RTとNSKが資本・業務提携、フィジカルAIの量産体制へ
ベストカレンダー編集部
2025年10月30日 18:34
RTとNSKが業務提携
開催日:10月30日
RTとNSKが描く「日本発フィジカルAI」――ファーストクローズ完了と業務提携の全容
国産ヒューマノイドロボットや四足歩行ロボットを開発する株式会社アールティ(以下「RT」)は、軸受とモーションコントロール技術で世界を支えてきた日本精工株式会社(以下「NSK」)をリード投資家として迎え、資金調達のファーストクローズを完了しました。2025年10月30日付の発表によれば、NSKはRTの議決権の3分の1超を保有する株主になり、同日に両社は業務提携契約を締結しています。
この動きは、フィジカルAI(ハードウェアとAIを融合した実世界ロボティクス)の開発と、次世代AIロボットの産業化を加速することを目的としています。資金調達のファーストクローズと戦略的事業投資の受け入れにより、RTは研究開発から量産・普及・保守に至る一体的な産業エコシステム構築を目指します。
ファイナンスと契約のポイント
発表の核心は、NSKがリード投資家として戦略的事業投資を行い、RTの議決権の3分の1超を占める株主となった点です。これにより資金面のみならず、技術連携や製造・供給面での協力体制が明確化されました。
同日締結された業務提携契約(本提携)は、RTのエンボディードAIやROSを基軸としたAIロボット開発技術と、NSKの高精度モーションコントロール技術を融合させることによって、日本発の次世代AIロボット産業の創出を目指すものです。RTは2005年創業で、代表取締役は中川友紀子氏、本社は東京都千代田区にあります。
提携の狙いと実装計画――製造現場に向けた具体的施策
本提携は、単なる資本提携に留まらず、製造業の現場での実用化を見据えた共同開発と事業化を明確に意図しています。日本の製造業が直面する労働力不足や国際競争力低下という構造的課題に対応するため、両社はAI・ハードウェア・製造の知見を融合させる計画です。
RTはこれまで、上半身人型ロボット「Foodly」などの導入を通じて生産性向上と安全性の両立に貢献してきました。今回の提携を通じて、PoC(概念実証)段階に留まらない実機の量産、広範な社会実装、及び保守体制の確立を目指します。
提携で進める主要な共同領域
- 国産四足歩行ロボットの実用化に向けた共同研究と製造技術の確立
- 製造業向けヒューマノイドロボットの社会実装を視野に入れた共同開発および協業
- AI/ハードウェア/ソフトウェア各種要素技術の研究開発強化
- 両社の技術・営業人材交流を通じた提案力強化と市場開拓
これらは提携の中核を成す要素であり、研究開発だけでなく、製造ラインや量産体制の整備、さらに供給チェーンや保守体制の準備まで範囲が及びます。
技術面と事業体制の整備――サプライチェーンと人材強化
RTはエンボディードAIと呼ばれるフィジカルAI領域で、AIとハードウェアを融合する技術に強みを持ちます。ROS(Robot Operating System)を活用したオープンソース基盤の活用で、国内におけるロボット基盤技術の普及にも取り組んできました。
一方のNSKは1916年の創業以来、軸受(ベアリング)をはじめとするモーションコントロール技術で世界的に高いシェアを持ち、約30ヶ国に拠点を展開しています。NSKの持つ高精度なモーション制御や製造ノウハウは、RTのロボットプラットフォームの性能向上や量産に直結する資産です。
RTが今回の資金調達で強化する項目
- 国産四足歩行ロボットとヒューマノイドの実用化を具現化するための研究開発強化
- 製造業向けロボットを基軸とした工場自動化支援、ROSおよびAIの活用
- サプライチェーンの構築と安定した部材供給体制の確立
- 開発・生産・営業を含む各部門での採用強化と人材育成
加えて、RTは本ファーストクローズを踏まえ、セカンドクローズに向けて幅広いパートナー企業の参画を呼びかけ、研究開発から量産・普及までの一体的体制を整備する方針です。資金調達は段階的に進める計画であり、今後の追加出資や協業先の拡充が見込まれます。
企業情報と連絡先、記事の要点整理
以下に、両社の概要と本提携の要点を整理します。RTは2005年創業で、本社は東京都千代田区。代表取締役は中川友紀子氏。ヒューマノイドや四足歩行ロボット、ROSを用いた現場主義の開発を強みとしています。NSKは1916年に創業、軸受分野で世界第3位の地位を有し、自動車部品や精機分野での技術革新を続けるグローバル企業です。代表執行役社長・CEOは市井明俊氏、本社は東京都品川区にあります。
本提携は、日本発の次世代AIロボット産業の創出と製造・供給基盤の構築を目標に、技術連携、共同開発、サプライチェーン整備、人材交流、量産体制の構築など多面的な施策を同時並行で進める点が特徴です。
- 発表日
- 2025年10月30日 13時05分(RTの発表)
- 主要当事者
- 株式会社アールティ(RT)、日本精工株式会社(NSK)
- 投資・契約の要点
- NSKがリード投資家として戦略的事業投資を実行。NSKはRTの議決権の3分の1超を保有。両社は業務提携契約を締結。
お問い合わせは株式会社アールティ 広報(E-mail: info@rt-net.jp)など、リリース記載の連絡先が案内されています。RTの公式サイトは https://rt-net.jp/、NSKの企業サイトは https://www.nsk.com/jp-ja/ です。また、NSK側のプレスリリースやRTの英語版も公開されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表日 | 2025年10月30日 13:05 |
| 当事者 | 株式会社アールティ(RT)/日本精工株式会社(NSK) |
| 投資形態 | 戦略的事業投資(NSKがリード投資家、ファーストクローズ完了) |
| 議決権保有比率 | NSKがRTの議決権の3分の1超を保有 |
| 主な狙い | フィジカルAI開発の加速、次世代AIロボット産業の創出、製造・供給基盤の構築 |
| 共同で進める主要項目 | 国産四足歩行ロボットの実用化/製造業向けヒューマノイドの社会実装/要素技術の研究開発強化/人材交流と市場開拓 |
| RTの強化項目(資金使途等) | サプライチェーン構築/ROSとAIを活用した工場自動化支援/開発・生産・営業の採用強化 |
| 問い合わせ先 | 株式会社アールティ 広報 E-mail: info@rt-net.jp/Web: https://rt-net.jp/ |
今回の発表は、資金調達の第一段階と技術的連携の開始を示すものであり、研究・PoCから製造・量産・保守に至る一貫したエコシステム構築を目指す具体的なステップが示されています。提携の進展は製造現場でのロボット導入や国内のロボット産業基盤の強化に直接的な影響を与える可能性があり、今後の資本参加やパートナー拡大の動向が注目されます。