NMWAが日本候補5名を選出、2027展へ向け支援金導入
ベストカレンダー編集部
2025年11月17日 13:06
Women to Watch 2027推薦
開催日:11月17日
NMWAの「Women to Watch 2027」へ向けた日本候補作家5名の選出と展覧会の概要
ワシントンD.C.のNational Museum of Women in the Arts(以下、NMWA)は、世界各国の委員会と連携して女性アーティストの国際的可視化を目的とする展覧会シリーズ「Women to Watch」を2〜3年ごとに開催しています。次回第8回となる2027年展は、NMWA開館40周年を記念し、同館の長年の収集を踏まえたテーマ「A Book Arts Revolution」のもと、2027年4月からワシントンD.C.で開催されます。
NMWA日本委員会は、NMWAコンサルティング・キュレーターを務める国立新美術館学芸課長 神谷幸江氏の選考プロセスを経て、日本から推薦する候補作家5名を選出しました。本稿では選出の背景、候補作家の略歴、支援制度、国内での関連展など、プレスリリースの全情報を網羅して整理して伝えます。
展覧会の主題と開催時期
第8回「Women to Watch 2027」はテーマ「A Book Arts Revolution」によって、ブックアーツ(Book Art)という領域の今日的意義を再考する構成が予定されています。NMWAが収集してきた資料や作品群を軸に、ブックアーツの表現と概念の刷新を提示することを目指します。
開催は2027年4月からワシントンD.C.のNMWA本館で実施される予定です。NMWAは1983年にウィルヘルミナ・コール・ホラデイ夫妻によって創設された美術館で、女性アーティストの作品に焦点を当てる先駆的な国際美術館として、未評価領域の再考と多様性の拡大に取り組んでいます。
選考の流れと日本委員会による位置づけ
「Women to Watch」の最終出展作家は国際基準に基づく決定プロセスで選定されます。選考フローは明確に規定されており、各国委員会の推薦が国際的展示構成と均衡を考慮してNMWA本館キュレーターチームによって総合判断されます。
日本委員会が今回推薦した5名は、最終選考に選出されるか否かにかかわらず、国際展に推挙する重要なアーティストとして位置づけられ、独立した評価と支援の対象となります。これは単なる候補リストではなく、継続的な支援と可視化の枠組みとして扱われます。
最終選考のプロセス(ステップ)
- 各国・地域の委員会が複数名を推薦
- NMWA本館キュレーターチームが、国際的な展示構成の観点から総合判断
- 各国・地域から1名を選出
この手続きにより、各国の代表が国際展示のバランスを踏まえて選ばれます。日本からの推薦は複数の候補作家が国際的な文脈で検討される機会を持つことを意味します。
さらに、NMWAは2027年展より新たに候補作家支援金制度を導入しました。本制度は各国の公的統計に基づく平均収入の約2週間分を目安とする国際共通の支援金制度として設けられ、国際的公平性の確保を目的としています。
日本からの候補作家5名と略歴
NMWA日本委員会が選出した日本候補作家は五十音順に以下の5名です。各作家の経歴と作家性に関する情報は推薦理由や国際的評価の文脈で重要な役割を果たします。
- 入江早耶(いりえ さや/広島在)
- 出身・学歴
- 岡山県生まれ。2009年 広島市立大学大学院芸術学研究科博士前期課程修了。ベルリン・ヴァイセンゼー美術大学でも学ぶ。
- 作風・実践
- 印刷物や日用品などの二次元イメージを「消す」行為と、その消しカスから立体作品を生み出す独自の手法で、視覚文化における「表象と物質」の関係を探究する。2019年には兵庫県立美術館で個展「純真遺跡~愛のラビリンス~」を開催。
- 風間サチコ(かざま さちこ/東京在)
- 出身・学歴
- 東京都生まれ。武蔵野美術学園版画研究科修了。
- 作風・実践
- 黒を基調とする木版画作品により、歴史や社会構造を丹念なリサーチに基づいて可視化する表現を展開。2016年に「創造する伝統賞」受賞。
- 宮永愛子(みやなが あいこ/京都在)
- 出身・学歴
- 京都府生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修士課程修了。
- 作風・実践
- ナフタリンやガラス、塩や葉脈などの素材を用いて時間を視覚化し、「変わりながらも存在し続ける世界」をテーマに制作。国内外での展示多数。2020年に第70回芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。
- 村上華子(むらかみ はなこ/パリ在)
- 出身・学歴
- 東京都生まれ。東京大学文学部美学芸術学専修課程卒業、東京藝術大学大学院映像研究科修士課程修了。
- 作風・実践
- 欧州各地で研修し、オートクロームなど古典写真技法を通して視覚メディアの歴史を探究。主な個展に「クリテリオム96」(水戸芸術館、2019)、「du désir de voir」(ポーラ美術館、2022)。
- 米田知子(よねだ ともこ/ロンドン在)
- 出身・学歴
- 兵庫県生まれ。イリノイ大学シカゴ校、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートで写真を学ぶ。
- 作風・実践
- 戦跡や震災地を静謐に捉え、記憶と場所の関係性を探る作品で国際的に高い評価を得る。ヴェニス・ビエンナーレ(2007)、上海ビエンナーレ(2018)に参加。
各作家は在住地や制作手法が多様であり、ブックアーツや視覚文化の諸側面に対する異なる視点を持ち寄ることが期待されます。これらの作家が最終出展作家に選ばれるかはNMWA本館の判断によりますが、今回の推薦は国際的な評価と支援の重要な機会を示します。
候補作家支援金制度の導入と日本での支給額
2027年展より導入される支援金制度は、候補作家の継続的な創作活動を支援することを目的に、各国の公的統計に基づく平均収入の約2週間分を目安として国際共通ルールを定めたものです。NMWAは国際的公平性を担保するためにこの新制度を設けました。
日本委員会では支給額を決定するために国税庁「令和5年度 民間給与実態統計調査」ほか複数の統計資料を参照し、支給額を24万2千円としました。この金額は候補作家の短期的な制作支援に充てられることを意図しています。
国内での関連展とNMWA日本委員会の活動
NMWA日本委員会は2021年の発足以来、日本の女性アーティストの国際的発信を継続的に支援してきました。ジェンダー調査や女性史月間「#5WomenArtists」キャンペーンなどの啓発活動も行っており、国際プログラムとの連携を強めています。
今回の推薦に関連して、国内では2026年3月4日より表参道ヒルズ内AND COLLECTIONの協力を得て、日本候補作家5名による展覧会を開催予定です。詳細は決まり次第あらためて案内されますが、国内外の鑑賞機会や評価の場が増えることになります。
NMWAと「Women to Watch」の位置づけ
NMWAは1983年の創設以来、女性アーティストに焦点を当てる先駆的な美術館として活動してきました。展覧会や収集を通じて美術史における未評価領域を再考し、多様性の拡大を図る役割を果たしています。
「Women to Watch」はその一環として、世界各国・地域の委員会と協働し、次世代の才能や意義ある活動を国際社会に紹介するためのプログラムです。前回第7回(2024年開催)では長谷川愛氏が日本代表となり、The Washington PostやThe Guardianなど主要海外紙でも取り上げられました。
協賛・協力・後援と関連情報
本プログラムに関わる主催、協賛、協力団体は以下の通りです。国内外の団体が協力して展開することで、活動基盤が広がっています。
| 区分 | 団体(五十音順) |
|---|---|
| 主催 | NMWA日本委員会 |
| 協賛 | ITO EN( North America ) Inc / SMBC Global Foundation / キッコーマン株式会社 / サントリーホールディングス株式会社 / 第一生命ホールディングス株式会社 / 株式会社大和証券グループ / 株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ / 明治安田生命保険相互会社 |
| 協力 | AND COLLECTION / シュウゴアーツ / 東京画廊+BTAP / ミヅマアートギャラリー / 無人島プロダクション / ユミコチバアソシエイツ |
| 後援 | 一般社団法人 日本経済団体連合会 |
さらに、Time Out誌の「米国美術館トップ10(2025年版)」において、NMWAがMET、MoMA、ナショナル・ギャラリー、ウィットニーと並び選出されたこともプレスリリースで触れられています(参考URLあり)。
プレスリリース素材として使用されている画像ファイルはNMWA日本委員会のプレスキットからダウンロード可能です。関連リンクと問合せ先は以下に示します。
- 問い合わせ
- NMWA日本委員会 事務局
- お問い合わせフォーム: https://www.nmwa-japan.com/inquiry#contact
- E-mail: info@nmwajapan.org
- Web: https://www.nmwa-japan.com/
- 参考リンク
- プレスリリース: https://www.nmwa-japan.com/nmwajp-pr/press-20251115
- Time Out関連記事: https://www.nmwa-japan.com/activity/time-out-us-nmwa-top-10-museums
本件に関する媒体向け素材はNMWA日本委員会が提供しており、ダウンロードにより画像や関連データを取得できます。
要点の整理と情報一覧
ここまでに述べた情報を主要項目ごとに一覧表として整理します。展覧会の主題、開催時期、候補作家、支援金額、国内展の日程や協力機関等、プレスリリースに含まれる全情報を網羅してまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 展覧会名(テーマ) | A Book Arts Revolution(Women to Watch 2027、NMWA開館40周年記念) |
| 国際開催地・時期 | ワシントンD.C.(NMWA本館)、2027年4月より開催予定 |
| 日本委員会推薦候補作家(五十音順) | 入江早耶(広島在)、風間サチコ(東京在)、宮永愛子(京都在)、村上華子(パリ在)、米田知子(ロンドン在) |
| 選考プロセス | 1) 各国委員会が複数名を推薦 2) NMWA本館キュレーターチームが総合判断 3) 各国から1名を選出 |
| 候補作家支援金 | 国際共通ルールに基づき各国の平均収入の約2週間分を目安に設定。日本委員会は支給額を24万2千円と決定(参考:国税庁「令和5年度 民間給与実態統計調査」ほか) |
| 国内関連展 | 2026年3月4日より、表参道ヒルズ内AND COLLECTIONの協力で日本候補作家5名による展覧会を開催予定(詳細は追って発表) |
| 主催・協賛・協力・後援 | 主催:NMWA日本委員会。協賛:ITO EN( North America ) Inc、SMBC Global Foundation、キッコーマン株式会社、サントリーホールディングス株式会社、第一生命ホールディングス株式会社、株式会社大和証券グループ、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ、明治安田生命保険相互会社。協力:AND COLLECTION、シュウゴアーツ、東京画廊+BTAP、ミヅマアートギャラリー、無人島プロダクション、ユミコチバアソシエイツ。後援:一般社団法人 日本経済団体連合会。 |
| 問い合わせ先 | NMWA日本委員会 事務局(フォーム/E-mail/Web記載) |
| 参考記事・資料 | プレスリリースページ、Time Out誌(米国美術館トップ10 2025年版)等 |
上の表は本プレスリリースに含まれる重要事項を整理したものです。NMWA日本委員会の推薦により選ばれた5名は、日本国内外での発表や評価の機会が増える見通しであり、導入された支援金制度は候補作家の創作継続に対する直接的な支援として機能します。
なお、本稿はNMWA日本委員会が発表したプレスリリースの内容を編集者視点で整理・解説したものであり、プレスリリースに含まれるすべての情報を忠実に掲載しています。詳細や最新情報は上記問い合わせ先および公式Webページをご確認ください。
参考リンク: