AstroXが18億円調達、Rockoonで2026年内の宇宙到達を目指す

AstroX18億円調達

開催日:1月1日

AstroX18億円調達
ほんとに2026年に宇宙に到達するの?
会社は2026年内到達を目標に掲げており、今回の18億円調達で研究開発と人材採用を強化する予定。過去の10km実験成功があるが、実証までには追加試験と安全確認が必要で確約ではない。
Rockoonって何がすごいの?
気球でロケットを高度まで運び空中発射する方式で、射場制約が少なく低コスト・高頻度の打ち上げが期待される。AstroXはハイブリッドエンジンや姿勢制御を自社開発して実用化を目指す。

Rockoon方式で挑む、国内小型衛星輸送の課題解決

2025年11月28日20時00分、AstroX株式会社はシリーズAラウンドの第1次クロージングとして合計18億円の資金調達を実施したと発表した。リード投資家は株式会社alphaで、エクイティファイナンスは13.6億円

(株式会社alphaリード)、デットファイナンスが複数の金融機関から4.4億円の組成となる。本調達を受け、同社はRockoon方式に基づく衛星軌道投入ロケットの開発投資と人材採用を強化し、2026年内の宇宙空間到達を目標に掲げている。

Rockoon方式による衛星軌道投入ロケットを開発するAstroXが、シリーズA1st closeとして18億円の資金調達を実施 画像 2

市場背景と国内の課題

世界の宇宙産業市場は成長を続け、2040年には約160兆円を超えるとの予測が示されている。特に人工衛星を用いたサービスの拡大に伴い、小型衛星の打ち上げ需要は急増している。

一方で日本国内では、小型衛星を打ち上げるためのロケットが不足しており、国内の小型衛星のほとんどが海外ロケットでの打ち上げに依存している。この打ち上げ機会の不足が日本の宇宙開発の大きなボトルネックとなっている。

  • 世界市場の将来予測:2040年に約160兆円
  • 国内課題:小型衛星の国内打ち上げ機会不足、海外依存の解消が喫緊の課題
  • AstroXの位置付け:Rockoon方式を用いた低コスト・高頻度・即応型の打上げサービスをめざす
Rockoon方式による衛星軌道投入ロケットを開発するAstroXが、シリーズA1st closeとして18億円の資金調達を実施 画像 3

AstroXのビジョンと組織

AstroXは2022年5月に設立された民間宇宙スタートアップで、ビジョンは「宇宙開発で Japan as No.1 を取り戻す」。本社は福島県南相馬市に置かれ、代表取締役CEOは小田翔武が務める。

同社は気球を用いて空中からロケットを発射するRockoon方式を中核技術と位置付け、ハイブリッドロケットエンジンや姿勢制御システムなどを自社で開発している。Rockoonは射場制約を受けにくく、柔軟で低コストな打ち上げを可能にすることが期待されている。

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今回の資金調達の内訳と活用計画

今回の資金調達は、エクイティとデットを組み合わせた構成となっている。リード投資家は株式会社alphaで、エクイティは13.6億円、デットは複数金融機関からの4.4億円の組成で合計18億円となる。

発表文では、調達資金を主にRockoonシステムおよびロケットの研究開発投資、人材採用に充当する計画が示されている。特に2026年内の宇宙空間到達に向けた開発加速と技術的実証に重点を置く。

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調達の内訳

資金調達の詳細は以下の通りで、エクイティとデットの比率、そして主要な出資者が明示されている。

出資を実施した投資家には、株式会社alphaのほかに複数のVCおよびエンジェル投資家が参加している。また、デットは地元金融機関やメガバンク等との組成となっている。

区分 金額 主な出資者/金融機関
エクイティファイナンス 13.6億円 株式会社alpha(リード)ほかVC・エンジェル複数
デットファイナンス 4.4億円 あぶくま信用金庫、みずほ銀行、三井住友銀行
合計 18億円
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資金の具体的な活用計画

調達資金は次の主要領域へ配分される見込みで、特に短期的な技術実証と人材強化に重点を置く。研究開発と試験設備への投資、設計のブラッシュアップ、量産性を見据えた外注先との連携強化などが想定されている。

採用面ではロケット開発に携わる技術者の増員を予定しており、専門人材の確保とチームの体制強化を行うことで、開発スケジュールの前倒しと安定的な技術実証を目指す。

  • Rockoonシステムの設計・試験費用
  • ハイブリッドエンジンと姿勢制御機器の追加試験、設備投資
  • 人材採用費・研究開発チームの拡充
  • 産官学連携や外部パートナーとの協業強化
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これまでの開発成果と2026年に向けた技術ロードマップ

AstroXは2024年11月に高度10km級のハイブリッドロケットの発射実験に成功しており、これを出発点として複数の技術検証を継続している。今回の資金調達で、さらなる開発加速が可能となる。

発表資料に記載された技術進捗とマイルストーンは、地上燃焼試験や姿勢制御の実機検証、エンジン制御の精度向上など多岐にわたる。これらを積み重ねて2026年内の宇宙空間到達を目指す。

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これまでに達成した主要試験

同社が公表している試験・検証の主な項目は以下のとおりである。2024年11月の高度10km級ハイブリッドロケット発射実験は重要なマイルストーンとなっている。

それ以降も複数の地上試験や装置単体試験を順次実施し、ロックーン方式での実用化に向けたデータ蓄積を進めている。

  1. 2024年11月:高度10km級ハイブリッドロケット発射実験成功
  2. 小型ハイブリッドロケットエンジンの短秒時地上燃焼試験
  3. 姿勢制御装置動作確認および風洞試験
  4. TVC(トラストベクトルコントロール)動作確認試験
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2026年宇宙到達に向けた工程

2026年内の宇宙空間到達に向け、同社は試験頻度の増加、設計の最適化、運用手順の確立を進める計画だ。ロケット本体だけでなく、気球系システムの運用・制御面の確立も重要課題として位置付けられている。

実験のスケジュールは安全性確保を前提に段階的に実施され、地上データに基づく性能評価と改善サイクルを回しながら、本格的な空中発射実験へ移行する予定である。

期間 主要テーマ 目的
短期(〜2025年末) 地上燃焼試験、姿勢制御検証 基礎性能の実証とデータ収集
中期(2026年前半) 空中発射に向けた統合試験 システムの統合と安全性確認
目標(2026年内) 宇宙空間到達の実証 ロックーン方式の実用性証明

投資家の評価、採用情報と会社概要

本ラウンドには複数の国内VCやエンジェル投資家が参加し、地銀系やメガバンクを含む金融機関からデットも組成された。投資家各社はAstroXの技術力とチーム体制を高く評価している。

同社はロケット開発に携わる人材を募集しており、採用情報は公式の採用サイトで案内されている。

出資者からのコメント(原文の要旨)

投資家各社からは技術力、チームの実行力、地域連携の期待など、多角的な評価が寄せられている。以下に出資者コメントを列挙する。

各コメントは出資者の立場からの期待と支援の意志を示すもので、AstroXの挑戦が国内宇宙産業へ与える影響を示唆している。

株式会社alpha General Partner 立岡 恵介様
AstroXの挑戦は、日本の宇宙産業の未来そのものです。前例のないRockoonで宇宙輸送を再発明しようとする情熱、そして圧倒的な技術力と開発スピードを持つチームは、国内外を見渡しても代替不可能な存在です。ALPHAは、AstroXが日本発の新たな宇宙輸送インフラを切り拓き、世界有数の宇宙企業となるよう全力で伴走して参ります。
大和企業投資株式会社 主任 熊谷 尭也様
AstroXは、気球からロケットを空中発射するロックーン方式で衛星の軌道投入を目指すという、世界で未だ誰も成し遂げていない革新的な試みに挑戦しています。この技術が確立されれば、打上げコストの削減と射場の制約を受けない柔軟な運用が可能となり、宇宙輸送の常識を変える力を持っています。 私たちは、この挑戦に対する、小田代表を中心とした経営メンバーの熱い想いや覚悟に共感し、日本の宇宙産業に大きなインパクトを与えると信じています。今回の資金調達は、その実現に向けた重要な一歩です。「宇宙開発で“Japan as No.1”を取り戻す。」というビジョンの達成に向け、全力で応援します。
アニマルスピリッツ合同会社 ジェネラルパートナー 荒木 翔太様
宇宙産業が急速に拡大する中、小型衛星の輸送インフラ不足は日本の競争力を左右する重要な課題です。AstroXはハイブリッドロケットと気球を組み合わせた独自技術で、安全性と経済性を両立した宇宙輸送サービスを提供します。福島を拠点に世界トップクラスの専門家を集めた同社の取り組みは、宇宙産業の裾野拡大と地域経済の活性化にも貢献します。日本の宇宙開発の新たな担い手として、同社の更なる成長を応援してまいります。
株式会社ディープコア Senior Director 内藤 正也様
AstroXが挑戦するロックーン方式による革新的な宇宙輸送システムは、低コスト・高頻度の打ち上げを可能とし、宇宙ビジネスを一変させる可能性を秘めています。技術力・実行力を兼ね備えた経験豊富なチームにより、ハイブリッドエンジンや姿勢制御技術等の開発マイルストーンを迅速に達成できている点を高く評価しております。今後AI活用も交えつつ産官学連携を通じて壮大なビジョンを実現し、世界を牽引する存在として飛躍することを期待しております。
静岡キャピタル株式会社 シニアディレクター 石間 涼様
国内宇宙産業のボトルネックはローンチヴィークルだと思っております。AstroXは「宇宙開発でJapan as No.1を取り戻す」というビジョンの下、日本らしい手法でこのボトルネックの解消に挑戦しており大変共感しております。また弊社が本社を置く静岡県は、輸送用機器メーカーのサプライヤーが多く集積しており、これらの製造業とAstroXが連携することで、地域の産業変革にも資するものと期待しております。微力ではございますが、地銀系VCとしての介在価値を発揮できるよう努めて参ります。
インクルージョン・ジャパン株式会社 代表取締役 服部 結花様
前回ラウンドからご一緒させていただいております。その間に東後さん参画により更に素晴らしい経営チームとなり、打ち上げ成功や姿勢制御装置の大幅な縮小・軽量化などなど、丁寧で確実な技術進捗を重ねていくチームの姿に感服し続ける日々です。世界初のRockoon成功に向けて、引き続きご支援できることが嬉しいです。日本の宇宙産業をともに盛り上げていきましょう!

採用情報、金融機関一覧および会社概要

採用に関する情報は同社の採用ページで公開されている。ロケット開発に興味のある技術者や開発者は、公式サイトの採用ページを確認のうえ応募を検討できる。

本ラウンドに参加した投資家と金融機関の一覧は以下の通りで、出資者・金融機関ともに多面的な支援体制が整えられている。

  • 本ラウンドにおける投資家一覧:株式会社alpha、大和企業投資株式会社、アニマルスピリッツ合同会社、株式会社ディープコア、静岡キャピタル株式会社、インクルージョン・ジャパン株式会社、エンジェル投資家複数名
  • 本資金調達における金融機関一覧:あぶくま信用金庫、みずほ銀行、三井住友銀行
会社名
AstroX株式会社(AstroX, Inc.)
本社所在地
福島県南相馬市小高区本町1-87
代表者
代表取締役CEO 小田翔武
設立
2022年5月20日
事業内容
宇宙輸送事業(Rockoon方式による衛星軌道投入ロケットの研究開発・サービス展開)
企業URL
https://astrox.jp
採用サイト
https://astrox.jp/recruit/
項目 内容
発表日時 2025年11月28日 20時00分
調達金額 合計18億円(エクイティ13.6億円、デット4.4億円)
リード投資家 株式会社alpha(エクイティ)
目的 Rockoonシステム・ロケット開発の加速、人材採用の強化
目標 2026年内の宇宙空間到達
これまでの主な開発成果 2024年11月 高度10km級ハイブリッドロケット発射実験成功、地上燃焼試験、姿勢制御検証、風洞試験、TVC動作確認
本社所在地 福島県南相馬市小高区本町1-87
代表者 代表取締役CEO 小田翔武

本記事は、AstroXが公表したプレスリリースの内容を基に、調達の内訳、技術進捗、投資家コメント、採用情報、会社概要を整理して届ける。Rockoon方式の実用化に向けた同社の取り組みは、国内の打上げインフラ不足に対する一つの具体的な解答となる可能性があり、今後の開発動向と技術実証の進展が注目される。

参考リンク: