K.L.Vが金賞受賞 万博展示が映す「水」の記憶

K.L.V金賞受賞

開催日:9月18日

K.L.V金賞受賞
K.L.Vって何?
光の装置と映像が一体化したシネマティック・インスタレーション。松尾高弘の光球装置と岡太地の映像が連動し、450個の光球で滋賀の「水」の記憶を没入体験として見せた展示です。
今回の受賞は何が評価されたの?
空間と映像を等価に結びつけ、来場者が作品の一部になる構造、滋賀の自然や文化を映像表現として顕在化させた点、光装置との革新的な融合が高く評価されました。

K.L.Vが描いた「水」の記憶──大阪・関西万博での没入体験

2025年10月14日に閉幕した大阪・関西万博2025において、関西パビリオン滋賀県ブースで展示されたシネマティック・インスタレーション「K.L.V(キネティック・ライト・ビジョン)」が、日本空間デザイン賞2025(エンターテインメント空間部門)で金賞を受賞しました。プレスリリースはドラマメイカーズ株式会社から2025年10月22日13時29分に発表されています。

半年間の会期を通じて約40万人が訪れた本展示は、光のアーティスト松尾高弘(株式会社ルーセントデザイン代表)が構築した革新的な光のアート装置と、映像制作を担った映画監督・岡太地(ドラマメイカーズ代表)による映像作品が呼応することで成立した作品です。展示内では450個の光球が浮遊し、曲面スクリーンに映し出される滋賀の風景と共鳴することで、来場者に「水」の記憶をたどる没入体験を提供しました。

ドラマの波を使って【日本空間デザイン賞2025】大阪・関西万博閉幕・映画監督の岡太地(映像制作会社『ドラマメイカーズ』)が映像を手がけた『K.L.V / ⼤阪・関⻄万博 関⻄パビリオン滋賀県』が金賞 画像 2

体験の構成と来場者の反応

光と映像が重なり合うことで、視覚・聴覚に加えて触覚的な感覚までも刺激する構成となっています。会場に設置された曲面スクリーンと浮遊する光球が連動することで、映像の深みと空間の物理性が同時に来場者の前に現れ、観客が体験の一部となる展示体験が生まれました。

上映終了ごとに自然と拍手が起こり、SNS上では「琵琶湖の上を旅しているよう」「映像が呼吸しているようだった」といった感想が多数投稿されました。こうした反応は、映像と空間が等価に結びつき、ひとつの作品として観客に届いたことの表れといえます。

  • 展示名称:K.L.V(キネティック・ライト・ビジョン)
  • 会場:関西パビリオン・滋賀県ブース(大阪・関西万博2025内)
  • 来場者数:約40万人(会期通算)
  • 光球数:450個
ドラマの波を使って【日本空間デザイン賞2025】大阪・関西万博閉幕・映画監督の岡太地(映像制作会社『ドラマメイカーズ』)が映像を手がけた『K.L.V / ⼤阪・関⻄万博 関⻄パビリオン滋賀県』が金賞 画像 3

受賞の背景と評価の要点

日本空間デザイン賞2025のエンターテインメント空間部門において金賞を獲得した本展示は、9月18日の速報発表に続き、閉幕の節目に改めて評価が注目されました。審査側は空間と映像の同等な関係性、来場者が作品の一部になる構造、そして地域資源である滋賀の自然や文化を映像表現として顕在化させた点を高く評価しています。

金賞受賞作の中から選ばれるグランプリである「KUKAN OF THE YEAR 2025」は、贈賞式にて発表されます。贈賞式は2025年11月21日(金)に行われる予定です。

受賞部門
日本空間デザイン賞2025 エンターテインメント空間部門 金賞
速報発表
2025年9月18日(速報)
閉幕
2025年10月14日(大阪・関西万博閉幕)
グランプリ発表
KUKAN OF THE YEAR 2025:2025年11月21日(金)贈賞式にて発表
ドラマの波を使って【日本空間デザイン賞2025】大阪・関西万博閉幕・映画監督の岡太地(映像制作会社『ドラマメイカーズ』)が映像を手がけた『K.L.V / ⼤阪・関⻄万博 関⻄パビリオン滋賀県』が金賞 画像 4

映像制作の舞台裏──岡太地と制作チームの取り組み

映像パートはドラマメイカーズ株式会社代表で映画監督の岡太地が制作責任を担い、滋賀の自然・文化・人々の営みを「水」をテーマに記録・編集しました。撮影・編集を岡太地が担当し、照明は浅川周氏、撮影助手に佐野雄希氏・西林前氏が参加。別チームの撮影には滋賀にゆかりのあるカメラマン山崎純敬氏らも参加しています。

岡太地は、地域の風景を単に「魅力的に伝える」だけでなく、来場者が体験を終えた後に残るイメージや情感を念頭に置いて映像を構築したと述べています。具体的には、漁に向かうボートを追うドローンショットや、国宝・西明寺三重塔の内部の映像、琵琶湖の湖面をクローズアップするクライマックスなど、映画的なドラマ編成を施した構成が特徴です。

ドラマの波を使って【日本空間デザイン賞2025】大阪・関西万博閉幕・映画監督の岡太地(映像制作会社『ドラマメイカーズ』)が映像を手がけた『K.L.V / ⼤阪・関⻄万博 関⻄パビリオン滋賀県』が金賞 画像 5

技術的選択と表現の狙い

今回の撮影に多用されたカメラはRED KOMODO-Xで、深い色を引き出すこと、偶発性を逃さないREDRAW撮影が可能な点、小型でボート上などでも扱いやすい点が採用理由として挙げられています。照明では映画照明技師・浅川周氏の協働によって濃度のある色彩と光の表現が実現され、巨大スクリーンに耐えうる力強い映像密度が確保されました。

岡は普段の物語制作で培ったドラマ文脈作りの能力を空間映像に適用することを課題とし、スクリーン外の要素と呼応する映像制作の可能性についても言及しています。今回の仕事が今後の映画やドラマ演出に活かされると期待できる点も示されており、映像制作の方法論としても示唆に富むプロジェクトでした。

ドラマの波を使って【日本空間デザイン賞2025】大阪・関西万博閉幕・映画監督の岡太地(映像制作会社『ドラマメイカーズ』)が映像を手がけた『K.L.V / ⼤阪・関⻄万博 関⻄パビリオン滋賀県』が金賞 画像 6

プロジェクトの関係者、経歴、関連情報の整理

本プロジェクトの主要な関係者と岡太地の経歴、関連情報を整理して掲載します。プロジェクトのクレジットや外部での評価動向、今後のスケジュールなどを一目で確認できるようにまとめます。

以下の表はこの記事で言及した主要情報を整理したものです。受賞作の位置づけや制作体制、重要な日付を明確にすることで、本プロジェクトの全体像を把握しやすくしています。

項目 内容
展示タイトル K.L.V(キネティック・ライト・ビジョン / Kinetic Light Vision)
会場 大阪・関西万博2025 関西パビリオン 滋賀県ブース
会期・閉幕 会期:半年間(大阪・関西万博2025全期間) / 閉幕:2025年10月14日
来場者数(展示を訪れた人数) 約40万人(会期通算 来場者数)
受賞 日本空間デザイン賞2025 エンターテインメント空間部門 金賞(速報発表:2025年9月18日)
グランプリ発表 KUKAN OF THE YEAR 2025:贈賞式にて発表(2025年11月21日(金))
主要クリエイター(光) 松尾高弘(株式会社ルーセントデザイン 代表)
映像制作(責任者) 岡 太地(ドラマメイカーズ株式会社 代表 / 映画監督)
制作クレジット(抜粋) 照明:浅川周 / 撮影助手:佐野雄希、西林前 / 別チーム撮影:山崎純敬 ほか
技術・機材 使用カメラ:RED KOMODO-X、REDRAW撮影による色彩表現
主題 「水」を軸にした滋賀の自然・文化・人々の営みの記録と映画的表現
関連リンク https://dramamakers.co.jp

岡太地のプロフィールとしては、1980年京都府生まれ。大阪芸術大学映像学科・大学院修了。在学中より中島貞夫監督に師事しました。2005年に『ぴあフィルムフェスティバル』で準グランプリほか4冠を受賞し、2006年には文化庁主催「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」に選出され、『屋根の上の赤い女』を監督しています。代表作には『レトロの愛情』『川越街道』『わくわく調査隊!』などがあり、MVやブランディング映像を多数手がけてきました。2023年にドラマメイカーズ株式会社を設立し、武蔵野美術大学 映像学科非常勤講師、日本映画監督協会会員です(本文中のクレジット表記は岡 太地)。

この記事では、展示の構造、受賞の経緯、制作の現場と技術的選択、関係者の情報を整理して提示しました。K.L.Vは光と映像が一体となることで地域の記憶を現在化する取り組みとして評価され、今後の空間表現や映像表現の方向性を示す事例のひとつとなっています。

参考リンク: