認知率が半減、2025年度新型コロナ定期接種の実態

2025年度定期接種開始

開催期間:10月1日〜3月31日

2025年度定期接種開始
自分は定期接種の対象になるの?
基本は65歳以上が対象。60〜64歳は心臓・腎臓・呼吸器の重度障害やHIVなどで日常生活が極めて制限される人が対象になります。自治体案内も確認して下さい。
住んでる自治体だと自己負担はいくらかかるの?
自治体で差が大きく、平均は6,248円。東京都の一部区は無償提供もある一方で、最高は茨城・笠間市で13,600円など。居住自治体の公表情報を確認して下さい。

認知率が半減した「2025年度新型コロナワクチン定期接種」─数字が示す現状

生活者向け情報サイト「マイライフニュース」を運営するヒューマン・データ・ラボラトリ株式会社は、2025年10月1日から開始された2025年度の新型コロナワクチン定期接種(実施期間は原則2026年3月31日まで/自治体により異なる場合あり)について、認知率と自治体ごとの自己負担額を調査しました。プレスリリースは2025年12月16日 11時00分付で公開されています。

調査の中心となったのは65歳以上の全国男女2,500名を対象にした認知率調査と、人口5万人以上の549自治体を対象にした自己負担額の実態把握です。結果は、2024年度と比較して認知率が約半分に減少したこと、さらに国の助成終了に伴い自治体間で自己負担額の差が明確になったことを示しました。

2025年度「新型コロナワクチン定期接種」の認知率は、29.5% 2024年度定期接種と比べて約半分に減少 画像 2

認知率の推移と調査の方法

今回の調査では、2024年度の定期接種に関する調査(2025年1月10日~12日実施)と2025年度の調査(2025年9月26日~29日実施)を比較しています。調査はオンラインで実施され、性別・居住地が実際の人口比に近くなるように補正を行っています。

主要な数値は次の通りです。2024年度定期接種の認知率が60.3%であったのに対し、2025年度は29.5%にとどまり、約半分へと減少しました。調査対象はn=2,500(65歳以上)であり、回答時期と補正方法も報告されています。

調査対象
65歳以上の全国男女2,500名(オンライン調査)
実施時期
2025年1月10日~12日、2025年9月26日~29日
データ補正
性別・居住地が実際の人口比に近くなるよう補正
2025年度「新型コロナワクチン定期接種」の認知率は、29.5% 2024年度定期接種と比べて約半分に減少 画像 3

補助金終了で顕在化した自治体間の格差と自己負担額の実態

国の助成金制度が終了したことで、2025年度の定期接種は初めて各自治体の予算のみで実施されました。そのため、自治体の財政状況や優先度に応じて、住民への周知や接種費用に差が生じることが想定されます。本調査は人口5万人以上の549自治体について自己負担額を集計しました。

調査の結果、自治体間で大きな差が確認されました。最も自己負担額が高かったのは茨城県笠間市で13,600円、次いで千葉県君津市が13,200円、埼玉県東松山市が13,000円でした。一方、東京都の6区(千代田区、港区、台東区、渋谷区、足立区、葛飾区)は定期接種を無償で実施していることが確認されました。全体の平均値は6,248円です。

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自己負担額調査の注記

本調査にはいくつかの注記があります。年齢や基礎疾患の有無によって金額が変わる地域は最小値を記載しています。また、助成金が示されている地域については自治体が示す接種費用(15,600円)との差額を記載し、選択するワクチンによって自己負担額が変動する場合は平均値を用いています。非課税世帯や生活保護受給者の免除扱いは本調査からは除外されています。

具体的なランキング一覧は自治体ごとに細かく集計されていますが、ここでは上位と下位、平均値を明記しました。助成終了の影響により、住民が実質的に負担する金額は自治体ごとに大きく異なるという現状が浮き彫りになっています。

  • 最高自己負担額:茨城県笠間市 13,600円
  • 次点:千葉県君津市 13,200円、埼玉県東松山市 13,000円
  • 無償実施:東京都 千代田区、港区、台東区、渋谷区、足立区、葛飾区
  • 平均自己負担額:6,248円
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感染状況、重症化リスク、治療薬――専門医の見解と推奨

調査と合わせて、KARADA内科クリニック 五反田院 院長で感染症専門医の佐藤昭裕先生に、ワクチン接種の必要性や早期診断・早期治療の重要性について話を伺いました。佐藤先生は日本感染症学会専門医であり、東京医科大学病院感染症科医局長などを歴任した専門家です。

佐藤先生は、冬の流行期に入り当院でも新型コロナの患者数が増え始めたと報告しています。ただし昨年ほどの急増は感じられないとのことで、その背景には危機意識の低下やメディア報道の減少、インフォデミックによる情報混乱があると指摘します。また、インフルエンザ流行が早まったことにより医療現場の対応が分散している可能性も示唆しています。

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重症化リスクとワクチンの効果

専門学会(日本感染症学会、日本呼吸器学会、日本ワクチン学会)は、2025年9月に発表した見解で、65歳以上の高齢者における重症化・死亡リスクは依然として高いこと、そして免疫を逃れる変異が継続していることから2025年度の定期接種を強く推奨しています。佐藤先生も、ワクチン接種は特に高齢者の重症化を防ぐ効果が明確であり、ワクチン未接種者が重症患者の大多数を占めるという研究報告を踏まえて接種を促しています。

さらに、新型コロナに罹患した場合の後遺症リスクについても言及があり、10人に1人に後遺症が出るという報告を紹介し、ワクチン接種が後遺症の発現を低減する可能性を持つというデータを示しています。このため高齢者のみならず若年層に対しても接種推奨の根拠があるとしています。

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治療薬の現状とワクチンの重要性

現在、日本で販売されている新型コロナの抗ウイルス薬としては「パキロビッドパック」「ラゲブリオ」「ゾコーバ」の3種類が紹介されています。佐藤先生は、パキロビッドパックとラゲブリオは重症化リスクを低減させる効果や感染を広げにくくする効果があると述べています。また、パキロビッドパックとゾコーバは症状の早期改善にも寄与すると説明しています。

ただし、いずれの治療薬も国からの補助が終了しており薬価が高額であるため、簡単に処方できる薬ではありません。こうした事情からも、治療薬に頼る前にワクチンでの予防を優先すること、そして発熱や倦怠感など症状が出た場合は早期に医療機関を受診して早期診断・早期治療を行うことが重要だと強調しています。

  • 治療薬(日本で販売):パキロビッドパック、ラゲブリオ、ゾコーバ
  • 治療薬の特性:パキロビッドパック・ラゲブリオは重症化予防や感染拡大防止効果、パキロビッドパック・ゾコーバは症状早期改善に寄与
  • 薬価と補助:国の補助は終了しており、高額である点に注意
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感染対策と調査結果のまとめ

感染症対策として佐藤先生は、ワクチン接種の推奨に加え、基本的な感染防止策の徹底を訴えています。外出時のマスク着用、手洗い、室内の換気、体調不良時の安静など、古典的な対策が有効であると述べています。

また、報道や自治体の広報が減少することで認知が低下し、接種率も低下するという負の連鎖に警鐘を鳴らしています。国の助成が終了したことで自治体ごとの周知・助成の差が生じる現状は、地域格差として住民の負担に直結している点が明確になりました。

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参考データと公的見解

調査の結果は以下の数値から成り立っています。年間の死亡数に関しては、厚生労働省の人口動態統計を引用し、2024年の新型コロナによる死亡数は35,865人で、同年のインフルエンザ死亡数(2,855人)を大きく上回っています。新型コロナによる死因順位は2023年から引き続き第8位となっています。

また、学会の見解資料(日本感染症学会ほか3学会)では高齢者のリスクが強調され、2025年10月から始まる定期接種の実施を強く推奨しています。関連資料の公表は2025年9月となっています。

最終まとめ(表)

項目 内容
プレスリリース発表者 ヒューマン・データ・ラボラトリ株式会社(マイライフニュース運営)
発表日時 2025年12月16日 11時00分
定期接種実施期間(原則) 2025年10月1日~2026年3月31日(自治体により異なる場合あり)
認知率(2024年度) 60.3%
認知率(2025年度) 29.5%(※調査対象:65歳以上 n=2,500、実施時期:2025年1月10日~12日、2025年9月26日~29日)
自己負担額の対象自治体数 人口5万人以上の549自治体
最高自己負担額 茨城県笠間市 13,600円
その他高額自治体 千葉県君津市 13,200円、埼玉県東松山市 13,000円
無償実施の自治体(人口5万以上の区) 東京都:千代田区、港区、台東区、渋谷区、足立区、葛飾区(無償)
平均自己負担額 6,248円
対象者(定期接種) 65歳以上、60~64歳で重度の心臓・腎臓・呼吸器機能障害やHIVなどで日常生活が困難な方
治療薬(国内販売) パキロビッドパック、ラゲブリオ、ゾコーバ(いずれも国の補助は終了し薬価が高額)
公的見解 日本感染症学会・日本呼吸器学会・日本ワクチン学会は2025年度定期接種を強く推奨(2025年9月公表)
関連データ(死亡数) 2024年 新型コロナ死亡数 35,865人、インフルエンザ死亡数 2,855人(厚生労働省 人口動態統計)

本稿では、認知率の低下、自治体間の自己負担差、専門医の指摘する早期診断・治療の重要性、そしてワクチンと治療薬の現状を整理して伝えました。国の助成終了に伴う自治体ごとの対応の違いは住民の負担や接種率に直結する重要な問題であり、各地域での情報提供の在り方と医療体制の整備が今後の注目点となります。