Stripeの3Dセキュア分析:日本は決済完了93%維持

3Dセキュア調査発表

開催日:8月29日

3Dセキュア調査発表
3Dセキュアの必須化で決済が止まったりしないの?
記事の通り日本では導入必須化後も決済完了率は平均93%を維持。取引の約60%がフリクションレスで処理され、ワンタイムパスワードや生体認証の定着で決済停滞は抑えられている。
Stripeを入れると本当に不正はどれくらい減るの?
発表ではStripeの最新版認証モデルで対象取引の不正を30%以上削減、過去には約35億円相当の不正を防止。組込みAIやRadarでリスクベースの免除や認証ルートを最適化する。

発表の背景とリリース情報:Stripe が示した調査の目的とタイムライン

ストライプジャパン株式会社は、2025年8月29日 10時00分付の発表で、昨年実施した「3D セキュアの利用動向に関する調査」に基づく改めての分析結果を公表しました。本稿では、フランス、イギリス、日本の各市場における認証(3Dセキュア、SCA)と決済完了に関する主要な特徴と、それらが示す示唆を整理して伝えます。

発表内容は、各国の規制やカード発行会社の運用、消費者行動の違いが決済完了率や不正抑止にどのように影響しているかを示すものであり、企業が規制市場で決済最適化を図る際の有益なデータを含んでいます。以下では各国ごとの分析結果と、Stripe が提供する技術的な支援策について具体的にまとめます。

フランス・イギリス・日本、それぞれの市場で観測された特徴

Stripe の分析は、各国ごとの認証頻度、フリクションレス認証の割合、チャレンジ成功率、決済完了率、不審請求の推移といった項目を網羅しています。以下に各国の結果を整理します。

各国の説明は、認証の頻度や方式(ワンタイムパスワードや生体認証)、カード発行会社の免除対応、規制当局の対応など、技術的・文化的要因を交えて提示します。

フランス:高頻度の認証要求でも高い承認率とコンバージョンを維持

フランスではカード発行会社が認証なしの取引を拒否するよう推奨されているため、他の欧州地域やイギリスに比べて二要素認証の実施割合が高い点が顕著です。Stripe の分析によると、フランスのカード発行会社は他の欧州地域より約100%高く、イギリスより200%高い割合で二要素認証を行っていると報告されています。

2024年前半における動向として、フランスでの3Dセキュア要求率は15%増加し、フリクションレスフロー(顧客がワンタイムパスワード等を入力せずに認証が完了する方式)は40%増加しました。認証要求が増えているにもかかわらず、チャレンジ成功率と決済完了率は高水準で維持されています。

  • 3Dセキュア要求率の変化:2024年前半で+15%
  • フリクションレスフローの増加:+40%
  • 二要素認証実施割合:他欧州地域比 約+100%、英国比 +200%

この成功の背景としては、事業者側の技術的対応(3Dセキュアの積極活用や、データに基づくSCA免除の承認)と、ICカードの早期導入に伴う国民の二要素認証への文化的な馴染みが挙げられています。

イギリス:SCA免除の戦略的活用で承認成功率が向上

イギリスにおいては、認証成功率が他のSCA市場より5〜10%高く、チャレンジ(追加認証要求)成功率も高水準を示しています。さらに、イギリスのカード発行会社は欧州の発行会社より10ポイント高く免除要求を受け入れていると報告されています。

この背景には、金融規制当局である英国金融行為規制機構(FCA)がSCA導入に対して猶予期間を与えたことがあり、カード発行会社がリスクベースの意思決定システムや顧客認証体験を改善するためのインフラ整備に時間を確保できた点が指摘されています。

  • 認証成功率:他SCA市場比 +5〜10%
  • 免除受入れ率:欧州発行会社比 +10ポイント
  • 銀行アプリ経由認証:チャレンジの75%以上が銀行アプリで処理され、多くが生体認証を利用

技術的には、ワンタイムパスワード(OTP)ではなくプッシュ通知や生体認証を活用することで、ユーザー体験を改善しつつ高い承認成功率を実現しています。

日本:3Dセキュア必須化後も高水準の決済完了率を維持

日本では原則として2025年3月までに3Dセキュアの導入が必須化されました。導入必須化後、3Dセキュアを通した取引は4倍に増加した一方で、決済完了率は平均93%と高い水準を維持しています。

日本の高い決済完了率の要因としては、全体の取引の60%がフリクションレス(顧客の操作を必要としない認証)で処理されている点と、カード所有者がワンタイムパスワードに既に慣れている点が挙げられます。加えて、不審請求の申し立て率は昨年同期比で30%低下しています。

  • 3Dセキュア導入必須化:原則 2025年3月まで
  • 取引数の変化:3Dセキュアを通した取引が4倍に増加
  • 決済完了率:平均 93%
  • フリクションレス処理:取引の60%がフリクションレス
  • 不審請求の推移:申し立て率 -30%(前年同期比)

一方で、一部の取引において認証成功率が低下する事例も観測されましたが、カード発行会社との連携や各発行会社の要件に合わせた3Dセキュア要求データの最適化により迅速に改善が図られたと報告されています。

Stripe が提供する技術と企業導入によるメリット

Stripe は、組込みAIや最新の認証モデルを活用して、企業ごとに最適な認証ルートや免除判断を自動選択する機能を提供しています。これにより、規制市場においても決済完了率を維持しつつ不正を削減することが可能になっています。

発表資料では、Stripe を導入することで得られる具体的なメリットと運用の柔軟性についても言及されています。以下に主要項目を整理します。

組込みAIを活用した最適化技術
ビジネスに最適なプロトコルと認証パスを自動選択し、適切なリスクベースの規制免除を適用することで、承認成功率とコンバージョンを最適化します。
第三者決済代行業者との併用
既存の決済代行を利用しつつ、Stripe の3Dセキュア認証を実行することができ、段階的な導入やハイブリッド運用が可能です。
柔軟な3DSトリガー設定
決済成功率、不正防止、コンバージョン最適化などの目的に応じてトリガーを調整できるため、ユースケースに応じた細かな運用が可能です。

発表によれば、Stripe の最新認証モデルを搭載したソリューションは対象取引の不正を30%以上削減するなど大幅な改善を実現しているとされています。また、Stripe の不正対策ソリューション「Stripe Radar」と3Dセキュアの組合せにより、昨年は約35億円相当の不正行為の防止に成功したことが示されています。

調査が示す政策・技術の相互作用と事業者への示唆

今回の分析からは、規制やカード発行会社の運用方針、消費者の認証習慣といった要素が密接に影響し合い、各市場ごとに異なる最適解が存在することが明らかになりました。以下では、技術的・規制的観点からの主要な示唆を整理します。

特に、規制市場においては単に認証を強化するだけでなく、リスクベースの免除やフリクションレスな手法を組み合わせることが、決済完了率を維持しつつ不正を抑止する上で有効であると指摘されています。

  1. 規制の導入と猶予期間の設計は事業者・発行会社のインフラ投資を促し、結果として高い承認成功率に結びつく可能性がある。
  2. フリクションレス認証の比率を高めることで、ユーザー体験を損なわずに決済完了率を維持できる。
  3. カード発行会社とのデータ連携や要件に合わせた要求データの最適化が問題解決を迅速化する。

これらの点は、フランス、イギリス、日本の各市場で観測された実績と整合します。各市場の文化的背景(例:ICカードの普及状況や消費者の認証習慣)も、施策の効果に影響を与える要素として重要です。

発表内容の要点整理と数値のまとめ

ここまでに述べた主要データと発表情報をわかりやすく整理した表を以下に示します。各国の主要指標、Stripe の提供価値、発表の基本情報を一目で確認できます。

項目 フランス イギリス 日本
認証頻度・実施割合 他欧州比 約+100%、英国比 +200% の二要素認証実施割合 免除受入れ率が欧州発行会社より+10ポイント 3Dセキュア導入必須化(原則 2025年3月まで)
3Dセキュア要求率の変化 2024年前半で+15% 記載なし(免除活用で承認成功率向上) 3Dセキュア取引が4倍に増加
フリクションレスフロー +40% 増加 チャレンジの75%以上が銀行アプリで認証(多くが生体認証) 取引の60%がフリクションレスで処理
決済完了率 高水準を維持(具体値の平均は公表データに準ずる) 他SCA市場より +5〜10% 高い認証成功率 平均 93%
不正・申し立ての変化 高い承認成功率とコンバージョンを維持 免除活用で承認成功率最大化 不審請求申し立て率 -30%(前年同期比)

また、Stripe 側の全体的な実績として、次の点が発表資料に含まれています。Stripe は世界で年間1.4兆ドル(約210兆円)以上の決済を処理しており、AIやステーブルコインに注力した事業拡大を進めています。さらに、昨年はStripe の不正対策によって約35億円相当の不正行為を防止したと報告されています。詳細は https://stripe.com/jp を参照してください。

以上が、ストライプジャパン株式会社が2025年8月29日に公表した3Dセキュア利用動向の分析に基づく主要なポイントと数値の整理です。各国の規制・技術・文化的要因が複合的に影響しているため、事業者は自社の取引特性やターゲット市場に応じて戦略を設計する必要があります。

参考リンク: