山田緑地に6,000人来場 北九州市のインクルーシブ遊具体験

インクルーシブ遊具体験会

開催期間:9月27日〜10月19日

インクルーシブ遊具体験会
この体験会って具体的に何をやったの?
山田緑地でインクルーシブ遊具の体験やミツバチ巣箱観察など、障害の有無に関係なく参加できる自然体験や遊びのプログラムを20日間開催し、6,000人が来場しました。
今回の結果で公園はどう変わるの?
市は来場者の声や改善要望をアンケートや支援団体との意見交換で収集し、モデル公園の整備や遊具配置、運用ルールに反映させる方針で段階的に改良を進めます。

山田緑地に6,000人が集った「インクルーシブ遊具体験会」の記録

福岡県北九州市は2025年9月27日から10月19日までの20日間、北九州市小倉北区の山田緑地で「遊びながら聞く〜インクルーシブな遊びの体験会〜」を開催し、予想をはるかに超える6,000名の親子が来場したと2025年12月12日15時10分付のリリースで公表した。主催は北九州市(北九州市役所)で、この体験会は「すべてのこどもが主役になれる公園」を目指す取り組みの一環として位置づけられている。

期間中にはインクルーシブ遊具の体験、ミツバチ巣箱の観察など、障害の有無にかかわらず参加できる自然体験や遊びのプログラムが実施された。来場者の反応は多岐にわたり、家族が一緒に遊べる場面、保護者や関係者が気づいた課題、そして障害のある子どもが他の子どもたちと混ざって遊ぶ光景などが記録されている。

「朝5時にしか公園に行けない」その声から始まった北九州市が目指す~すべてのこどもが主役になれる公園~への挑戦。 画像 2

きっかけは早朝5時に公園へ行くという「切実な声」

今回のプロジェクトが動き出した背景には、特別支援学校に通う子どもを持つ保護者へのアンケートに寄せられた切実な声がある。リリースによれば、保護者からは「トラブルを避けるため、誰もいない早朝5時に公園に行っています」という回答があった。こうした回答は、公園利用における実際の困難さが家庭に与える影響の深刻さを示している。

また子どもからも「(障害のある)弟と一緒に遊びたいけれど、遊べる遊具がない」といった声が寄せられた。北九州市が掲げる概念は「こどもまんなかCity」であり、これは大人の都合ではなく子どもの目線でまちを考え、子どもを「社会を構成する一人の市民」として尊重するという考え方だ。この理念に基づき、既存の公園に居場所を感じられない子どもたちを前提に、公園の再定義と改良が進められる。

「朝5時にしか公園に行けない」その声から始まった北九州市が目指す~すべてのこどもが主役になれる公園~への挑戦。 画像 3

体験会で見えた三つの景色と具体的な声

体験会では、大きく三つの「景色」が浮かび上がった。いずれも来場者の生の言葉が示す現実であり、プロジェクトの方向性を明確にする材料となっている。

以下ではそれぞれの景色を詳細に伝える。引用された発言は体験会当日の声としてリリースに掲載されたものである。

「朝5時にしか公園に行けない」その声から始まった北九州市が目指す~すべてのこどもが主役になれる公園~への挑戦。 画像 4

「一緒に」を当たり前に選べる喜び

これまでは遊具や身体能力の違いにより、兄弟姉妹が別行動になる場面が多かった。体験会では分断する壁が取り払われ、家族が一つになれる瞬間が見られた。

実際に寄せられた声としては、「弟と一緒にブランコに乗れて嬉しかった!」(障害のある弟さんと来た小学生)や、「年の離れた兄弟が、同じ遊具で一緒に笑いあえてよかった」(2児のお母さん)といった発言が挙げられている。家族単位での参加が増え、共に遊ぶ体験が創出されたことが確認された。

大人たちが初めて気づいた現実

体験会は子どもたちの行動だけでなく大人の意識変化も促した。現状では普通の遊具では遊べない子どもがいることや、周囲に気を遣いながら遊ぶ家族が存在することを、多くの来場者が初めて認識した。

具体的には、「車イスの子どもは普通の遊具では遊べないことに、親として初めて気づきました。ハッとさせられました」(2児のお母さん)や、「こんなにたくさん障害のあるお子さんがいることを、初めて知りました。この公園は絶対に必要です」(2児のお父さん)といった声が寄せられている。これらの反応は設計や整備に対する市民理解の深化につながる。

境界線が消え、ただ「子ども」になれる時間

障害の有無を問わず混ざり合い、子どもたちがただ遊ぶ姿が確認されたことは、専門家からも評価された。日常的に障害のある子どもと接する職員も、自然な混ざり合いに希望を見出した。

リリースには、「障害のある子が、同世代の子どもたちに混じって自然に遊べている。こんな光景が見られるなんて、本当に嬉しいです」(児童発達支援事業所の職員さん)という発言が紹介されている。こうした場面は、インクルーシブな公園が果たしうる社会的役割を象徴するものである。

具体的に進められる取り組みと市民の“声”の活用

北九州市は今回の体験会で得られた市民の声を核にして、今後の公園づくりを本格的に進めていくとしている。単にインクルーシブ遊具を設置するだけでなく、「こどもまんなか」の視点を軸にした居場所づくりを目指す方針だ。

そのために実施される具体的な活動としては、障害のあるお子さんを持つ家庭へのアンケート調査や支援団体との意見交換が挙げられている。収集した意見を一つひとつ積み上げ、モデルとなる公園の整備に反映させる手順を踏むことが示されている。

収集と反映のプロセス

リリースでは、体験会での「楽しかった」という声だけでなく、「もっとこうしてほしい」「ここが使いにくかった」といった改善意見も多く寄せられたことが明記されている。市はこれらの具体的な指摘を反映させるために複数の調査・協議を行う計画を示している。

具体的な手法として、アンケート調査と支援団体との意見交換が予定されている。これにより、現場の細かなニーズを把握し、モデル公園の整備や運用ルールの検討に活かす方針だ。

導入される活動の例と参加形態

体験会で実施された活動は多岐にわたった。インクルーシブ遊具の実際の利用や、自然体験としてのミツバチ巣箱観察など、年齢や能力に応じて参加できる内容が用意された。参加者は親子が中心で、家族単位の体験が多く見られた。

また、来場者からは利用しやすさや改善点に関する具体的な意見が多数提出されており、それらは今後の整備計画の基礎データとして位置づけられている。市はこれらの声を重ねて公園設計へ反映させる方針である。

まとめ:体験会の成果と今後の整理

北九州市が実施したインクルーシブ遊具体験会は、6,000名の来場という数値的成果だけでなく、実際の利用者や保護者、支援者が抱える課題と期待を可視化した点に意義がある。リリースは市が得た「声」を丁寧に集め、段階的に公園整備へつなげる意図を明らかにしている。

当日の様子はSNS上に写真や記録が残されており、リリースは「当日の様子(Facebookリンク)」として閲覧可能であると記載している。次段階ではアンケートや意見交換を通じて集められたデータを基に、モデル公園の整備を進めていく方針である。

項目 内容
発表元 福岡県北九州市(北九州市役所)
リリース日時 2025年12月12日 15時10分
イベント名 遊びながら聞く〜インクルーシブな遊びの体験会〜
開催期間 2025年9月27日(土)〜2025年10月19日(日)〈20日間〉
開催場所 山田緑地(北九州市小倉北区)
来場者数 6,000名
主なプログラム インクルーシブ遊具体験、ミツバチ巣箱の観察などの自然体験
発見された課題・声 早朝5時にしか公園に行けない保護者の実態、遊具が利用できない子どもの存在、家族が分断される現状、改善要望多数
今後の対応 障害のある子どもを持つ家庭へのアンケート調査、支援団体との意見交換、モデル公園の整備計画への反映
関連リンク 当日の様子(Facebookリンク)

以上がリリースに基づく報告内容の整理である。北九州市は市民から寄せられた具体的な意見を積み重ねることで、公園を「まちの価値を高める舞台」として再定義し、すべてのこどもが主役になれる場の創出を目指している。