QTnetと福岡県が共創 RAG改良で生成AI精度向上
ベストカレンダー編集部
2025年12月10日 12:21
ユーザー誘導型導入
開催日:12月10日
福岡県とQTnetが共創した「ユーザー誘導型グラウンディング」──行政現場での活用を目指す共同研究の成果
株式会社QTnet(本店:福岡市、代表取締役社長:小倉 良夫)は、福岡県と「生成AIを活用した行政事務効率化に関する共同研究」の覚書を締結し、その研究成果の第一弾として、新たな生成AIの運用手法「ユーザー誘導型グラウンディング」を共創したと2025年12月10日10時06分に発表しました。共同研究の目的は、行政事務の現場で生じる質問意図の誤解や、生成AIが事実に基づかない情報を出力するハルシネーションを抑制し、現場で使える回答精度を確保することです。
発表資料によれば、QTnetは既に2024年12月から法人向けマルチ生成AIプラットフォーム『QT-GenAI』を福岡県庁に提供しており、今回の共同研究で得られた改良は同プラットフォームの新機能として搭載される予定とされています。発表はQTnet側からの公式アナウンスに基づくもので、プレスリリースの日時は2025年12月10日10時06分です。
「ユーザー誘導型グラウンディング」の仕組みとRAGへの改良点
本手法は、生成AIの主要な補助技術であるRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)を基盤に置き、そこに独自の改良を加えたものです。RAGは組織が保有するデータベースを大規模言語モデル(LLM)が参照することで、組織固有の質問に対して正確性を高める仕組みですが、実運用ではユーザーの意図が正確に伝わらないためにミスマッチが生じることや、参照先の選定の誤りからハルシネーションが起きることが課題でした。
「ユーザー誘導型グラウンディング」は、この課題に対して生成AIが複数の関連情報源候補を提示し、職員自身がその中から最も質問意図に近い情報源を選択することで、AIの参照対象を利用者の意図に沿って明確化する点が特徴です。選択に基づいてAIは参照先を限定して回答を生成するため、ミスマッチとハルシネーションの抑制効果が期待されます。
運用のイメージと具体的な流れ
公開された利用イメージでは、職員がシステムに質問を入力すると、生成AIは関連しそうな規定やマニュアルを候補として一覧表示します。職員はその候補から自身の意図に最も近いものを選択し、選択された情報源をもとにAIが最終的な回答を生成します。
この手順により、生成AIと職員の間で何度もやり取りを繰り返す必要が減り、初回のやり取りで意図に即した回答を得やすくなります。また、参照対象が明確になることで、回答の出所が把握しやすくなり、事実確認や根拠提示も容易になります。
- 利用開始:職員が質問を入力
- 候補提示:AIが関連規定・マニュアル等の情報源候補を提示
- 選択フェーズ:職員が最も意図に合う情報源を選択
- 限定参照:AIが選択された情報源を優先参照して回答を生成
導入効果と現場からの評価
QTnetの発表は、同手法の主な効果として「回答精度の飛躍的な向上」「作業時間の短縮と満足度の向上」を挙げています。職員の側が質問意図を明確にできることで、生成AIによる解釈のズレを根本的に減らし、事実と異なる情報の生成(ハルシネーション)を大幅に低減できると説明されています。
また、庁内の部署間で異なる手続きや慣行に基づく問い合わせに対しても、人手を介さずに高精度で回答できる可能性が示されており、将来的には外部からの問い合わせ対応の自動化へと拡大することで、行政サービス全体の質向上につながる期待も記載されています。
福岡県のコメント
福岡県 企画・地域振興部 情報政策課 課長 井手 裕二 氏はコメントを発表しています。井手氏は、QTnetとの連携により行政の現場が抱える課題解決につながる新たな方策を創出できたことを心強く感じていると述べ、県としてこの技術を活用して行政事務の効率化と県民サービスの向上に取り組んでいく旨を表明しています。
このコメントは共同研究の意義と期待を端的に示すものであり、行政と民間事業者が連携して技術を共創し、実運用に落とし込むプロセスが強調されています。
実装状況、技術的注釈と関連情報の整理
発表文では、今回の新手法はQTnetの『QT-GenAI』の新機能として搭載されることが明示されています。QT-GenAIは法人向けのマルチ生成AIプラットフォームであり、福岡県庁には2024年12月から導入済みです。プラットフォームへの組み込みによって、既存のデータベースや規定集を有効活用した運用が見込まれます。
技術的な補足として、RAGやハルシネーションに関する注釈もプレスリリース内に記載されています。RAGは組織内のデータベースから情報を引き出してLLMが回答する仕組みを指し、ハルシネーションは生成AIが事実に基づかない内容をもっともらしく生成してしまう現象を指します。これらの用語説明は本文中の脚注として整理されています。
- *1 RAG(Retrieval-Augmented Generation)
- 組織が用意するデータベースに保管されたデータを、生成AIの大規模言語モデル(LLM)が参照することで、組織固有の質問についても回答精度を高めて回答を生成する仕組み。
- *2 QT-GenAIの導入情報
- QTnetの法人向けマルチ生成AIプラットフォーム「QT-GenAI」は、2024年12月18日のプレスリリースで福岡県庁への導入が発表されています(https://www.qtnet.co.jp/news/?page_name=31350230ruofubj.ru.hfobj/iunm)。
- *3 ハルシネーション
- 生成AIが事実に基づかない情報や文脈と無関係な内容をもっともらしく生成する現象。
以下は、プレスリリースの内容を整理して一望できる表です。主要な情報を項目ごとにまとめ、発表の要点を確認しやすくしています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表日 | 2025年12月10日 10時06分 |
| 発表主体 | 株式会社QTnet(本店:福岡市、代表取締役社長:小倉 良夫) |
| 共同研究相手 | 福岡県(企画・地域振興部 情報政策課) |
| 研究テーマ | 生成AIを活用した行政事務効率化に関する共同研究 |
| 新手法名称 | ユーザー誘導型グラウンディング(RAGの改良) |
| 既存プラットフォーム | QT-GenAI(福岡県庁へは2024年12月から導入済) |
| 主なメリット | 回答精度の向上、ハルシネーション抑制、作業時間短縮、職員の満足度向上 |
| 福岡県からのコメント | 井手 裕二(企画・地域振興部 情報政策課 課長):QTnetとの連携で行政の現場課題解決に繋がる方策を創出できたとし、県として効率化と県民サービス向上に取り組む旨を表明 |
| 関連リンク | https://www.qtnet.co.jp/ |
この記事では、プレスリリースの全情報を整理して提示しました。今回の共同研究で得られた「ユーザー誘導型グラウンディング」は、既存のRAGを基盤にしつつ利用者の選択を介在させることで、行政現場における実用性と信頼性の向上を目指す取り組みです。実装はQT-GenAIに組み込まれる形で進められており、2024年12月のプラットフォーム導入以降の運用実績を踏まえた共同研究成果として発表されています。
参考リンク: