再春館製薬所の『家をクスリに』がAge‑Well賞受賞
ベストカレンダー編集部
2025年10月15日 16:14
家をクスリに受賞
開催日:10月15日
再春館製薬所が示した「家をクスリに」という設計哲学と受賞の事実
再春館製薬所のプロジェクト『住まいのAge-Wellデザイン〜「家をクスリに」〜』が、Age-Well Design Lab(株式会社AgeWellJapan)主催の「Age-Well Design Award 2025」企業部門を受賞したことが発表されました。プレスリリースは2025年10月15日午前10時に出され、授賞式は2025年9月某日に東京ミッドタウン八重洲カンファレンス4階で行われました。
授賞式では、再春館製薬所の社員である間地氏が受賞トロフィーを受け取る様子が報告されています。受賞の背景には、同社が長年培ってきた漢方の理念を住まいの設計に応用し、「年齢にとらわれない前向きな暮らし」を提示した点が評価されたことが挙げられます。
「家をクスリに」——コンセプトの中身と具体的な設計要素
『住まいのAge-Wellデザイン』は、漢方の教えを根底に据え、「人が本来持つ力(自己回復力)」を住空間で育むことを目的とした取り組みです。スマートハウスのようにAIやIoTを軸とする技術偏重のアプローチとは対極にあり、日々の休養と生活環境そのものが心身の回復を支えるという考えを重視しています。
このプロジェクトにおける主な要素は、居住者が日常生活の中で〈使うこと〉によって機能を維持・回復できるという設計思想に基づいており、空間デザインや素材選定、光環境の調整など複数の側面で具体化されています。
自己回復力を育む住空間の設計
設計の中心には「明日が楽しみな未来」を送るための休養と活力の循環を生むことがあります。休養がただの消極的な行為に留まらないよう、日々の生活を通じて次の日への活力が生まれる空間設計が求められます。
具体的には、以下の要素を組み合わせることで、心身の調和を図る提案がなされています。
- 1/fゆらぎを感じられる素材・配置による心地よさの追求
- 光と暮らす家の提案:自然光の取り入れ方や人工光源の調整を通じた生体リズムの支援
- 漢方理念に基づく生活リズムの設計:単なる薬理ではなく日常環境を通じたセルフケアの促進
足裏から整える名栗床(なぐりゆか)の採用と実証
本取り組みは、床材として名栗床を採用する点が重要な特徴です。名栗床は歩行後に左右の重心バランスが均一になる傾向を示し、バランス能力の向上が示唆されるという実験結果が報告されています。
実験では歩行後の重量配分を評価し、統計的な有意差が確認されました(P<0.05, N=8)。この結果は、日常的に名栗床のような刺激を受けることで身体機能の「廃用」を防ぎ、「使うこと」で機能維持・向上につなげられるという設計思想を裏付ける要素とされています。
| 評価項目 | 測定結果 |
|---|---|
| 左右重心バランス | 歩行後に均一化する傾向(P<0.05, N=8) |
取り組みの背景と受賞に至る評価のポイント
再春館製薬所が本プロジェクトを立ち上げた背景には、現代社会における「老い」と「住まい」への課題認識があります。特に注目されるのは、「老い」を単に抗うべき衰えとして捉えるのではなく、便利さが生む『廃用』こそが問題であるという再定義です。
こうした視点から、住まいを「守る箱」としてではなく、人生の約3分の2にあたる時間(合計484,428時間、約55.3年)を過ごす場として捉え直し、居住者の可能性を引き出す空間へと転換することを目指しています。
- 主催者による受賞ポイントのコメント
- 「ポジティブエイジハウスを謳う『家をクスリに』という考え方は、歳を重ねることを前向きにとらえ、日々の暮らしを通して心と体を整えていくという、これからの時代に必要な発想だと感じています。年齢にとらわれず、自分らしく生きるための新しい道を示しており、まさしくAge-Wellが目指す‘誰もが明日を楽しみにできる社会’の実現に通じる取り組みとして選出させていただきました。」
Age-Well Design Awardは、Ageism(年齢による差別偏見)の解消と、歳を重ねることをポジティブに捉える価値観の普及を目的とした表彰制度です。企業部門では、Age-Wellの理念を業務や地域活動へ取り入れ、社会的な前向きな変化を促す取り組みが評価されます。2025年のカンファレンスでは「老いを再定義する」がテーマとして掲げられました。
Age-Well Design Lab自体は、株式会社AgeWellJapanが運営する研究ネットワークで、9,000時間超の対話データや、横浜・二俣川駅直結のコミュニティスペース「モットバ!」を拠点に研究・発信を行っています。詳細は Age-Well Design Lab(株式会社AgeWellJapan) を参照してください。
再春館製薬所の企業背景と事業方針、将来的な事業反映
再春館製薬所は1932年に熊本で創業し、漢方理念に基づく医薬品・医薬部外品・化粧品の製造販売を行ってきました。代表的な製品には「痛散湯」や「ドモホルンリンクル」があり、企業理念として「自然とつながり、人とつながる明日を」を掲げています。
同社は2016年の平成28年熊本地震の際に被災地復興支援に関与し、本社を熊本県益城町に置く企業として地域貢献の側面も持っています。また、全国初の独自の価値観に基づく返礼品選定を行う自社運営ポータル「再春館製薬所 ふるさと納税サイト」の展開や、自然との共生・サステナビリティ活動にも取り組んでいます(詳細は 再春館製薬所 公式サイト を参照)。
2032年の創業100周年に向けては「ポジティブエイジカンパニー宣言」を掲げており、「明日が楽しみと思える毎日をつくりたい」という意志表明とともに、お客様や社員、地域、自然に対する中長期的な事業計画としての位置付けを示しています。この宣言のもと、漢方の製薬会社としての独自性を活かしたソリューション提案を進める方針が表明されています。
要点の整理
以下の表に、本記事で取り上げた主要な事実と数値、関連リンクをまとめます。記事では、受賞の事実、プロジェクトのコンセプト、具体的な設計要素と実証データ、受賞に至る背景、主催者のコメント、再春館製薬所の企業情報と今後の方針を網羅して整理しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| プレスリリース発表日 | 2025年10月15日 10:00 |
| 受賞 | Age-Well Design Award 2025(企業部門)受賞 |
| 授賞式 | 2025年9月某日、東京ミッドタウン八重洲カンファレンス4階(Age-Well Conference 2025内) |
| 受賞プロジェクト名 | 住まいのAge-Wellデザイン〜「家をクスリに」〜 |
| プロジェクトの核 | 漢方の教えに基づく自己回復力の育成、休養から明日への活力を生む住空間設計 |
| 具体的要素 | 1/fゆらぎを感じる空間、光環境設計(光と暮らす家)、名栗床の採用 |
| 実証データ | 名栗床の歩行後に左右重心が均一化する傾向(P<0.05, N=8) |
| 主催者の評価 | 歳を重ねることを前向きに捉える発想で、Age-Wellの理念に合致すると評価 |
| 関連組織 | Age-Well Design Lab(株式会社AgeWellJapan) URL: https://agewelljapan.co.jp/lab/ |
| 会社概要(概要) | 再春館製薬所(創業1932年、熊本)。主力製品に「痛散湯」「ドモホルンリンクル」。公式サイト: https://www.saishunkan.co.jp/ |
| 関連リンク | ポジティブエイジハウス「家をクスリに」の詳細 |
上表は本件の主要な事実と数値、参考となる外部リンクをまとめたものです。本稿では、受賞経緯とその背景にある設計思想、名栗床を用いた実証までを含めて詳細に報告しました。今後はこの評価を踏まえ、再春館製薬所が漢方理念を暮らしのデザインに反映させる事業展開を進める方針である点も含めて伝えています。
参考リンク: