizbiz.org/)。
さらに、博報堂DYグループ内の分析ツール「STRATEGY BLOOM CONTENT」を用いた追加分析サービスを提供しています。属性別の人数ボリューム、支出金額、保有デバイス、利用サービス、購買履歴などを組み合わせた多面的な分析や、バブルチャート等での可視化が可能です。詳細は別途公開されたプレスリリース(https://www.hakuhodody-holdings.co.jp/news/corporate/2025/05/5470.html)をご参照ください。
追加分析の勉強会も開催しており、企業向けの個別分析提供やワークショップの相談に対応しています。既に取引のある企業は担当営業へ、その他の企業は下記の窓口まで問い合わせる形です。
- 追加分析サービス・勉強会に関するお問い合わせ
- コンテンツビジネスラボ担当窓口(株式会社博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター) 三浦・和田
- メール:cbl-contact@hakuhodo.co.jp
調査の要点まとめ
以下の表に本記事で触れた主要な数値・事実・サービスを整理しました。調査の対象や方法、主要な市場規模、指標定義、提供中のレポートや追加サービス、問い合わせ先までを網羅しています。
| 項目 | 内容(数値・説明) |
|---|---|
| 発表 | 博報堂DYホールディングス/博報堂「コンテンツファン消費行動調査2025」公表(2025年8月20日 10:00) |
| 1人当たり支出 | 85,137円(前年比+6,034円) |
| 主要市場規模(リアル/デジタル等) | リアルイベント:1兆2,596億円(+22%)、関連グッズ:7,106億円、デジタルコンテンツ:4,827億円 |
| 音楽ジャンル規模 | 8,005億円(リアルイベント3,122億円、デジタル920億円、関連グッズ747億円) |
| 支出層の減少例(2019→2025) | 音楽リアルイベント:648万人減(-37.1%)、関連グッズ:188万人減(-26.6%) |
| 指標 | リーチ力(年間到達人数)、支出喚起力(コアファンによる年間関連市場規模) |
| 注目コンテンツ | 『鬼滅の刃』『名探偵コナン』『ONE PIECE』『ポケットモンスター』、音楽では『Mrs. GREEN APPLE』が両指標でランクイン |
| 調査方法・対象 | インターネット調査、全国15~69歳男女、全国7エリアで割付、有効回収サンプル数10,000、調査期間:2025/2/25~3/13、調査機関:QO株式会社 |
| カテゴリ数 | 全11カテゴリ(ドラマ・バラエティ、アニメ・特撮、マンガ・ライトノベル、小説、映画、音楽、ゲーム、美術展・博覧会、スポーツ、レジャー施設・イベント、特定のタレント・人物) |
| 提供物 | カテゴリ別有料レポート、無料サンプル、追加分析(STRATEGY BLOOM CONTENT)、勉強会 |
| 問い合わせ | コンテンツビジネスラボ担当(三浦・和田) メール:cbl-contact@hakuhodo.co.jp |
| 参照リンク | プレスリリース:https://www.hakuhodody-holdings.co.jp/news/corporate/2025/08/5801.html、WizBizページ:https://contents.wizbiz.org/ |
以上が「コンテンツファン消費行動調査2025」の主なポイントとサービス情報の整理です。調査は、コンテンツ利用の「興味」「利用」「支出」「ファン」といった行動を単一ソースで把握しており、ジャンルをまたいだファン行動や利用環境とのクロスデータも取得可能です。これらのデータは、コンテンツを活用した企業のマーケティング設計や、新規事業の検討において実務的な示唆を与えるものと位置付けられます。