千葉県7市、文科省に給食無償化で国の財源確保を要請

千葉7市が給食無償化要請

開催日:12月5日

千葉7市が給食無償化要請
今回の要請って何を求めてるの?
千葉県の7市は学校給食の無償化について、制度設計と財源を国の責任で行うことを要請。普通交付税ではなく不交付団体も含め全自治体に直接届く財源措置を求め、恒久的で公平な仕組みを強く訴えている。
普通交付税の不交付団体がなぜ問題になるの?
不交付団体は普通交付税が配られないため、無償化の費用を自治体の自主財源で賄わねばならず、財政圧迫やサービス格差が生じる恐れがあるからだ。

千葉県の7市が示した一貫した主張──学校給食の無償化は国の責任で

令和7年12月5日17時17分、千葉県内の普通交付税不交付団体に該当する7市が連名で、学校給食の無償化に関する制度設計と財源措置について文部科学省へ緊急要請を行いました。要請に参加した自治体は市川市、成田市、市原市、君津市、浦安市、印西市、袖ケ浦市の7市です。会合は袖ケ浦市で行われ、同日中に文部科学省へ正式な申し入れが行われました。

要請の趣旨は、学校給食の無償化を義務教育に係る負担軽減として実施するにあたり、財源措置を国の責任で行うことを強く求める点にあります。背景には、現行の制度設計案のなかで「国と地方の負担割合」が焦点となっていること、そして普通交付税の仕組みによって不交付団体が不利益を被る可能性があることがあります。

「学校給食無償化は国の責任で」千葉県7市が緊急要請 画像 2

制度設計の現状と懸念点:背景と数値の整理

今回の要請は、与党側のいわゆる「三党合意」(令和7年2月)に基づき、学校給食無償化の制度設計が進められていることを踏まえて行われています。報道や関係資料によれば、制度設計においては今後、国と地方の負担割合が主要な検討課題となる見込みです。

学校給食に関する財政規模の目安として、文部科学省の推計(令和5年現在)では、全国の公立小学校の学校給食費(食材費に相当する額)の合計は約3,000億円とされています。さらに、物価高騰の影響を踏まえると、実際に無償化に必要となる財源はこの額を上回ることが見込まれます。

こうした中で懸念されるのは、財源措置が自治体の財政力に応じた「普通交付税措置」とされた場合の影響です。普通交付税は本来、地方公共団体間の財源の不均衡を調整するための仕組みですが、財政力が一定水準にあると判断される自治体(不交付団体)は普通交付税を受け取らないため、無償化に伴う費用を自治体の自主財源でまかなう必要が生じる可能性があります。これにより不交付団体では、制度実施が自治体の財政を圧迫するリスクが生じます。

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要請の中身と求めた具体的項目

千葉県の7市が文部科学省に対して行った要請は、主に以下の2点に集約されます。いずれも文面に沿って明確に求められた項目です。

  • 国の責任による制度設計:学校給食の無償化は義務教育に係る負担軽減の観点から、国の責任において制度設計を行うこと。
  • 確実な財源措置:自治体の財政力に応じた「普通交付税措置」ではなく、不交付団体を含めた全ての自治体に財源が行き渡るよう、直接的な財源措置を講じること。

要請書には原文としての表現も添えられており、そちらでは次のように記載されています。

「学校給食の無償化は、国の施策として、全ての地方自治体において地域間格差が生じないよう、国の責任により、持続可能かつ公平な制度を設計すること。また、普通交付税不交付団体も含め、自治体間で費用負担に格差が生じないよう、直接的な財源措置を講じること。」

要請は制度の恒久性と公平性を重視したものであり、単年度や限定措置ではなく、持続可能な仕組みを国に求める点が強調されています。

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要請当日の様子と出席者・各市長らのコメント

令和7年12月5日(金曜日)に行われた要請は、松本 洋平 文部科学大臣に対して行われました。参加した首長や関係者は文部科学省を訪れ、連名で要請書を提出しています。写真のキャプションには次の顔ぶれが記されています。

(左から)浜田 靖一 衆議院議員、松本 洋平 文部科学大臣、袖ケ浦市 粕谷 智浩 市長、成田市 小泉 一成 市長、浦安市 木村 洋志 副市長、市川市 小島 信也 学校教育部次長

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出席者の詳細と参加者役職

要請当日は、以下の役職者が参加し、文部科学大臣に対して直接要請を行いました。

  • 袖ケ浦市 粕谷 智浩 市長(要請代表の一人)
  • 成田市 小泉 一成 市長
  • 浦安市 木村 洋志 副市長(浦安市からの代表)
  • 市川市 小島 信也 学校教育部次長(市川市代表)
  • 写真には浜田 靖一 衆議院議員、松本 洋平 文部科学大臣も包含

これらの出席者を通じて、要請内容は文部科学省の担当部署へ正式に伝えられました。

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各市長のコメント(全文)

要請には参加した各市の市長からのコメントが添えられています。以下に全文を掲載します。

市川市 田中 甲 市長

学校給食費の無償化は、未来を担う子どもたちの健やかな成長を社会全体で支える施策です。市川市はその思いを持ち、一早く給食費無償化を進めてまいりましたが、本来は少子化の進む我が国において、国が責任を持って進める仕事だと発信してきました。子どもたちのための重要な施策であり、すべての自治体が持続的に取り組めるよう、第一に要望いたします。

成田市 小泉 一成 市長

学校給食費の無償化の取り組みは、自治体間での格差が生じている実情があり、地域格差の解消のためにも、国の責任において恒久的な取り組みとして、全国一律の支援制度を確立すべきと考えます。財政力にかかわらず、すべての地方自治体に対する、国費による一律の支援制度の構築を強く求めます。

市原市 小出 譲治 市長

学校給食費の無償化は、子どもたちの住んでいる自治体の財力によって、地域格差が生じることのないよう、持続可能かつ公平な制度設計がなされるべきものと考えております。全ての子どもたちへの義務教育に係る負担軽減の観点から、国の責任において、必要な額を確実に確保する仕組みとされることを、強く要請します。

君津市 石井 宏子 市長

学校給食の無償化は、義務教育に係る負担軽減として、国の責任において行われるべきであり、財政力の格差に関係なく公平な国の支援があるべきと考えます。このため、普通交付税の不交付団体を含む全ての市町村に対し、必要な額を全額国費で確実に確保する仕組みとされるよう強く要望します。

浦安市 内田 悦嗣 市長

本市では、子育て支援として保護者の経済的負担の軽減を図るため、令和6年度から学校給食費の完全無償化を実施しておりますが、これを国の施策として行うことには賛同いたします。ただし実施にあたっては、普通交付税不交付団体を含め、地方自治体の財政力によって費用負担に格差が生じないよう、財源措置を講じることを求めます。

印西市 藤代 健吾 市長

現在、国において学校給食の無償化に向けた制度設計が進められていますが、印西市は人口増に伴う学校整備や物価高騰で給食費負担が重く、財政運営に影響を及ぼしかねません。学校給食の無償化は義務教育の負担軽減のため、国の責任で公平に実現し、すべての自治体が格差なく取り組めるよう直接的な財源措置を強く要望します。

袖ケ浦市 粕谷 智浩 市長

学校給食の無償化は、国が推進されるべき重要な少子化対策です。居住する自治体の財政力によって、その恩恵や住民負担に格差が生じることはあってはなりません。特に不交付団体において、国の実質的な支援がないまま制度だけが義務付けられれば、市民サービスや将来のまちづくり予算を圧迫することになります。国に対し、責任ある財源措置と公平な制度の構築を強く求めます。

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普通交付税とは何か――不交付団体が直面する問題点の整理

今回の要請の理解にあたって重要なのは「普通交付税」の仕組みと、不交付団体がなぜ今回のような行動を取ったのかという点です。以下に要点を整理します。

普通交付税は、地方公共団体間の財源の不均衡を調整し、全国どの地域に住んでいても一定水準の行政サービスを提供できるよう国が交付する財源です。しかし、財政力が比較的高い団体は「自らの財源でまかなえる」と判断され、普通交付税が交付されないことがあります。千葉県内では今回要請に名を連ねた7市がその「不交付団体」に該当します。

普通交付税の目的

地方公共団体間の財政調整を行い、地域間格差を是正すること。

不交付団体の意義

財政力が一定水準に達していると認められるため、普通交付税を受けない自治体。交付されないがゆえに、国が普通交付税を財源として給食無償化の負担を地方に委ねた場合、当該自治体にとってはその費用を自主財源で賄う必要がある。

したがって、要請側は「普通交付税による措置では不交付団体に不利が生じるため、直接的な国費等による財源措置を講じること」を求めています。

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まとめ:要請の要点と当該自治体の立場を表に整理

ここまでに示した要請の背景、具体的な要望、要請当日の出席者と各市長のコメント、そして普通交付税の仕組みと不交付団体の立場を整理します。下の表は主要な事項を一目で確認できるようにまとめたものです。

項目 内容
要請実施日時 令和7年12月5日 17時17分(袖ケ浦市発表)
要請者(連名) 市川市、成田市、市原市、君津市、浦安市、印西市、袖ケ浦市(普通交付税不交付団体)
要請先 文部科学省(松本 洋平 文部科学大臣)
主な要請事項
  1. 学校給食の無償化は国の責任で制度設計を行うこと
  2. 普通交付税措置ではなく、不交付団体を含む全ての自治体に確実に届く直接的な財源措置を講じること
要請の背景・根拠 三党合意(令和7年2月)に基づく制度設計の進展。全国の公立小学校給食費の合計は文部科学省推計(令和5年)で約3,000億円。物価高騰等を踏まえると必要財源はさらに増加する可能性あり。
写真のキャプション(当日の様子) (左から)浜田 靖一 衆議院議員、松本 洋平 文部科学大臣、袖ケ浦市 粕谷 智浩 市長、成田市 小泉 一成 市長、浦安市 木村 洋志 副市長、市川市 小島 信也 学校教育部次長
自治体側の共通主張 学校給食の無償化は義務教育に係る負担軽減の観点から国の責任で行うべきであり、財源措置は不交付団体を含む全ての自治体に直接的に行き渡るようにすること

上表は、要請に関する主要事項を整理したものです。要請書の原文は、今回の趣旨を踏まえた具体的表現で「地域間格差が生じないよう」「持続可能かつ公平な制度を設計すること」および「直接的な財源措置を講じること」を明記しています。制度設計と財源措置の在り方が今後の議論の焦点となる中、当該7市が示した要請は、自治体財政の視点からの懸念と公平性の確保を訴えるものでした。