万博の紙とデジタルスタンプ、仕組み・注意点と活用法ガイド

万博の紙とデジタルスタンプ、仕組み・注意点と活用法ガイド
ミャクーン!って何?
ミャクーン!はEXPO2025公式のデジタルスタンプ(NFT)の名称で、万博IDとEXPO2025デジタルウォレットを連携してバーチャル会場や会場内のQRで取得する仕組み。SBIが運用し、譲渡不可や著作権の留保など運用制約がある点に注意。
デジタルスタンプは本当にずっと残るの?
付与されたNFTはSBI管理のウォレットで保管され、原則として外部への移転や換金は不可。会期後に閲覧制限がかかる可能性があるため、スクリーンショット保存や公式の継続利用案内を確認しておくことが推奨される。

万博での“集める楽しみ”を再定義する:紙とデジタルの併走

伝統的な紙のスタンプラリーの魅力と基本

万博に長年親しまれてきたのは、やはりアナログな紙のスタンプラリーです。会場で配られる公式スタンプパスポートは、手に取れる思い出としての価値が高く、押印そのものの偶発性や発見の喜びが魅力です。公式パスポートは縦125mm×横88mm、72ページ構成で、多数のスタンプを集められる仕様になっています(販売価格:1,100円・税込)。

紙媒体の良さは参加のハードルが低いことにもあります。スマートフォンやアプリを持たない方、高齢者、子ども連れの家族も気軽に参加でき、インクと紙で視覚的に達成感を得られます。重ね押しスタンプなど、会期限定の遊び要素も用意されており、順序どおりに押すと一枚の完成図が現れる仕組みは、収集欲を刺激します。

デジタルスタンプの台頭とハイブリッド体験

一方で、EXPO2025ではデジタル体験が大きく拡張されています。公式のデジタルスタンプラリーでは、バーチャル会場や会場内のQRコード/ワープポイントを通じてNFT形式のデジタルスタンプ(通称「ミャクーン!」)を取得できます。これにより現地にいない人でも、バーチャルで参加しコレクションが可能です。

こうしたハイブリッドは「いつでもどこでも万博を体験できる」インクルーシブな取り組みを実現します。リアルな紙パスポートとデジタルNFTは互いに補完する関係にあり、来場者は好みに応じて両方の体験を選べます。公式が用意する複数のアプリ(EXPO2025デジタルウォレット、EXPO2025パーソナルエージェント)を使い分けることで、クエスト形式や報酬連動の楽しみも増えます。

具体的に何がどこで手に入るのか

紙の公式スタンプパスポートや専用ネックストラップクリアケースは、会場内オフィシャルストアや会場外の主要取扱店舗、また公式オンラインストアで購入が可能です。設置スタンプは200箇所以上と大規模で、ゾーンごとに整理されているため集めやすく設計されています。

デジタル側では、バーチャル会場の螺旋ワープポイントに触れることで訪問履歴が残り、「ミャクーン!」の獲得条件を満たすとEXPO2025デジタルウォレット経由でNFTスタンプが付与されます。バーチャル/リアル双方での取得方法は公式ページ(例:公式デジタルスタンプラリー)で詳細が公開されています。

デジタルスタンプ(NFT)をめぐる技術・運用・注意点

ミャクーン!の仕組みと取得条件

ミャクーン!はEXPO2025協会の公式デジタルスタンプラリーのNFT名称で、SBIホールディングスが実際のサービス提供やウォレット管理を担っています。バーチャル会場での訪問履歴や、会場内のQRコード読み取りによる取得が主なルートです。アプリ連携(万博IDとEXPO2025デジタルウォレットの紐付け)や所定の訪問判定を満たすことで付与されます。

付与の流れは大きく次の通りです:万博IDでログイン → デジタルウォレットアプリに連携 → バーチャル会場のワープポイントに触れる/現地のQRを読み取る → スタンプ一覧ページで該当のNFTを受け取る。公式サイトやFAQで詳細条件や不具合時の対処法が記載されています(例:デジタルスタンプ一覧)。

権利・保管・譲渡性に関する注意

SBIの案内によれば、付与されるNFTはSBIホールディングスが管理するウォレットに保管される仕様であり、ユーザーが自身の外部ウォレットへ自由に移転するものではありません。加えて、NFTに紐づく画像データの著作権はSBIに留保され、ユーザーに移転しない点も明確にされています。

さらに、ミャクーン!は第三者への譲渡や換金ができない仕様になっており、会期終了後はアプリのサービス終了に伴って閲覧が制限される可能性があります。SBIグループは閉幕後の継続閲覧に向けた対応を準備中で、別途案内される予定です。これらの制約は収集の記念性を優先する一方で、二次流通や商業化に関する懸念を低減する狙いがあります。

プライバシー・データ利用とVPIAによる可視化

ミャクーン!はVPIA(Value and Privacy Impact Assessment)の報告を公表しており、データ取得と利用目的、想定リスクへの対策などを第三者評価と共に提示しています。取得する主なデータはデジタルウォレットID、万博ID連携情報、各パビリオンへの訪問履歴等であり、これらはNFT付与やサービス改善に利用されます(出典:コミュニケーションサイトのVPIAページ)。

VPIAや第三者アセスメントには消費者・倫理・技術の専門家が参加しており、説明の分かりやすさやプライバシー配慮について総評が示されています。実運用では暗号化、不正アクセス防止、獲得条件の明示などの対策が取られていると報告されていますが、利用者は個別の同意設定や連携情報の確認を怠らないことが重要です(参考:ミャクーン!VPIAページ)。

セキュリティとUXの課題・運用上の配慮

デジタル方式の課題として、スマホを持たない層の排除、通信障害や電池切れ、操作の複雑さによる離脱が挙げられます。これに対して運営側はオフライン補助機能、会場スタッフによるサポート、紙の代替オプションやFAQの充実を進めることが望まれます。

また、個人情報保護の観点では利用目的の透明化、収集データの最小化、利用後の適切な破棄や移行策の提示が求められます。万博のような大規模イベントではリアルタイムの混雑緩和やマーケティングにもデータが活用され得るため、利用者が何に同意しているかを理解できるUI設計が重要です。

参加者別に見る楽しみ方と実践ガイド

家族連れ・小さな子どもと楽しむ方法

家族で行く場合、紙のスタンプパスポートは子どもの飽きさせないツールになります。子ども用に目的地を絞ったミッションを作り、途中で休憩・食事スポットを組み合わせることで1日を通して無理なく周遊できます。重ね押しスタンプなどの完成体験は子どもの達成感に直結します。

デジタルを取り入れるなら、親がメインの端末でQR読み取りやワープポイント操作を行い、子どもは押印された紙を保持するなど役割分担するとスムーズです。体力配分やトイレ、授乳室の位置も事前に確認し、公式マップやパスポートに記載されたゾーン情報を活用しましょう。

コレクター・研究者向けの深堀りポイント

デジタルNFTを研究対象とする場合、獲得条件やメタデータの取り扱い、権利表記などを詳細に把握することが重要です。ミャクーン!のVPIAはデータ収集項目と利用目的が示されているため、学術的な解析や技術評価の第一資料として有用です。

コレクターは、会期中の限定デザイン(来場記念スタンプや期間限定の配布)を逃さないよう、公式情報やSNS、アプリ内のお知らせをこまめにチェックすることが求められます。集め方の戦略としては、重ね押しの6箇所やサテライト会場の9府県スタンプなど、達成難易度の高い目標を設定するのが効果的です。

海外からの観光客に向けたポイント

多言語対応の公式アプリは、言語の壁を下げる重要な役割を担います。海外参加者はデジタルスタンプを通して自国にいながらバーチャルで参加できるうえ、物理会場への誘導策としても機能します。入場チケットは電子化されているため、スマホ管理に慣れている旅行者には比較的参加しやすい環境です。

ただし、通信料やローミング設定は注意が必要です。公衆Wi-Fiの整備状況や会場外拠点でのサテライト設置も確認しておきましょう。旅行スケジュールに合わせ、会期限定のイベントやコラボスタンプ(例:Pokémon GOや大阪メトロのコラボ企画)を組み合わせることでより濃密な旅程を設計できます。

企業や自治体が活用する場合の設計例

自治体や観光事業者は、サテライト会場や地域コラボを通じて来訪者を誘導できます。9府県のサテライト配置例(滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、徳島、福井、三重)を活かし、地域の観光資源や店舗との連携企画を設計することで、万博の経済波及効果を地域へと拡大できます。

企業はプロモーションと還元施策を組み合わせることでブランド接点を強められます。デジタルスタンプをトリガーにしたクーポン配布、会場限定グッズの引換、来場体験をSNSで拡散するキャンペーンなど、リアルとデジタルを繋ぐ施策例は多岐にわたります。

実践的なトラブル対処、FAQ、未来への視点

よくあるトラブルとその対処法

代表的なトラブルは、アプリログインの失敗、万博ID連携の不備、訪問履歴が反映されないケース、通信障害、アプリ閲覧期限切れなどです。まずは公式FAQやアプリ内のヘルプを確認し、万博IDとデジタルウォレットの連携状態を再確認しましょう。

現地で訪問が反映されない場合は、QRコードの読み取り履歴やスクリーンショットを保存しておくと問い合わせ時に有利です。電池切れ対策としては携帯用バッテリーを携行し、会場の充電スポットやインフォメーションの位置を把握しておくと安心です。

参加前チェックリスト(短縮版)

参加前に確認すべきポイントを簡潔にまとめます。チケット(電子)/万博IDの用意、アプリ(EXPO2025デジタルウォレット、パーソナルエージェント)のインストール、会場マップ確認、バッテリー・通信手段の確保、紙パスポート購入の有無、公式情報の最新更新確認などを推奨します。

また、VPIAのような説明文書はデータ利用の透明化に寄与します。個人情報の取り扱いに不安がある場合は、連携項目の同意設定を見直し、必要最低限の情報共有に留める運用が可能か検討すると良いでしょう。

将来展望:万博後のデジタル資産と継続利用

閉幕後のデジタル資産の取り扱いは重要な課題です。現在SBIは閉幕後もNFTを閲覧できるようSBI VCトレードを介した継続利用の準備を進めていると明記していますが、最終的な閲覧方法や保存の可否、将来の移転性などは運用方針次第です。

長期的に見ると、イベント発行の“非譲渡NFT”はコレクションとしての価値や記念性を保持しつつも、ブロックチェーン上での自律的な流通を制限することで利用者保護を図る試みです。将来、参加者が自分の体験を恒久的に保存・閲覧できるインフラ整備が進めば、こうした取り組みはさらに普及するでしょう。

関連コラボや周遊施策の事例

EXPO2025期間中は、Pokémon GOや大阪メトロ、Study(芸術祭)など多様なコラボレーションが行われています。これらはゲーム性や地元交通との連携を通じ、来訪者の関心を引き立てる効果があります。例えば、Osaka Metroの「桃太郎電鉄」コラボでは駅を巡ることでスタンプが貯まり抽選特典があるなど、既存のプラットフォームを起点にした集客施策が活性化しています。

地域連携では「まちごと万博」のように、まち全体を万博の会場化する取り組みが注目されます。中之島や各地のイベントを組み合わせることで来訪者の滞在時間延長や経済効果増加が期待されています(参考:ロスゼロのコラム)。

まとめ:要点の整理と行動プラン

ここまで述べてきたポイントを最後に整理し、これから参加する方、関係者、研究者が参照しやすい形にまとめます。下の表は、本記事で触れた主な要素を簡潔に比較・整理したものです。表の下には短い補足を付します。

項目 紙のスタンプラリー デジタルスタンプ(ミャクーン!)
入手方法 会場/店舗でパスポート購入(1,100円) EXPO2025デジタルウォレット/バーチャル会場で獲得
参加に必要なもの 紙パスポート、スタンプ台 万博ID、デジタルウォレットアプリ、スマホ
利点 誰でも参加可、物理的な思い出、子ども向け いつでも参加可、希少性(NFT)、データ活用)
制約/注意点 紛失・破損の可能性、設置時間要確認 譲渡不可、SBI管理、会期後の閲覧制限の可能性
運用主体 EXPO2025協会(公式ストア等) SBIホールディングス(サービス提供)、EXPO2025協会(主催)

補足:公式情報の一次ソースは以下を参照しています。デジタルスタンプの詳しい運用やVPIAレポートについては公式のコミュニケーションページ(ミャクーン!VPIA)が有益です。紙のスタンプラリーや設置場所、パスポート販売情報はEXPO2025公式スタンプラリーページ(公式スタンプラリー)をご確認ください。デジタルウォレット連携や注意点はSBIの案内(デジタルウォレット/スタンプ一覧)に詳細があります。

最後に一言。万博のスタンプラリーは、単なる収集遊びを超え、地域周遊の促進やデジタル技術の普及、来場者体験の深化に寄与する重要な仕組みです。紙とデジタル、それぞれの長所を理解し、自分に合った参加方法で万博をより豊かに楽しんでください。

参照・引用元:EXPO2025公式サイト、公式デジタルスタンプラリー案内、SBIホールディングスのミャクーン!サービス説明、VPIA報告(コミュニケーションサイト)、ロスゼロによる解説記事。