Helical Fusionが約8.7億円調達 個人投資家も参画

資金調達と個人投資参加

開催日:12月5日

資金調達と個人投資参加
個人でも今回の投資に参加できるの?
はい。イークラウドNEXT第1号という会員限定の個別銘柄ファンドを通じ、個人投資家の出資が今回初めて実現しました。ただし会員資格や募集条件が必要です。
本当に2030年代に実用発電は可能なの?
同社は2030年代中にHelix HARUKAで統合実証、Helix KANATAで発電を目指すとしていますが、技術的・規制的課題が残るため現時点では目標年です。

約8億7,000万円の調達完了と個人投資家向けスキームの導入

株式会社Helical Fusion(本社:東京都中央区、代表:田口昂哉)は、シリーズAエクステンションラウンドにおいて総額約8億7,000万円の資金調達を完了したと発表しました。今回のラウンドには、イークラウドNEXT1号合同会社、ゴムノイナキ株式会社、ならびに元ゴールドマン・サックス投資部門日本共同統括の田中渓氏を含む個人投資家が参画しています。

この調達によりシリーズA全体で約32億円、補助金や融資を含めたこれまでの累計調達額は約60億円に達しました。特に注目されるのは、個人投資家会員限定の個別銘柄ファンド「イークラウドNEXT」第1号を通じ、核融合分野で日本初となる個人投資家による出資スキームを実現した点です。

  • ラウンド総額:約8億7,000万円
  • シリーズA累計:約32億円(今回を含む)
  • 累計調達額(補助金・融資含む):約60億円
  • 主な出資者:イークラウドNEXT1号合同会社、ゴムノイナキ株式会社、田中渓(個人)ほか

Helical Fusionは、今回の資金をヘリックス計画(Helix Program)の開発資金ならびにチーム強化に充てるとしており、2030年代の実用発電実現に向けた取り組みを加速する意向です。

核融合による次世代クリーンエネルギーを開発するHelical Fusion、シリーズA エクステンションラウンドで約8.7億円の資金調達を完了 画像 2

ヘリックス計画(Helix Program)の構成と実装スケジュール

Helix Programは、日本独自のヘリカル型核融合炉を基盤とし、フュージョンエネルギーの実用化を目指す中長期計画です。Helical Fusionは国立研究機関の長年の研究成果を踏まえ、ヘリカル方式により商用発電所に最も適した特性を持つと判断される技術を実装することを目標としています。

計画の要点として、2020年代中に二大要素技術である「高温超伝導マグネット」と「ブランケット兼ダイバータ」の個別実証を完了し、2030年代中に統合実証装置および発電初号機である以下を達成するスケジュールが示されています。

  1. 最終実証装置:Helix HARUKA による統合実証(2030年代中)
  2. 発電初号機:Helix KANATA による世界初の実用発電(2030年代中)

同社側は、ヘリカル型核融合炉が持つ利点として、定常運転(24時間365日運転可能な安定性)、正味発電(プラント外へ電力供給可能)、および保守性(メンテナンスが可能)の三要件を満たす見通しがあると説明しています。これら三要件を満たす可能性を持つ方式としてヘリカル型が位置づけられている点は、同社が掲げる「実用発電」達成の根拠となっています。

脚注として、同社は「日本初の個人投資家出資事例」は2025年11月時点の公開情報を基にした自社調べであること、またヘリカル方式が商用核融合炉の三要件を満たしうるとする理由を提示しています。

核融合による次世代クリーンエネルギーを開発するHelical Fusion、シリーズA エクステンションラウンドで約8.7億円の資金調達を完了 画像 3

出資者のコメントとHelical Fusionの組織体制

今回参画した投資家からは、核融合技術の社会的意義や個人投資家参加の意義を強調するコメントが寄せられています。イークラウド株式会社代表取締役の波多江直彦氏は、個人が未来の産業づくりに参加できる社会の実現を目指す観点から、今回の仕組みを評価すると述べています。

ゴムノイナキ株式会社代表取締役副社長の木村公泰氏は、フュージョンエネルギーをクリーンで安定的な電力供給の一手段として期待するとし、今後の技術協力や事業シナジーの可能性を探る姿勢を示しました。個人投資家の田中渓氏は、Helical Fusionの実装志向のアプローチと日本の研究蓄積に基づく点に共感し、個人投資家として参画を決めた旨を述べています。

イークラウド株式会社(波多江 直彦)
個人がスタートアップへ参加できる仕組みを提供するイークラウドNEXTを通じ、核融合分野での個人参加を実現した点を評価。
ゴムノイナキ株式会社(木村 公泰)
将来のクリーンエネルギーとしての期待と、技術協力・事業連携の可能性を検討。
田中 渓(個人投資家)
日本発の実装志向とエネルギー安全保障、産業競争力の観点から参画を決定。

Helical Fusionの組織体制については、炉設計の専門性を有する人材を中核に据えており、核融合科学研究所の知見を継承したメンバーが多く在籍しています。代表取締役CEOは田口昂哉、CTOの宮澤、副CTOの後藤、科学顧問として相良氏らが名前を連ね、国立研究所出身の安全設計専門家や金融・事業開発経験者もチームに含まれます。

同社は2025年に経済産業省が運営するスタートアップ支援プログラム「J-Startup」に選出されており、文部科学省からは核融合用の先端技術(超伝導)に対して20億円の補助を受けている点も示されています。

核融合による次世代クリーンエネルギーを開発するHelical Fusion、シリーズA エクステンションラウンドで約8.7億円の資金調達を完了 画像 4

政策的背景、事業意義、企業情報の整理

フュージョンエネルギーの開発は、世界的な電力需要の増加と気候変動対策の両面で重要視されています。国際エネルギー機関(IEA)の2023年版世界エネルギー見通しでは、世界人口が2050年までに約17億人増加すると示され、生成AI普及などを背景に電力需要の急増が見込まれています。

核融合はCO2を排出しない高効率な発電方式であり、海水などから採取可能な燃料を用いるため、長期的なエネルギー供給の安定化に資すると期待されています。市場規模については、FusionX/Helixosのレポートが2050年までに核融合プラント建設および電力市場が年間5,500億ドル規模に成長するとの試算を示しています。

日本国内では、2025年10月に新政権が発足し「次世代革新炉や核融合エネルギーの早期社会実装」が成長戦略に明示されました。内閣府はフュージョンエネルギー・イノベーション戦略の改定を行い、2030年代の発電実証を目指すロードマップを提示。政府は1,000億円超の予算計上や経済産業省内に「フュージョンエネルギー室」を設置するなど具体的な支援を進めています。

Helical Fusionは、こうした学術・官民の動きを受けつつ、ヘリックス計画を通じて商用核融合炉の実現、特にベースロード電源としての「実用発電」の達成を目指します。商用化に必要な三要件は以下の通りです。

  • 定常運転:24時間365日運転可能な安定性
  • 正味発電:プラントの外に電力を供給できること
  • 保守性:メンテナンスが可能であること

Helical Fusionは、これら三要件を満たす可能性がある方式としてヘリカル型炉を掲げ、2030年代中のHelix HARUKAおよびHelix KANATAによる統合実証・実用発電を計画しています。

核融合による次世代クリーンエネルギーを開発するHelical Fusion、シリーズA エクステンションラウンドで約8.7億円の資金調達を完了 画像 5

企業概要と連絡先

以下はHelical Fusionの主要情報です。同社は国立研究所のスピンアウトベンチャーとして設立され、日本の研究成果を活用しながら商用核融合プラント実現を目指しています。

項目 内容
事業内容 商用核融合炉および関連技術の開発
設立 2021年10月
代表 田口昂哉(代表取締役CEO)
Webサイト https://www.helicalfusion.com
YouTube https://www.youtube.com/@HelicalFusion
問い合わせ contact@helicalfusion.com(広報担当)

同社は、炉設計に関する高度な専門性と要素技術開発力を保持しており、超伝導分野で文部科学省から20億円の補助を受けるなど技術面での支援も受けています。

核融合による次世代クリーンエネルギーを開発するHelical Fusion、シリーズA エクステンションラウンドで約8.7億円の資金調達を完了 画像 6

本件の要点整理

以下の表は、本プレスリリースで示された主要項目を整理したものです。数値、主要関係者、計画のスケジュール、問い合わせ先を網羅しています。

項目 内容
調達ラウンド シリーズAエクステンションラウンド
今回調達額 約8億7,000万円
シリーズA合計 約32億円
累計調達額(補助金・融資含む) 約60億円
主な投資家 イークラウドNEXT1号合同会社、ゴムノイナキ株式会社、田中渓(個人)ほか
重要な技術・計画 高温超伝導マグネット、ブランケット兼ダイバータ、Helix HARUKA(統合実証)、Helix KANATA(発電初号機)
実用化目標 2030年代中に統合実証および世界初の実用発電
企業設立 2021年10月
代表 田口昂哉(代表取締役CEO)
所在地 東京都中央区
問い合わせ contact@helicalfusion.com

以上の内容を踏まえると、Helical Fusionは今回の資金調達と新しい個人投資家向けの出資スキームにより、ヘリックス計画の進展とチーム強化を図り、2030年代中の統合実証と実用発電に向けた開発を着実に進める姿勢を示しています。政府の支援や産業界の関心が高まる中、同社は日本の研究蓄積を背景にフュージョンエネルギー産業の実装を目指しています。