『私立探偵マニー・ムーン』がこのミス海外編第1位に

このミス海外編第1位

開催日:12月5日

このミス海外編第1位
どんな本で何が注目されてるの?
リチャード・デミングの短中篇集で、ハードボイルドの語りと本格推理のトリックを両立させたハイブリッド作品。新潮文庫版が『このミステリーがすごい!2026』海外編第1位に選ばれた点が話題です。
発売日はいつ?どこで買えるの?
文庫版は新潮社から2025年6月25日発売、定価1,320円(税込)、田口俊樹訳。ISBN:978-4-10-240881-0。出版社ページや主要書店、通販で購入可能です。

75年を経て再評価された私立探偵、マニー・ムーンが『このミステリーがすごい!2026』海外編第1位に

新潮文庫〈海外名作発掘Hidden Masterpieces〉シリーズで刊行されたリチャード・デミング著、田口俊樹訳の中篇集『私立探偵マニー・ムーン』が、『このミステリーがすごい! 2026年版』海外編で第1位に選ばれたことが、株式会社新潮社の発表(2025年12月5日 11時00分配信)で明らかになった。発表は出版社公式によるもので、同書は日本オリジナル編集による“本格推理私立探偵小説”作品集として刊行されている。

本書は、執筆時期が1940年代後半から1960年代はじめにかけての作品群を集めたもので、75年近く前に発表された中篇を改めて編集・翻訳して収録している点が特徴である。作品はハードボイルドの伝統を受け継ぎつつ、本格ミステリー的な謎解きと巧妙なトリックも備えたハイブリッドな内容であると評価されている。

発表元
株式会社新潮社(プレスリリース日時:2025年12月5日 11時00分)
選出
『このミステリーがすごい! 2026年版』海外編 第1位
『このミステリーがすごい! 2026年版』海外編第1位は……なんと75年も昔に発表された小説! リチャード・デミング傑作中篇集『私立探偵マニー・ムーン』 画像 2

リチャード・デミングとマニー・ムーン:時代背景と作風の重層性

リチャード・デミングは1915年生まれで、1940年代後半のパルプ雑誌黄金期から1980年代初頭まで長く犯罪小説を執筆した職人作家である。マニー・ムーンが活躍する舞台はパルプ雑誌の終焉期にあたり、主人公の活動時期は1940年代末から1960年代はじめにかけてである。

本書で見られる作風は、ダシール・ハメットやレイモンド・チャンドラーといった正統的ハードボイルドと並列して評価されるロス・マクドナルドとほぼ同時期の制作である点が示す通り、ハードボイルドの伝統を踏襲している。一方でエラリー・クイーンのゴーストライターとしての経歴を持つことから、本格ミステリーの謎解き要素やトリック構成にも熟達している。

代表的な活動
パルプ雑誌への寄稿(《マンハント》初期、《アルフレッド・ヒッチコックズ・ミステリマガジン》 等)、ノンフィクション、TVノヴェライズ(例:『刑事スタスキー&ハッチ』)
特色
ハードボイルド的な語りと本格推理のトリック要素を併せ持つハイブリッドな探偵小説を多数執筆

同時代作家との位置関係

リチャード・デミングはハメットやチャンドラーと同時代の空気を共有しつつ、ハドリー・チェイスやミッキー・スピレインらともほぼ同世代に位置する。さらに、その後のネオ・ハードボイルドやソフトボイルド系の作家たち(マイクル・コリンズ、ジョゼフ・ハンセン、マイクル・Z・リューイン、ローレンス・ブロックなど)へと続く流れの一端を担っている。

一方でデミングはエラリー・クイーン名義の作品をゴーストライターとして執筆した経験があり、正統派本格ミステリーの構造や論理的なトリック構築にも通じている。そのためマニー・ムーンものは単なるハードボイルドではなく、密室トリックなど本格要素を含んだ“本格推理私立探偵小説”としての魅力を放つ。

「私立探偵マニー・ムーン」-登場人物像と作品の読みどころ

主人公のマニー・ムーンは戦地帰りのタフガイであり、私立探偵として事件に関わる。作中では言い寄ってくる女性とのやり取り、義足を使った大立ち回り、そして関係者一同を前にして見せる名探偵顔負けの謎解きなどが描かれている。こうした要素の組み合わせが、作品に独特のテンポと魅力を与えている。

本書は「ワイズクラック(へらず口)」と呼ばれるハードボイルド特有の軽妙な語り口も備える一方、犯人当てやトリック解明といった本格ミステリーの醍醐味もきちんと押さえている。収録作は短中篇の構成により読みやすく、当時のパルプ趣味と本格推理の論理性が同居する点が特徴である。

  • 主人公像:戦地帰りのタフガイ、義足を持つアンチヒーロー
  • 作風の特徴:ハードボイルド語り+本格トリック
  • ストーリー構成:短中篇集でテンポよく読み進められる
  • 読みどころ:密室トリックや最終の総括的謎解き、登場人物のやり取り

本文の具体的な魅力と構成

本書に収められたマニー・ムーンものは、アクション描写と推理的な解明を両立させる点で特異である。戦地帰還という設定から生じるタフガイ性と、私立探偵としての論理性が両立し、義足が単なる身体的特徴にとどまらず場面に応じた象徴的・実用的役割を果たすよう描かれている。

また、物語の締めくくりで〈関係者を集めての謎解き〉を行う場面があり、本格ミステリーを好む読者にも満足感を与える構成になっている。単なる雰囲気重視のハードボイルドに終わらず、犯人特定やトリック説明の論理性がきわめて重要視されている。

書誌情報と翻訳・刊行の詳細

本書は新潮社より文庫として刊行され、発売日は2025年6月25日である。定価は1,320円(税込)、ISBNは978-4-10-240881-0。出版社による紹介ページは以下のURLで確認できる。

書誌情報や訳者紹介、著者略歴を含め、刊行にまつわるデータは出版物としての基本情報だけでなく、作品の文脈理解に資する要素が明示されている。

書名
私立探偵マニー・ムーン
著者/訳者
リチャード・デミング(Richard Deming)/田口俊樹訳(Taguchi Toshiki)
発売日
2025年6月25日
造本
文庫
定価
1,320円(税込)
ISBN
978-4-10-240881-0
出版社ページ
https://www.shinchosha.co.jp/book/240881/

著者と訳者の紹介

リチャード・デミング(1915-1983)は、1940年代後半のパルプ雑誌時代から1980年代初頭まで犯罪小説を中心に執筆を続けた職人作家である。ノンフィクションも手がけ、雑誌寄稿やTVノヴェライズなど多彩な活動を行った。エラリー・クイーン名義のオリジナル作品をゴーストライターとして執筆したこともある。

訳者の田口俊樹は1950年奈良市生まれ、早稲田大学卒。ローレンス・ブロックの『マット・スカダー』シリーズをはじめ、多数の翻訳を手掛けている。訳書にはケイン『郵便配達は二度ベルを鳴らす』、スミス『チャイルド44(フォーティフォー)』、チャンドラー『長い別れ』、ウィンズロウ『業火の市(まち)』、コーベン『捜索者の血』、ハメット『マルタの鷹』などがある。

要点の一覧とまとめ

以下に本記事で触れた項目を表形式で整理する。発表情報、書誌データ、作風の特徴、著者・訳者の主要な情報を一括で確認できるようにまとめた。

項目 内容
書名 私立探偵マニー・ムーン
著者 リチャード・デミング(Richard Deming, 1915-1983)
訳者 田口俊樹(Taguchi Toshiki, 1950年生)
刊行日 2025年6月25日(文庫)
定価 1,320円(税込)
ISBN 978-4-10-240881-0
出版社 新潮社(新潮文庫〈海外名作発掘Hidden Masterpieces〉)
公式URL https://www.shinchosha.co.jp/book/240881/
受賞・選出 『このミステリーがすごい! 2026年版』海外編 第1位(発表:2025年12月5日 11時00分、株式会社新潮社プレスリリース)
作風の特徴 ハードボイルド的語り+本格ミステリー的な謎解き、密室トリックや名探偵風の総括が含まれるハイブリッドな中篇集

本書は1940年代末から1960年代はじめのパルプ文学的背景を持ちながら、本格的なトリックと論理的な謎解きを同時に備えた点が評価され、国内の選書企画で第1位に選出された。書誌情報や著者・訳者の経歴も公表されており、関心がある読者は出版社の紹介ページで詳細を確認できる。

参考リンク: