稟議で約8割が差し戻し 通過の決め手と実務対策

稟議突破実態調査

開催日:12月5日

稟議突破実態調査
稟議って何回くらい出せば通るもの?
Engineerforceの調査では、大手企業の新規事業担当の約8割が複数回の提出を経験。1回で通るのは20%で、2回目46.6%、3回目以上28.6%と差し戻しが常態化しています。再提案では収益性や顧客検証の強化が多いです。
どうやって経営層を本気にさせるの?
有効だったのは「明確な市場規模とシェア見込み」(51%)、次に「顧客の声の証明」や「撤退基準・リスク管理の明示」。市場データや顧客インタビューなど数値と実証を示す資料が決め手になります。

稟議で何度も差し戻される現状──約8割が複数回の提案を経験

Engineerforceが実施した調査では、大手企業(従業員数500名以上)で過去3年以内に新規事業の稟議提案を経験した新規事業担当者・企画担当者105名を対象に、稟議突破と予算獲得の実態が明らかになりました。結果として、約8割が2回以上の提案を経て稟議が通過

稟議提案の回数については具体的に、1回目で通過したのは20.0%、2回目で通過したのが46.6%、3回目以上で通過したのが28.6%、通過しなかった(却下または保留のまま)は3.8%、わからない/答えられないは1.0%という内訳です。このデータは、稟議を一度で通すことが依然として難しい状況を示しています。

大手企業の新規事業、約8割が、稟議で却下または差し戻しを経験 61.4%が、収益性・ROIの不透明さを理由に却下 画像 2

提案回数の分布と示唆

複数回の提案を前提にした準備や、却下や差し戻しを受けての再検討プロセスが事実上の常態化していると言えます。再提案においては、収益モデルの再検討や顧客検証の追加といった対応が一般的です。

この節で示された数値は、社内の合意形成や意思決定プロセスの構造に関する課題をあらためて浮き彫りにしています。稟議そのものを早期に通すだけでなく、却下理由を事前に潰すための資料や根回しが重要です。

  • 1回目で通過:20.0%
  • 2回目で通過:46.6%
  • 3回目以上で通過:28.6%
  • 通過しなかった(却下または保留のまま):3.8%
  • わからない/答えられない:1.0%
大手企業の新規事業、約8割が、稟議で却下または差し戻しを経験 61.4%が、収益性・ROIの不透明さを理由に却下 画像 3

却下理由と経営層を動かす“決定打”

稟議が却下・差し戻される主な理由として、もっとも多かったのは「収益性・ROIが不透明だったから」で61.4%でした。次いで「競合優位性が不明確だったから」が41.0%、「リスクが高すぎると判断されたから」が39.8%と続きます。これらは経営層が意思決定を行う際に重視する観点と合致しています。

経営層を説得するために「決定打」となった要素では、「明確な市場規模とシェア獲得の見込み」が51.0%で第1位、続いて「具体的な顧客の声・ニーズの証明」が44.0%、3位は「撤退基準の明示・リスク管理の明確化」43.0%でした。これらは、数値や実証データに基づいた説明が鍵であることを示しています。

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却下理由の内訳(複数回答、n=83)

稟議が却下または差し戻された人々に対しての回答結果は以下の通りです。複数回答が可能で、収益性や競合優位性など、経営判断に直結するポイントが上位を占めています。

理由 割合
収益性・ROIが不透明だったから 61.4%
競合優位性が不明確だったから 41.0%
リスクが高すぎると判断されたから 39.8%
市場規模の根拠が不十分だったから 36.1%
実行体制・リソースが不足していたから 31.3%
既存事業とのシナジーが見えなかったから 25.3%
顧客ニーズの検証が不十分だったから 20.5%
経営戦略との整合性が取れていなかったから 10.8%
撤退基準が明確でなかったから 10.8%
その他 0.0%
わからない/答えられない 1.2%
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経営層説得の「決定打」と有効資料

経営層を説得するために効果があった資料・データとしては「市場調査データ・業界レポート」が57.1%、「顧客インタビュー結果・顧客の声」が54.3%、「競合分析資料・ベンチマーク」が49.5%と続き、プロトタイプや事業計画の収支シミュレーションも重要とされました。

経営層を動かすには、単に事業の夢や方針を示すだけでなく、数値と現場の声、リスク管理と撤退基準を明確に提示することがポイントです。

  • 市場調査データ・業界レポート:57.1%
  • 顧客インタビュー結果・顧客の声:54.3%
  • 競合分析資料・ベンチマーク:49.5%
  • プロトタイプ・MVP:46.7%
  • 事業計画書・収支シミュレーション:41.0%
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稟議準備と社内調整の実務──根回しと再提案の手順

稟議提出前の根回しや社内調整も重要な工程であり、調査では半数以上が事前に「事業部長・本部長」へ相談していることがわかりました。また、経営企画部門や直属の上司、財務・経理部門、IT・法務など関係部門への働きかけが多く見られます。

社内調整で苦労したポイントとしては「経営層の理解を得ること」が55.2%、「リソース(人員・予算)の確保」が53.3%、「関係部門を巻き込むこと」が47.6%となっており、合意形成とリソース配分がボトルネックになっています。

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稟議提出前の根回し先(複数回答、n=105)

稟議提出前に相談を行った相手についての結果は以下の通りです。社内の要所へ事前説明を行うことで、通過率向上を図るケースが多く見られます。

  1. 事業部長・本部長:53.3%
  2. 経営企画部門:47.6%
  3. 直属の上司:46.7%
  4. 財務・経理部門:34.3%
  5. IT・システム部門:34.3%
  6. 法務・コンプライアンス部門:30.5%
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却下後の再提案で行われた改善(複数回答、n=79)

再提案の際に実施された見直しで最も多かったのは「収益モデル・ROI試算の見直し」62.0%で、次に「顧客ニーズの追加検証・インタビュー実施」60.8%、「リスク対策・撤退基準の追加」53.2%という順でした。再提案では数値と顧客根拠を強化する対応が中心となります。

再提案に取り組む現場は、稟議で指摘された点を明確に反映した改善を行い、経営判断がしやすくなる資料と検証結果を提示していることが読み取れます。

  • 収益モデル・ROI試算の見直し:62.0%
  • 顧客ニーズの追加検証・インタビュー実施:60.8%
  • リスク対策・撤退基準の追加:53.2%
  • 市場規模の再調査・データの追加:44.3%
  • 実行体制・チーム構成の強化:39.2%
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外部パートナーへの期待とEngineerforceの役割

新規事業の稟議準備において、回答者の半数以上が外部パートナーに対して「事業計画書の作成支援」を期待している点が注目されます。具体的には、事業計画書作成支援が53.3%、顧客インタビュー・ニーズ検証の設計と実施が48.6%、市場調査・データ分析が47.6%という結果でした。

自由回答では「組織風土を加味した対応案の提示」「費用対効果分析」「経営陣から出された課題に対する回答アプローチの提案」など、定型的な調査や資料作成にとどまらない実務支援への期待が寄せられています。

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外部パートナーに期待するサポート(複数回答、n=105)

以下は、外部支援に対する具体的なニーズです。新規事業の初期段階から実務的な支援を必要とする声が多く、単なる専門知識の提供以上の伴走支援が求められています。

期待する支援 割合
事業計画書の作成支援 53.3%
顧客インタビュー・ニーズ検証の設計と実施 48.6%
市場調査・データ分析 47.6%
プロトタイプ・MVP開発 43.8%
稟議資料の作成アドバイス 41.0%
技術的実現可能性の評価・検証 38.1%

EngineerforceはUI/UXデザイン、開発DX、営業DXの3つの柱で企業の成長を支援するとしており、稟議用のビジュアル資料やモックアップ作成、事業計画のブラッシュアップなど、稟議突破に直結する支援を打ち出しています。詳しくはEngineerforceのウェブサイト(https://engineerforce.io/)および本調査のダウンロードページ(https://engineerforce.io/resources/get_approval/)を参照してください。

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調査概要と会社情報

本調査の正式名称は「新規事業の稟議突破と予算獲得の実態調査」です。調査はIDEATECH提供のリサーチマーケティング「リサピー®︎」によるインターネット調査で、調査期間は2025年10月27日〜10月29日、対象は従業員数500名以上の大手企業で過去3年以内に新規事業の稟議提案を経験した新規事業担当者・企画担当者105名(有効回答)です。

利用条件として、情報の出典元に「Engineerforce」の明記と、ウェブで使用する場合は出典元リンク(https://engineerforce.io/)の設置が求められています。本記事でも出典を明記しています。

調査名称
新規事業の稟議突破と予算獲得の実態調査
調査方法
IDEATECHの「リサピー®︎」によるインターネット調査
調査期間
2025年10月27日〜2025年10月29日
有効回答
大手企業(従業員500名以上)で過去3年以内に新規事業の稟議提案を経験した新規事業担当者・企画担当者105名

以下に、本記事で示した主要な数値やポイントを整理した表でまとめます。この記事はEngineerforceが公表した調査結果に基づき作成しました。調査レポートのダウンロードは、https://engineerforce.io/resources/get_approval/ をご参照ください。

項目 内容
対象 大手企業(従業員500名以上)、新規事業担当者・企画担当者105名
調査期間 2025年10月27日〜10月29日
初回稟議の通過率 1回目で通過:20.0%
複数回での通過 2回目で通過:46.6%、3回目以上:28.6%
稟議却下の主な理由 収益性・ROIが不透明:61.4%/競合優位性不明確:41.0%/リスク高:39.8%
経営層を説得する決定打 明確な市場規模とシェア見込み:51.0%/顧客の声・ニーズ証明:44.0%
効果的だった資料 市場調査データ・業界レポート:57.1%/顧客インタビュー結果:54.3%
初回獲得予算規模 1,000万円以上3,000万円未満:33.3%/3,000万円以上5,000万円未満:24.8%
外部パートナーに期待する支援 事業計画書作成支援:53.3%/顧客インタビュー支援:48.6%/市場調査:47.6%
出典 Engineerforce(https://engineerforce.io/)

この記事は、Engineerforceが公開した調査レポートの内容を基に、稟議通過に関する具体的な課題と実務上の対応を整理したものです。調査結果の詳細やレポート本体は、https://engineerforce.io/resources/get_approval/ からダウンロードできます。

参考リンク: