セブン商品を自動運転で輸送 長距離実証始動、B5軽油採用

自動運転長距離輸送実証

開催期間:12月1日〜4月30日

自動運転長距離輸送実証
自動運転トラックで本当にセブンの商品を長距離輸送できるの?
今回の実証はT2のレベル2自動運転トラックを使い、関東―関西の一部高速区間で運行する試験です。ドライバー監視下で走行し、運用性・安全性を評価しつつ2027年度のレベル4実用化を目指します。
B5軽油って何で環境にいいの?
B5軽油は軽油に使用済み食用油由来のバイオ燃料を5%混合した燃料で、化石燃料単独よりCO2排出削減が期待されます。本実証では燃費や排出量、給油インフラの運用性を実走行で検証します。

コンビニ物流で一歩先へ──自動運転トラックによる長距離輸送の実証が始動

2025年12月1日13時、株式会社T2は株式会社セブン-イレブン・ジャパン(以下、SEJ)および三井物産流通グループ株式会社(以下、MRG)と共同で、コンビニエンスストア・スーパー業界としては初となる自動運転トラックを用いた長距離輸送の実証を開始したと発表した。本実証は関東—関西間の高速道路の一部区間を用いた運行で、地域で回収した使用済み食用油を原料とするバイオ燃料(B5軽油)を活用する点も特色である。

発表資料では、社会全体のドライバー不足や幹線輸送力の確保といった課題を背景に、2027年度を目標にレベル4自動運転トラックによる幹線輸送サービス開始を目指す取り組みの一環として位置づけられている。今回の実証はその第一段階であり、T2が2025年7月から商用運行で使用しているレベル2自動運転トラックを用いて行われる。

レベル4を見据えた業界初の取り組み セブン-イレブンの商品を自動運転トラックで輸送する実証を開始 画像 2

実証の背景と目的

国内ではドライバー不足が深刻化しており、高速道路を中心とした長距離輸送の安定化が課題となっている。こうした状況を受け、SEJ、MRG、T2の3社は自動運転技術を活用した輸送の現実性を検証することで、物流の持続可能性と安定供給の両立を探る。

また、SEJが進める「サーキュラーエコノミー」の取り組みを拡大し、使用済み食用油由来のバイオ燃料を自動運転トラックの燃料に活用することで、環境配慮と人手不足対策を同時に検証する点も目的として明示されている。

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実証の運行スケジュールと輸送区間

実証の実施期間は2025年12月1日から2026年4月までの計3回とされている。各回の詳細な日程は公表資料に基づき運行され、長距離輸送の再現性と運行管理の精度を評価する。

輸送区間は、MRG埼玉第二センター(埼玉県新座市)からMRG関西センター(兵庫県尼崎市)までを結ぶ高速道路の一部区間で、具体的には東名高速道路・綾瀬スマートIC~名神高速道路・尼崎ICの区間(レベル2自動運転区間)を対象とする。安全確保が必要な状況や料金所、工事区間などではドライバーが一時的に運転操作を行う想定である。

実証期間 2025年12月1日~2026年4月(計3回)
区間 MRG埼玉第二センター(埼玉県新座市)→MRG関西センター(兵庫県尼崎市)
東名高速・綾瀬スマートIC~名神高速・尼崎IC(レベル2自動運転区間)
使用車両 T2が提供するレベル2自動運転トラック(2025年7月より商用運行中の車両)
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積載物と輸送対象

輸送される貨物は、SEJが提供するプライベートブランド「セブンプレミアム」の常温商品で、業務上の取り扱いに影響の少ない品目を選定している。具体的な積載物は以下の通りである。

  • カップみそ汁
  • キッチンペーパー
  • ソフトパックティッシュ

これらの常温商品を対象に、長距離走行時の品質維持や積卸し作業を含むオペレーションの有効性を検証する。

環境配慮の取り組み:使用済み食用油由来のB5軽油を導入

本実証の重要な特徴は、地域で回収した使用済み食用油をもとにしたバイオ燃料を自動運転トラックの燃料として活用する点である。SEJが既に店舗配送車で試験導入している取り組みを拡大し、今回初めて自動運転トラックの燃料として活用する試みとなる(SEJ/T2調べ、2025年12月)。

具体的には、使用済み食用油から製造したバイオ燃料を軽油に混合した「B5軽油」を使用する。B5軽油の導入により、長距離輸送に伴うCO2排出の削減に寄与できるかを検証することが目的とされている。

B5軽油とは
軽油に使用済み食用油由来のバイオ燃料を5%混合した燃料。従来の軽油と比べたCO₂排出量削減の効果が期待される。
燃料供給の仕組み
T2が設置を進める「切替拠点」内に給油スポットを設置しやすい構成にすることで、長距離輸送中の燃料補給を想定している。

切替拠点とは、高速道路での自動運転と一般道での有人運転を切り替えるためにドライバーが乗り降りする拠点であり、T2はこうした拠点を整備することでレベル4に向けた運用基盤を整える計画である(詳細はT2リリース参照)。

環境評価と運行への影響

実証では、B5軽油を用いた場合の燃費やCO₂排出量、給油インフラの運用性を含めて評価する。長距離輸送での燃料使用を通じ、定量的な削減効果を確認する狙いがある。

また、切替拠点への給油スポット設置のしやすさや、輸送ルート上での燃料補給計画が現実的かどうかも併せて検証する。

参加企業の役割と技術検証の焦点

本実証にはSEJ、MRG、T2の3社が参加し、それぞれ明確な役割分担のもとで取り組む。責任分担は以下のとおりである。

  • SEJ:実証テーマの設定および対象商品の提供
  • MRG:物流拠点の提供、積込み・荷卸し、運行スケジュール管理、輸送前後のオペレーションを含む物流の統括
  • T2:自動運転トラックの提供、走行データの収集・分析、技術検証

技術検証の主な項目は以下である。

  1. 自動運転トラックによる長距離走行の実現性
  2. 自動運転導入時の配送所要時間の評価
  3. 自動運転を組み込んだ運行オペレーションの有効性

加えて、安全確保が必要な状況や料金所、工事区間などでのドライバーによる一時的な運転移行の管理方法や、切替拠点の運用設計、給油インフラの整備といった運用面の検証も行われる。

レベル定義と関連情報

報道資料中では自動運転レベルの定義が併記されている。今回用いる自動運転はレベル2の運用であるが、将来的な目標としてレベル4での運行開始を掲げている。

レベル2(本実証での運用)
ドライバーの監視のもとに行われる特定条件下での高機能自動運転。T2は2025年7月より商用運行で使用しているレベル2自動運転トラックを本実証に提供する(T2リリース)。
レベル4(目標)
特定の走行環境条件を満たす限定された領域において、自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態。3社は2027年度にレベル4自動運転トラックによる幹線輸送サービスの開始を目指している。

参加企業のプロフィールと関連リンク

発表に名を連ねた3社のうち、T2の会社概要がリリースで明示されている。以下にT2の情報を記載する。

会社名 株式会社T2
本社所在地 東京都千代田区内幸町二丁目2番3号 日比谷国際ビル 1階
代表者 代表取締役CEO 熊部 雅友
設立日 2022年8月30日
事業内容 自動運転システムの開発、レベル4自動運転トラックによる幹線輸送サービス事業、幹線輸送に付随した関連サービス事業、その他関連サービス事業
企業サイト/公式X https://t2.auto/https://x.com/t2_auto

なお、SEJとMRGについても本実証における役割が明確に定義されている。発表資料では関係者の氏名・役職も公開されており、写真説明として「向かって左からセブン-イレブン・ジャパン 執行役員 QC・物流管理本部長 山口 繁、三井物産流通グループ 代表取締役社長 柴田 幸介、T2 代表取締役 CEO 熊部 雅友」と記載されている。

本記事の要点整理

以下の表は、本記事で取り上げた実証の主要項目を整理したものだ。実証の内容、期間、区間、参加企業、燃料などを一目で把握できるようにまとめている。

項目 内容
発表日 2025年12月1日 13時00分(株式会社T2 発表)
参加企業 株式会社セブン-イレブン・ジャパン(SEJ)、三井物産流通グループ株式会社(MRG)、株式会社T2
実証期間 2025年12月1日~2026年4月(計3回)
輸送区間 MRG埼玉第二センター(埼玉県新座市)→MRG関西センター(兵庫県尼崎市)
東名高速・綾瀬スマートIC~名神高速・尼崎IC(レベル2区間)
使用車両 T2提供のレベル2自動運転トラック(2025年7月より商用運行)
積載物 セブンプレミアムの常温商品(傘、カップみそ汁、キッチンペーパー、ソフトパックティッシュ等)
検証項目 長距離走行の実現性、配送所要時間、運行オペレーションの有効性、B5軽油導入による環境効果、切替拠点と給油インフラの運用性
燃料 使用済み食用油由来バイオ燃料を混合したB5軽油(SEJのサーキュラーエコノミー取り組みの拡大)
将来的目標 2027年度のレベル4自動運転トラックによる幹線輸送サービス開始(目標)
関連リンク・参照

以上が、SEJ、MRG、T2による自動運転トラックを活用した長距離輸送実証の全容である。本実証では、技術的な実現性と運用性、環境負荷低減の観点からの効果測定が行われる予定であり、今回の結果は将来的な幹線輸送の在り方を検討する上での重要なデータとなる。

参考リンク: