お盆が7月・8月・旧暦に分かれる理由と地域一覧:2025年目安と準備
ベストカレンダー編集部
2025年08月13日 00時18分
お盆の時期が地域で違うのはどういうことか:全体像と分類
お盆という行事の基本と三つの時期分類
お盆は先祖の霊を迎え、もてなして送り出す日本の夏の重要な年中行事です。仏教の盂蘭盆会(うらぼんえ)と、日本古来の祖霊信仰や道教・儒教の影響が混ざり合って現在の形になりました。時期については地域差があり、おおむね次の三分類で説明されます:
- 新暦7月盆(7月13日~16日を中心):都市部を中心に見られる。
- 新暦8月盆(8月13日~16日、いわゆる月遅れ盆):全国的にもっとも多いパターンで、企業等の休暇とも一致しやすい。
- 旧暦盆(旧暦7月15日を中心):沖縄や奄美など、旧暦に沿って年によって時期が変動する地域。
これらの違いは暦の採用や生活様式の違いに由来しますが、行事の趣旨自体はどの地域でも「先祖供養」「帰省を軸とした家族の再会」で共通しています。
なぜ地域で「ずれ」が生じたのか — 明治の改暦と生活事情
1872年(明治5年)の改暦により太陰太陽暦(旧暦)から太陽暦(新暦/グレゴリオ暦)へ変わったことが直接の起点です。旧暦の7月15日が新暦に移すと日付がずれますが、各地域の反応は異なりました。
具体的には、行政の目が届きやすい都市部(とくに東京周辺)は新暦に合わせることが比較的受け入れられ、新暦7月15日をお盆とした地域が残りました。一方、農業や漁業の繁忙期と重なる地域では季節感が重要であったため、旧来の時期感覚を重視してお盆を1か月遅らせて新暦8月15日(=月遅れ盆)を採用する流れが広まりました。
さらに、沖縄などでは旧暦を重視する文化が色濃く残り、現在も旧暦でお盆を行う地域があり、結果的に3つの時期が併存することになりました。
2025年(具体例)
主要な流通業者や仏具店の情報を合わせると、2025年は次のように示されます。新盆(7月)=7月13日~16日、旧盆(8月)=8月13日~16日が一般的な目安です。なお旧暦盆は年によって変動し、沖縄では8月中旬~9月上旬になる年もあります。
出典や日程の詳細については参考リンクをご参照ください(例:日比谷花壇、はせがわ)。
地域ごとの事情と具体例:どこがいつ行うのか
東京・関東(都市部)の「7月盆」傾向と例外
東京の中心部や横浜の旧市街地、静岡の旧市街地、金沢の旧市街地、函館の一部など、都市部では比較的新暦7月盆が見られます。これは明治期に新暦採用が徹底されたことの名残とされています。
ただし、東京都内でも多摩地域などは異なる日取りを採る場所があるなど、市内での混在例もあります。たとえば多摩の一部では7月末や8月初めに行う地区もあるため、同一市内でも日程が分かれることがあります(例:7月31日〜8月2日など)。
- 代表例:東京都心(7月13日~16日を中心)
- 例外:東京都多摩地区の一部(7月下旬~8月上旬)
全国的に多い「8月盆(月遅れ)」の実情
日本の大半の地域は新暦8月13日~16日をお盆とする「月遅れ盆」です。企業の夏季休暇や学校の夏休みと重なりやすく、この時期に帰省・法要を行う家庭が多いのが特徴です。
関西地方、北陸・東北の多く、北陸の一部、九州の多くなどがここに含まれます。京都の五山送り火など地域ごとの歴史的行事も8月中旬に集中している例が多く、観光行事としても大規模に行われます。
旧暦盆を守る地域:沖縄・奄美とその文化的重要性
沖縄や奄美諸島では、旧暦の7月に行うお盆(シチグヮチなど)が今も強く残っており、年によっては9月にずれ込むこともあります。旧暦は季節感と結びつきやすく、地域文化や祭礼行事が旧暦を基準に運営されていることが理由です。
これらの地域では、旧暦のお盆に合わせて独自の行事(祖霊を家に迎える方法、地域の舞踊、食文化)などが今に受け継がれており、内地(本州)と異なる供養の仕方が見られます。旧暦盆の日程は毎年変動します(例:2025年は9月4日~9月6日となる年もある)ので、現地の発表を確認することが重要です(出典:イーフローラ、ライフドット)。
同一市町村での混在や特殊日取りの実例
地域差は都道府県単位ではなくさらに細かく、同一市内で7月盆と8月盆が混在するケースが珍しくありません。たとえば金沢市旧市街は7月盆の一方、市の他の地域は8月盆という具合です。
また、養蚕や農業の歴史的事情により独自の日取りを採用している地域(例:養蚕の休閑期に合わせて8月1日前後に行う地区)もあります。こうした例は慣習が暮らしに密着しているため、現地の慣行に従うことが基本です(参考:Wikipedia日本語版「お盆」)。
生活面・習俗面の違いと実務的アドバイス
迎え火・送り火、盆提灯、精霊馬などの伝統行事
お盆では玄関先やお墓で迎え火を焚き、最終日に送り火を行う習慣が広く見られます。迎え火は霊が迷わないようにする意味、送り火はお見送りの意味合いを持ちます。近年はマンションなど火の取り扱いが制約される住宅形態も多く、提灯や電灯で代用するケースが増えています。
また、ナスとキュウリを牛馬に見立てた「精霊馬(しょうりょううま)」、盆提灯、盆棚(精霊棚)などの飾りつけは地域差はあるものの共通して行われることが多いです。精霊馬は「行きは早く帰りはゆっくり」という意味を込めています。
- 精霊馬の意味
- キュウリ=馬(行き)、ナス=牛(帰り)を象徴し、魂の往来を助けるとされる。
- 盆提灯の役割
- 門先や仏壇に灯すことで先祖の滞在を示す。新盆では白無地の提灯を用いる地域もある。
新盆(初盆)に特有の慣習と贈り物
亡くなられてから最初に迎えるお盆を「初盆(新盆)」と呼び、特別な供養を行います。一般的に親しい親族や縁者から盆提灯や供花、お供えを贈る慣習があります。
地域によっては絵柄入りの盆提灯を贈る習慣が強いところや、近年では「提灯代」を包む(現金を渡す)形が一般化しているケースもあります。金額や品目は地域慣習と親族間の合意によりますので、事前の確認が大切です(参考:はせがわの解説)。
仕事・銀行・交通など実務面での注意点
お盆は法定の祝日ではないため、銀行の窓口や役所などは平日であれば原則通常営業です。ただし、企業が夏季休暇としてお盆期間を休業とすることが多く、サービス提供や来院・手続き等は事前確認が必要です。
交通機関は混雑に応じた臨時ダイヤや増便が行われる場合、あるいは帰省ラッシュで通常より遅延が生じる場合があります。病院の休診や公共施設の閉鎖もあるため、帰省や法要の予定は早めに手配・確認しておくのが安心です。
お墓参りに行けない場合や遠隔地での供養の方法
お盆期間中にお墓参りが難しい場合は、自宅の仏壇をきちんと整えて線香を上げる、写真に手を合わせるなどして供養することが推奨されます。お墓の清掃や後日のお参りで補うことも問題ありません。
近年は遠隔地向けの代行墓参サービスやオンライン法要なども出てきました。物理的にお参りできない事情がある場合は、お寺や霊園、葬儀社に相談すると代替手段の提案を受けられます。
更に深掘り:由来や比較文化、現代への適応(長文解説)
お盆の起源と宗教・思想の混淆
お盆の起源は仏教経典の盂蘭盆会に由来しますが、日本に入ってからは中国大陸経由の道教や儒教の習俗、さらに日本古来の祖霊信仰が重なり合って独特な形になりました。盂蘭盆会で説かれるエピソード(目連尊者とその母の救済)は教理的な核ですが、一般庶民の習俗として定着する中で季節行事や農作業の区切りと結びつき、地域ごとの特色を帯びるようになりました。
また、盆踊りや灯籠流し、五山送り火などは供養行事であると同時に、地域コミュニティの結束や娯楽的側面も持ちます。戦後の都市化や移動手段の発達により帰省という行為自体が社会的習慣として強まり、現代では家族再会の時期としての側面も大きくなりました。
他地域・他国の類似行事との比較
東アジアにも祖先供養の行事は多数あります。中国の中元(鬼月)、ベトナムの中元、韓国の百中など、似た時期に死者や先祖に供物を捧げる文化があり、道教的な「地獄の蓋が開く」思想など共通点が見られます。
しかし日本の場合は仏教(盂蘭盆)と土着の祖霊信仰が融合している点や、地域ごとの民俗(精霊棚、精霊馬、盆踊りの様式など)が多様である点が特徴です。沖縄の旧暦盆のように、暦の扱い自体を変えずに風習を守る地域もあり、多様性が強いことが際立ちます。
現代化にともなう変化:マンション生活、オンライン法要、少子化の影響
近年はマンションや都市部での一人暮らしが増え、迎え火や送り火のような火を使う行事が実施しにくくなりました。そのため電灯や提灯の利用、あるいは省エネ・安全に配慮した代替行為が普及しています。
また、少子化や家族分散が進む中で、墓じまいの相談や永代供養の選択肢が増えています。遠隔地にいる家族向けにはオンライン法要や写真を用いた遠隔供養サービス、墓参代行などのサービスも一般化しており、伝統と現代生活の接点が広がっています(参考:ライフドットの解説)。
まとめと実用チェックリスト:知っておきたいポイントを表に整理
よくある質問への簡潔な回答
Q:自分の地域がいつお盆か分からない場合は?
A:お寺や近隣の自治会、親戚に確認するのが最も確実です。市役所の地域情報や地元の寺院のウェブサイトにも掲載されていることがあります。
Q:初盆の贈り物は何を選べば良い?
A:地域慣習によりますが、盆提灯、供花、線香、果物や菓子などが一般的です。絵柄入り提灯や提灯代を贈る慣習がある地域もありますので事前に確認を。
準備チェックリスト(実用)
- 日程確認:お寺・自治会・親族にいつ行うか確認する。
- 供物準備:線香、供花、果物、盆提灯、精霊馬など。
- 交通・宿泊手配:帰省ラッシュや宿の混雑を想定して早めに予約。
- 仕事の調整:有給取得や職場の夏季休暇日程を確認。
- 遠隔対応:お墓参りが難しい場合は代行サービスやオンライン法要を検討。
参考情報と出典(抜粋)
本稿では以下の情報を参考にしました。各ページには地域別の詳細やお盆用品の説明があり、実務的な手配や慣習確認に便利です。
- 日比谷花壇:お盆の時期と新盆・旧盆の違いについて
- はせがわ:2025年のお盆期間と地域別日程
- イーフローラ:7月盆・8月盆・旧暦盆の解説
- ライフドット:お盆が3つに分かれた背景と地域傾向
- Wikipedia「お盆」:歴史的・文化的な概説
最終まとめ表
以下の表は、本記事で触れた主要点を整理したものです。地域や状況により例外が多いため、あくまで代表的な傾向としてご参照ください。
| 分類 | 代表的な時期 | 代表地域・例 | 特徴・備考 |
|---|---|---|---|
| 新暦7月盆(7月盆) | 7月13日~16日(概ね) | 東京中心部、横浜旧市街地、函館・金沢(旧市街)などの一部 | 明治期の新暦採用により都市部で定着。多摩など例外あり。 |
| 新暦8月盆(月遅れ盆) | 8月13日~16日(一般的) | 日本全国の多くの地域、企業休暇は通常これに合わせる | もっとも普及した形。帰省・観光行事と重なる。 |
| 旧暦盆 | 旧暦の7月13日~15日(年ごとに変動) | 沖縄、奄美、南西諸島の一部 | 旧暦に基づくため年によって月が8月~9月にずれる。 |
| 特殊・局地例 | 例:7月下旬~8月上旬(多摩など) | 養蚕地域や旧市街での混在例あり | 地域ごとの暮らしや歴史が背景。確認が必須。 |
以上の表は、地域差を俯瞰的に理解するための整理です。実際に法要や帰省を計画する際は、まずはお寺・自治会・親族など現地情報を確認し、移動や宿泊の予約、贈り物の手配を早めに行うことをおすすめします。
参考情報の詳細や慣習の地域差については、上に挙げた各社の解説ページや地域のお寺の案内を合わせてご覧ください。特に初盆の取り扱いや提灯・供物の習慣は地域で大きく変わるため、事前確認が重要です。
(参考:日比谷花壇、はせがわ、イーフローラ、ライフドット、Wikipediaなど)