梨木香歩原作『家守綺譚』漫画版、冒頭2話を試し読み公開
ベストカレンダー編集部
2025年9月18日 12:44
家守綺譚 試し読み公開
開催日:9月18日
梨木香歩の言葉が絵になった瞬間──試し読み公開の知らせ
株式会社新潮社は2025年9月18日11時00分付のリリースで、梨木香歩の小説『家守綺譚』を近藤ようこが漫画化した書籍の発売に先駆け、漫画版の冒頭2話を試し読みとして公開すると発表しました。原作者の梨木は「行間が、ここまで絵にできるなんて」と語っており、小説の繊細な〈行間〉がどのように絵に変換されているかが注目点として挙げられています。
試し読みは発売日前に公開されるもので、近藤ようこによって描かれた視覚表現を通して、原作が持つ時間感覚や季節感、登場する植物や奇妙な出来事がどのように再現されているかを読むことができます。公開は原稿段階に基づくもので、漫画の冒頭2話が掲載されています。
明治の庭で紡がれる日常と不思議──物語の要点
物語は明治時代を舞台に、文筆家・綿貫征四郎が亡き友である高堂の家の「家守」として暮らしはじめるところから始まります。綿貫が暮らすのは白木蓮や都わすれ、萩、サザンカなど、季節ごとの草花に満ちた庭です。庭や自然は物語の重要な舞台装置となり、そこに集まる草花や木々が情緒を添えます。
日常は穏やかでありながらも、ふとした瞬間に奇妙で寓話的な出来事が差し込まれます。サルスベリに懸想されるという出来事、河童の衣を拾う場面、化狸を助ける場面など、人と自然、そして民間伝承や妖怪めいた事象が並行して描かれます。物語は秋から冬、そして再び春へと季節を巡らせながら進行します。
登場する植物と象徴性
庭に植えられた植物は単なる風景描写ではなく、登場人物の感情や物語の節目を示唆する役割を持ちます。白木蓮、都わすれ、萩、サザンカのほか、サルスベリなども象徴的な場面に登場します。
- 白木蓮:季節の始まりや、慎ましさを示す存在として描かれることがある。
- 都わすれ:郷愁や思い出を喚起する植物として場面の情感を高める。
- 萩:秋の景色を象徴し、季節の移ろいを物語に刻む。
- サザンカ:冬に咲く花として、寒さとぬくもりの交差点を示す。
- サルスベリ:物語内で特異な役割を持ち、怪異めいたエピソードに関わる。
奇妙な出来事と物語の進行
綿貫の周囲で起こる出来事は、日常と非日常が重なり合う形で描かれます。河童の衣を拾う、化狸を助けるといったエピソードは、単純な怪談ではなく、人と自然の距離感や当時の世界観を反映した描写として機能します。
物語が進むにつれて、綿貫は亡き友・高堂の物語を書き残す決意を固めていきます。原作小説が持つ静謐な時間経過と、近藤による絵のテンポがどのように融合するかが読みどころです。
執筆者・漫画家のプロフィールと主要作品
本作に関わる二名の略歴と代表作は、作品理解を深めるための重要な背景情報です。ここでは原作の梨木香歩と漫画を手がけた近藤ようこの経歴と著作を紹介します。
両者ともに長年にわたり文学・漫画の領域で高い評価を受けてきた作家です。梨木は純文学の作家として多数の小説・エッセイを発表しており、近藤は民俗学や古典文学への造詣を背景に多様な文学作品の漫画化を行ってきました。
原作・梨木香歩(なしき・かほ)
- 生年
- 1959年生まれ
- 主要小説(抜粋)
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- 丹生都比売 梨木香歩作品集
- 西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集
- 裏庭
- からくりからくさ
- りかさん
- 家守綺譚
- 村田エフェンディ滞土録
- 沼地のある森を抜けて
- ピスタチオ
- 僕は、そして僕たちはどう生きるか
- 雪と珊瑚と
- 冬虫夏草
- 海うそ
- 岸辺のヤービ
- 主要エッセイ・紀行など(抜粋)
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- 春になったら莓を摘みに
- ぐるりのこと
- 渡りの足跡
- 不思議な羅針盤
- エストニア紀行
- やがて満ちてくる光の
- 炉辺の風おと
- ここに物語が
- 歌わないキビタキ
- 小さな神のいるところ
漫画・近藤ようこ(こんどう・ようこ)
- 出身・経歴
- 1957年新潟市生まれ。大学在学中に漫画家デビュー。
- 受賞歴
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- 『見晴らしガ丘にて』で第15回日本漫画家協会賞優秀賞
- 『五色の舟』(津原泰水原作)で第18回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞
- 主要作品(抜粋)
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- 水鏡綺譚
- 説経 小栗判官
- 移り気本気
- ルームメイツ
- 兄帰る
- 夜長姫と耳男
- 桜の森の満開の下
- 逢魔が橋
- ゆうやけ公園
- 戦争と一人の女
- 死者の書
- 夢十夜
- 高丘親王航海記
書誌情報と公開情報のまとめ
書籍は上巻と下巻の2冊構成で、A5判ソフトカバーです。発売日は2025年9月25日と定められており、試し読みはそれに先立つ公開です。各巻の定価、ISBN、並びに新潮社の書籍ページURLは以下の通りです。
試し読み公開日はプレスリリースの発表日である2025年9月18日11時00分です。公開されたのは漫画版の冒頭2話で、原作者によるコメントも合わせて公開されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出版社 | 株式会社新潮社 |
| プレスリリース日時 | 2025年9月18日 11時00分 |
| 作品名 | 家守綺譚(いえもりきたん) 上 / 下 |
| 著者 | 梨木香歩(原作) / 近藤ようこ(漫画) |
| 発売日 | 2025年9月25日 |
| 造本 | A5判 ソフトカバー |
| 定価(上) | 1,870円(税込) |
| 定価(下) | 1,815円(税込) |
| ISBN(上) | 978-4-10-356471-3 |
| ISBN(下) | 978-4-10-356472-0 |
| 試し読み | 漫画版冒頭2話を試し読み公開(プレスリリース発表に基づく) |
| 書籍ページ(上) | https://www.shinchosha.co.jp/book/356471/ |
| 書籍ページ(下) | https://www.shinchosha.co.jp/book/356472/ |
上記の表は本記事で取り上げた主要なデータを整理したものです。物語の舞台設定、登場する植物や出来事、著者双方の経歴と代表作、発売日と価格、ISBN、試し読み公開の情報を含めてまとめています。
本記事は新潮社の2025年9月18日付のプレスリリースの内容を基に作成しました。原作の静かな時間経過と近藤ようこの画面構成がどのように融合しているかは、公開された冒頭2話の試し読みで直接確認できます。
参考リンク: