万博でテレビCMが宣伝費を回収、秤が解析を公開
ベストカレンダー編集部
2025年12月2日 16:24
万博テレビ効果検証
開催日:12月2日
テレビの露出がもたらした金銭的インパクト:大阪・関西万博のケーススタディ
2025年12月2日、(株)秤は大阪・関西万博(EXPO2025)に関するテレビ露出の投資対効果を、マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)で検証した分析結果を公開した。プレスリリースは同日13時00分付で配信され、分析の要点や演習用データ、解説動画の公開先が明示されている。
公開された分析では、令和6~7年度に計上された宣伝広報費(「機運醸成費」)103億円に対して、テレビ(CMと番組露出を合算)だけで319.5億円の売上増効果が推定された。協会収入を単純に半分で換算した場合でも約160億円となり、103億円の支出は回収可能であると結論づけられている。
数値の要点と比較
同社は2つの手法でテレビ効果を試算している。時系列データを用いたMMM(META社のRobynを使用)では319.5億円、秤が特許登録(2024年11月)した消費者調査を組み合わせたMMM(消費者調査MMM(R))では279.6億円の効果を算出した。後者は万博に加えテーマパーク7施設を含めた分析に基づく値であり、協会の収入を半分と見積もると約140億円相当となる。
これらの推計から、テレビ(CM+番組露出)だけで103億円の宣伝広報費を回収できるという判断が導かれている。以下の表では主要な数値を整理する。
| 項目 | 推計金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 宣伝広報費(機運醸成費) | 103億円 | 令和6~7年度の計上額(2025年2月4日発表) |
| 時系列データMMM(Robyn)によるテレビ効果 | 319.5億円 | META社のオープンソースMMMツールを使用 |
| 消費者調査MMM(秤の特許技術)によるテレビ効果 | 279.6億円 | 万博+テーマパーク7施設の計8施設を対象 |
| 協会収入への換算(目安) | 約140億~約160億円 | 売上を協会収入に概算換算(半分を想定)した場合 |
分析手法の詳細:TVメタデータとMMMの実装ポイント
分析には、(株)エム・データが生成する「TVメタデータ」を活用した時系列データ解析を用いた。エム・データのTVメタデータは、番組およびCMの放送実績をテキスト化したデータベースであり、日別の放送実績を関東・関西地区で取得して解析に利用している。
時系列データMMMでは、CMと番組露出を分離して東日本(関東)および西日本(関西)それぞれの効果を推計した。CMは初期と後期の2種類に分け、テレビの変数6種それぞれの効果を推定している。使用ツールにはMETA社のRobyn(オープンソースのMMMツール、公開分析でRobyn 3.12.1を使用)を採用している。
テレビ変数と地域差
分析では以下のような点が明示されている。初期CM(HIKAKIN氏・SEIKIN氏起用)は指名検索を押し上げることによる間接的な来場促進効果が顕著であり、東日本での効果が西日本より大きいという結果が出た。一方、後期CM(「一生に一度を何度も」リピート訴求)は西日本での直接的な来場増加効果が東日本の約3倍に迫る規模で確認された。
番組露出についても東日本・西日本双方で効果が認められたが、西日本のほうがやや高い効果を示した。こうした地域差を日別の放送実績データで分離して推計できた点が、本分析の重要な特徴である。
- 使用データ
- エム・データ提供のTVメタデータ(日別、関東・関西の放送実績)
- 分析ツール
- META社Robyn(オープンソースのRobyn 3.12.1による再現手順を含む)
- 分解項目
- CM(初期/後期)・番組露出の分離、地域別効果、テレビの変数6種
消費者調査MMMと演習用コンテンツの公開内容
秤は独自の消費者調査を活用したMMM(特許技術:消費者調査MMM(R))でも分析を行い、万博およびテーマパーク7施設を含む計8施設を対象としたダッシュボードと解析を提供している。消費者調査MMMは来場動機や検索行動など消費者行動データを取り込み、テレビ露出の間接効果を捉えることを意図した手法である。
社側は、これらの分析手法を一般にも理解してもらうために、分析手順を再現できる演習動画と分析用データの一部・配布方法を無料で公開した。公開日は2025年12月2日で、noteとYOUTUBEでコンテンツが公開済みあるいは配布開始されている。
公開コンテンツの種類と入手方法
公開物は以下の通りである。noteには演習で用いたデータの一部を貼付し、完全なデータセットは(株)秤の申し込みフォームで配布する方針が示されている。YOUTUBEでは、Robynによる分析手順(Rインストールから完全再現まで)や、消費者調査MMMのダッシュボード解説が公開されている。
- note:『大阪・関西万博のテレビの効果(319.5億円)を計算したデータを配布します。』(2025年12月2日午前中に公開)
https://note.com/ogataka/n/n480d7da24a51 - YOUTUBE(Robyn解説):『【MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)を習得したい方向け】大阪・関西万博のテレビの効果(319.5億円)を推計したRobyn3.12.1の使い方を徹底解説』
https://youtu.be/ygkCYiNdl4o - YOUTUBE(消費者調査MMM):『大阪・関西万博と7つのテーマパークのTVCMなどの効果を丸裸にする消費者調査MMMを徹底解説』
https://youtu.be/iEntiZWdzsI
全データの配布は、秤の申し込みフォームを通じて行われることになっている。演習は、時系列データを整形したものを題材にRobynを用いて完全再現可能な手順を示す構成になっており、Rのインストールから解析コード、可視化に至るまでを解説している。
関係企業の役割と問い合わせ先、発表に関する補足
今回の分析で中心的に利用されたTVメタデータは株式会社エム・データが生成するデータベースに依拠している。エム・データは、番組やTV-CMの放送内容を詳細にテキスト化した「TVメタデータ」を提供し、調査・分析・配信を行うデータプロバイダである。民放キー局等と資本提携を行っており、データ配信サービス、放送実績調査サービス、ランキングサービス、TV Rankなどの解析ツールを提供している。
秤は因果推論や確率モデルなどの統計的手法をマーケティングの現場で適切に用いるための教育・支援を行う組織であり、書籍や有料講義で培ったレクチャー技術を活かして、MMMのインハウス化支援や教材提供を行っている。秤は分析結果を公開するにあたり、来場者数(日別で184日)を93%の精度で予測する式を構築した点を強調している。
- 株式会社エム・データ
- https://mdata.tv/metadata
提供サービス例:データ配信サービス、放送実績調査サービス、ランキングサービス、TV Rankなど - 株式会社秤(Hakari)
- https://www.hakari-corp.com
MMM等のインハウス化支援、消費者調査MMM(R)の提供 - 本件問い合わせ
- 株式会社秤 問い合わせフォーム:
https://www.hakari-corp.com/ask/
秤の代表取締役社長である小川貴史は、テレビが依然として日本最大のリーチメディアであり、低関与商材での有用性は従来から示されていると述べるとともに、高関与商材に対しては検索行動を介した間接効果を組み入れることでMMMの予測精度が改善されることを実務経験として示している。今回の万博は来場者数が公開されているため、公開分析としてテレビの影響をデータから導出できた点が公表の背景にあると説明している。
記事で触れた主要点の整理
以下の表に本記事で扱った主要項目を整理する。数値、公開日、公開先、使用データ・ツール、問い合わせ先などを一望できるようにまとめた。
| 分類 | 内容 |
|---|---|
| 発表者 | 株式会社秤(代表取締役社長:小川貴史) |
| 発表日時 | 2025年12月2日 13時00分(プレスリリース) |
| 主題 | 大阪・関西万博におけるテレビ(CM+番組露出)のMMMによる効果検証と演習データの配布 |
| 主要推計結果 | 時系列データMMM(Robyn):319.5億円、消費者調査MMM:279.6億円 |
| 宣伝広報費(参考) | 103億円(令和6~7年度の機運醸成費) |
| 公開日・配布 | 2025年12月2日よりnote・YOUTUBEで演習動画と一部データを公開、完全データは秤の申し込みフォームで配布 |
| リンク(note) | https://note.com/ogataka/n/n480d7da24a51 |
| リンク(Robyn解説 YOUTUBE) | https://youtu.be/ygkCYiNdl4o |
| リンク(消費者調査MMM YOUTUBE) | https://youtu.be/iEntiZWdzsI |
| 使用データ | 株式会社エム・データ提供のTVメタデータ(日別・関東/関西の放送実績) |
| 解析ツール | META社Robyn(オープンソース、Robyn 3.12.1を使用) |
| 問い合わせ先 | 株式会社秤 問い合わせフォーム:https://www.hakari-corp.com/ask/ |
以上が今回のプレスリリースと公開資料の要点である。本記事は公開された資料の内容を整理して伝えるものであり、提供されたデータと公開動画を参照することで、Robynによる再現や消費者調査を伴うMMMの手順を確認できる。分析に用いられたTVメタデータやツール、公開先のURLは本文中に記載した通りである。
参考リンク: