DTUとInnovation Dojoが提携、SNBで皮膚診断革新

DTUとSNB技術提携

開催日:9月9日

今回の発表って何が起きたの?
Innovation Dojo Japanがデンマーク工科大学(DTU)MIDAS研究グループと連携協定を締結し、日本でSNB技術の共同臨床試験や事業開発を進めると発表。BAE JUNIKが日本担当に就任しました。
SNBって何ができるの?
SNBはHS-DAFMによる非侵襲の皮膚ナノテクスチャ解析で、皮膚バリアや微細なダメージを高解像度で可視化。個別処方や治療効果の追跡、化粧品開発でのバイオマーカー利用が期待されます。

デンマーク工科大学(DTU)との連携が描く日本でのヘルステック応用

2025年9月9日13時57分、Innovation Dojo Japan合同会社は、デンマーク工科大学(DTU)のMIDAS研究グループと連携協定を締結したことを公表しました。今回の発表は、日本の製薬・化粧品企業と欧州トップレベルの研究機関を結びつけ、先端ヘルステクノロジーの実用化と事業創出を加速することを目的としています。

本連携に伴い、日本におけるDTUの事業開発担当者としてビジネス開発の専門家、BAE JUNIK(ベ・ジュンイク)が就任しました。Innovation Dojo Japan側の関係者としては、共同創業者兼CEOのJoshua Flannery(ジョシュア・フラナリー)がプロジェクトの推進を支援します。両者は、DTUの研究シーズを日本市場に適合させるための共同臨床試験や企業連携を進める計画を示しています。

ランキングと研究力の背景

DTUは、EngiRank 2024においてEU域内の技術系大学を対象にした総合評価で第1位に選出されており、同ランキングで総合1位を獲得するのは今回が2度目です。評価対象はEU27か国に加えスイス・ノルウェーを含む226機関であり、DTUは化学工学、土木工学、環境工学、機械工学など複数分野でEUトップの評価を受けています。

この高い研究力に基づき、DTUのMIDAS研究グループは非侵襲的な皮膚評価技術などヘルステック領域で独自の成果を積み上げてきました。今回の提携は、その学術的優位性を日本の産業界に橋渡しする役割を担います。

皮膚ナノテクスチャーバイオメトリクス(SNB)――計測手法と応用領域

本連携の中核技術となるのが、非侵襲的に皮膚バリア機能を評価する「皮膚ナノテクスチャーバイオメトリクス(SNB)」です。SNBは高速皮膚原子間力顕微鏡(HS-DAFM)を用いることで、皮膚表面のナノスケール形状やテクスチャーを高精度に捉えます。

SNBの測定は非侵襲的である点が特徴です。これにより、アトピー性皮膚炎、刺激性接触皮膚炎、紫外線による皮膚ダメージなど、さまざまな皮膚状態の精密評価が可能となります。臨床試験を通じて得られるデータは、診断精度の向上やパーソナライズド製剤の基礎データとして活用される見込みです。

技術の構成要素と測定の特徴

SNBは、HS-DAFMによる高解像度イメージングに基づいており、微細な皮膚表面の凹凸やテクスチャーを解析してバリア機能の指標化を行います。測定はリアルタイム性と非侵襲性を両立させ、臨床の現場や製品開発の場での導入を前提に設計されています。

この技術により、従来の評価法では捉えきれなかった皮膚の微細変化や治療反応が可視化され、バイオマーカーとしての利用や、個別処方の最適化が期待されます。

化粧品・医療分野にもたらす具体的利点と期待される産業応用

プレスリリースでは、SNBなどの技術連携がもたらすメリットを消費者、化粧品ユーザー、医療従事者の三者に分けて明示しています。これらの利点は、製品や治療の品質向上、効率化、そして市場における差別化に直結します。

日本の化粧品市場規模やデジタル診断への投資状況と合わせ、DTUの技術を実用化することで測定可能な投資対効果(ROI)を企業に提供することが狙いとされています。

  • 消費者・臨床医向け:迅速かつ正確な皮膚状態の評価に基づく、個々の皮膚バリアに適したパーソナライズドスキンケア提案が可能になる点が挙げられています。
  • 化粧品ユーザー向け:SNBのリアルタイムデータを活用した処方開発により、敏感肌対応が強化され、適合製品を見つける試行錯誤を軽減する効果が期待されます。
  • 医療従事者向け(1):治療効果の追跡に信頼性の高いバイオマーカーを利用できるため、患者に最適な治療を早期に提供しやすくなります。
  • 医療従事者向け(2):DTUのヘルステック研究やナノテクノロジー、バイオメトリクス分野のスピンオフに直接アクセスでき、精密医療や皮膚診断における新たな事業機会を開拓できます。

市場規模や投資環境の数値

発表文中では日本の化粧品市場が「2.5兆円規模」である点、デジタル診断には「年間400億円以上」が投資されている点、そして日本人消費者の「約8割」がデータに基づいたスキンケアを重視している点が明記されています。これらの数値は、技術実装の経済的合理性を示す根拠として提示されています。

Innovation Dojo Japanは、これらの市場指標を踏まえ、DTUの研究成果を企業の製品開発や臨床応用へとつなげることにより、企業と消費者双方に測定可能な価値をもたらすことを目指すとしています。

関係組織、担当者、連携体制の詳細および要点整理

今回の連携に関する主要な組織情報、担当者情報、連携で扱う技術や期待効果などを以下に詳述します。記事末尾には本記事で扱った主要項目を表形式で整理しています。

発表元はInnovation Dojo Japan合同会社(本社:神戸市)、連携相手はデンマーク工科大学(DTU)MIDAS研究グループです。DTU側の代表コメントはEn-Te Hwu教授、Innovation Dojo Japan側のコメントはプログラム&事業開発マネージャーのBae Junik(ベ・ジュンイク)とCEOのJoshua Flannery(ジョシュア・フラナリー)によるものです。

発表日時
2025年9月9日 13時57分
連携主体
Innovation Dojo Japan合同会社(本社:神戸市)とデンマーク工科大学(DTU)MIDAS研究グループ
主な技術
皮膚ナノテクスチャーバイオメトリクス(SNB)、高速皮膚原子間力顕微鏡(HS-DAFM)
日本における担当者
BAE JUNIK(ベ・ジュンイク)を日本の事業開発担当として任命
主な目的
日本の製薬・化粧品会社との共同臨床試験や事業開発支援を通じて、SNB技術の実用化と事業化を推進すること

DTUおよびInnovation Dojo Japanの組織情報

DTU(デンマーク工科大学)の設立は1829年で、職員数は約6,000名、学生数は12,000名以上とされています。所在地はデンマーク・コングスルンビュー。MIDAS研究グループの情報は次のURLで確認できます: https://www.healthtech.dtu.dk/research/research-sections/section-idun/group-midas

Innovation Dojo Japan合同会社は2021年設立、代表取締役CEOはJoshua Flannery、従業員数は10名、本社所在地は兵庫県神戸市中央区磯上通4丁目1-14です。同社は2016年にオーストラリア・シドニーで創業し、「Ordinary people make extraordinary impacts(普通の人々が非凡な影響を与える場所)」をミッションに、(1) 起業家育成、(2) スタートアップインキュベーション、(3) イノベーション関連の事業開発および資金調達支援を展開しています。会社情報の詳細は https://innovationdojo.com.au/ に掲載されています。

本記事の要点一覧
項目 内容
発表日 2025年9月9日 13:57
発表主体 Innovation Dojo Japan合同会社
連携機関 デンマーク工科大学(DTU)MIDAS研究グループ
主要技術 皮膚ナノテクスチャーバイオメトリクス(SNB)、HS-DAFM
目的 日本企業との共同臨床試験および事業開発支援、ヘルステックの事業化
日本担当 BAE JUNIK(ベ・ジュンイク)
市場関連数値 化粧品市場:2.5兆円、デジタル診断投資:年間400億円以上、データ重視の消費者割合:約8割
DTU概要 設立1829年、職員約6,000名、学生12,000名以上、所在地:デンマーク・コングスルンビュー
Innovation Dojo Japan概要 設立2021年、代表CEO Joshua Flannery、従業員10名、本社:神戸市
参照リンク DTU MIDAS: https://www.healthtech.dtu.dk/research/research-sections/section-idun/group-midas
Innovation Dojo: https://innovationdojo.com.au/

本稿では、DTUとInnovation Dojo Japanによる提携の狙い、採用する技術の性質、化粧品・医療分野における具体的な利点、そして関係組織と担当者に関する全情報を整理して伝えました。発表に含まれる数値や担当者名、組織概要、技術名などは本文中の通りです。