会計士のAI格差が明らかに 白書が示す生産性と必要スキル
ベストカレンダー編集部
2025年12月2日 18:16
会計士のAI格差報告書公開
開催日:12月2日
会計士の現場で進行する「AI格差」の実態
株式会社PCPが2025年12月2日14時13分に公開した「2025年度版 会計士白書」は、会計士1,091名を対象に実施した大規模調査の結果をまとめた報告書です。本調査からは、生成AIの業務利用が広がる一方で、AIを日常的に使いこなす層と活用が進んでいない層との間に明確な差、いわゆる「AI格差」が既に生じていることが示されました。
調査では、回答者の約8割が週1回以上AIを業務で活用しており、35.3%が「ほぼ毎日」利用していると回答しています。特に事業会社(上場)に勤務する会計士では、40.4%が「ほぼ毎日」AIを利用している点が際立ちます。こうした頻繁な利用が、業務の生産性やスキル習得意欲に直結している実態が浮かび上がりました。
AI活用の広がりが生む差異
白書は生成AIの導入が単なるツール利用に留まらず、業務のやり方そのものを変化させていることを示しています。週5日以上AIを利用する層では、50.9%が生産性が「非常に向上した」と回答しており、継続利用が成果実感の分岐点になっていることが確認されました。
一方で、AIを「全く利用していない」層は全体の6.2%存在し、そのうち22.1%がAI関連の追加スキルを「特に必要ない」と回答しています。これにより、AIを活用して自己研鑽を続ける層と、変化に対して受け身の層との二極化が進行していると結論づけられます。
- 週1回以上AIを利用する会計士:約8割
- 「ほぼ毎日」利用する会計士:35.3%
- 上場事業会社勤務で「ほぼ毎日」利用:40.4%
- 週5日以上AI利用層で「非常に向上した」と実感:50.9%
- AIを全く利用しない層:6.2%、そのうち22.1%が追加スキルは不要と回答
生産性の差と必要スキル――データが示す具体像
白書は、AI利用頻度と生産性実感の関係を多角的に分析しています。結果は明確で、利用頻度が高いほど業務効率化の実感が強く、継続利用者ほどAIを学び実務に組み込む傾向が強いことが確認されました。以下の表と詳細記述は、数値に基づく実態把握を助けます。
会計士がこれから市場価値を高めるには、単にAIを使うだけでなく、AIが作成したアウトプットを検証・判断する能力や、クライアントと信頼関係を築くための人間性(誠実さや説明力)も重要であることが示唆されています。
| 項目 | 数値 | 説明 |
|---|---|---|
| サンプル数 | 1,091名 | 公認会計士試験合格者を対象(登録の有無は問わず) |
| 週1回以上AI利用 | 約8割 | 生成AIの業務利用が日常化している |
| ほぼ毎日利用 | 35.3% | 日常業務でAIが定着している層の割合 |
| 上場事業会社でほぼ毎日 | 40.4% | 事業会社勤務者のAI活用率が高い |
| 週5日以上で生産性が非常に向上 | 50.9% | 継続利用と成果実感の関連性が高い |
| AI全く利用していない | 6.2% | 一部に非利用者が存在。学習意欲が低い傾向あり |
| 非利用者のうちAIスキル不要回答 | 22.1% | 変化への受け止め方に二極化の傾向 |
代表コメントから読み解く必要な対応
株式会社PCP 代表取締役の桑本慎一郎氏は、調査結果を受けて次のように述べています。生成AIが定型業務の多くを代替するなかで、これからの会計士にはAIリテラシーとAIの出力を検証する能力が不可欠である、という指摘です。クライアントが依頼先を選ぶ基準は「何を頼むか」から「誰に頼むか」へとシフトし、人間的な信頼がより重視されるという見立てです。
桑本氏のコメントは、単にスキルセットの変化を示すだけでなく、会計士が市場で選ばれるための職務遂行のあり方そのものが変化していることを示しています。AIが提示する分析や提案を批判的に評価し、クライアントにとって価値ある判断を下す能力が差別化要因となることが強調されています。
白書の構成と入手方法:どのような章立てか
「2025年度版 会計士白書」では、AI利用実態のほか「会計士のキャリア転向」「女性会計士の活躍」など、多面的な章立てで会計士の現在と将来をデータで分析しています。具体的な章構成、分析手法、人数や推計方法などの詳細は白書本体で確認できます。
白書は無料でダウンロード可能で、調査に基づく数値や図表、分析コメントが含まれています。研究や人材戦略、個人のキャリア設計に活用できる資料として提示されています。ダウンロードは以下のリンクから行えます。
白書が提示する利用方法のヒント
白書内では、AI活用の頻度別に見たスキル習得意欲や生産性の違い、企業タイプ別の利用傾向などを提示しています。これらのデータを活用することで、個人や組織は教育投資の優先順位や実務プロセスの改善点を客観的に把握できると考えられます。
また、女性会計士に関する章やキャリア転向に関する章は、ダイバーシティや人的資源の流動性といった観点からの示唆が含まれており、採用・育成・配置戦略に役立つ内容となっています。
調査概要と会社情報:調査設計の詳細と運営主体
本調査の名称は「会計士の過去・現在・未来に関する実態および意識調査」です。インターネット調査手法により、2025年8月5日から8月27日の期間に実施され、合計1,091名の回答を得ています。サンプルの性別構成は男性79.2%、女性20.5%、その他0.3%です。
調査対象は日本の公認会計士試験(旧二次試験)合格者で、日本公認会計士協会への正会員・準会員登録の有無は問いません。調査主は株式会社PCPです。以下に調査および会社の主要事項を表で整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査名 | 会計士の過去・現在・未来に関する実態および意識調査 |
| 調査対象 | 公認会計士試験合格者(登録の有無は問わず) |
| サンプル数 | 1,091名(男性79.2%、女性20.5%、その他0.3%) |
| 調査期間 | 2025年8月5日~8月27日 |
| 調査手法 | インターネット調査 |
| 調査主 | 株式会社PCP |
| 会社名 | 株式会社PCP |
| 代表者 | 代表取締役 桑本 慎一郎 |
| 所在地 | 東京都文京区湯島3-23-8 第六川田ビル6階 |
| 事業内容 | 公認会計士・経理財務人材に特化した転職支援事業 |
本記事は、株式会社PCPが公表した「2025年度版 会計士白書」の調査結果を基に、AI時代の会計士に関わる実態と示唆を整理したものです。表は本文で取り上げた主要データと調査・会社情報を一覧化したもので、調査設計や主要数値を手早く確認するための参照として利用できます。
報告書全文や詳細な図表は、白書のダウンロードページで確認できます。調査結果は業界の動向把握や人材戦略の検討、個人のキャリア設計に有益なデータを提供しています。
参考リンク: