ワークマン遮熱XShelterが涼しい理由と実践的な使い方
ベストカレンダー編集部
2025年08月28日 02時10分
暑さを“着て防ぐ”という発想:素材と機能から見る最新ウェアの全体像
なぜ「着る」ことで暑さが軽くなるのか
従来の暑さ対策は「遮光(つばの広い帽子や日傘)」「通気(風を通す衣服)」や「冷却(保冷剤・扇風機)」といった外部的手段が中心でした。しかし近年は「衣服自体が熱の流れや汗の気化をコントロールする」ことで、着用した状態のままより快適に過ごせる技術が進化しています。ワークマンのXShelter(エックスシェルター)シリーズはまさにこの概念を具現化した例で、外側と内側で異なる機能を担う特殊な二重構造の糸と生地設計により、身体表面の熱負荷を低減することを目標に設計されています。
具体的には、外部からの輻射熱(太陽や地面からの赤外線)を軽減する遮熱機能、紫外線(UV)をカットするUVガード機能、そして汗を素早く外層へ移動させることで気化熱を効率的に利用して生地温度を下げる気化冷却機能などが組み合わさり、単に「薄い」「風通しが良い」だけでは得られない冷感を生み出します。これら複合機能により、“着ている方が涼しい”という体感が実現されているのです。
XShelter素材の技術要素:二種の糸と14機能の組み合わせ
XShelterは2種類の異なる糸を表裏で使い分けることで、機能を分担させた特殊生地構造を採用しています。表側は特殊酸化チタン融合ポリエステル糸で、光エネルギー(特に近赤外線)を反射・散逸させることができ、日傘と同等の暑熱軽減効果を狙います。一方、裏側は多層疎水性ポリプロピレン糸で、肌面の水分を含みにくく、拡散して外層へ逃がすことで断熱と気化冷却を両立します。
製品説明や公表情報では「14の暑熱リスク軽減機能」を掲げています。主なものを挙げると、遮熱率/UVカット/超速乾/気化冷却/接触冷感/通気性/超軽量/薄手設計/肌離れ(ベタつき防止)/伸縮性/ベンチレーション機能/撥水・透湿バランスなどです。これらが重層的に働くことで、炎天下や湿度の高い現場でも比較的快適に過ごせる設計になっています。
専門家と共同開発した背景と検証手法
開発はワークマン単独ではなく、災害・救護の専門性を持つ機関と連携して進められました。日本赤十字看護大学附属災害救護研究所などの専門家の知見を取り入れ、災害時の長時間着用や救護活動に適した仕様を検討しています。これは単に日常の暑さ対策のみならず、防災備蓄としての衣類活用を視野に入れたポイントです。
検証面では、40℃の暑熱ルームを用いた体験実験が行われ、実際に着用しての温熱感やサーモグラフィー測定による温度差の確認などが公開されています(詳しくは後述の参照リンクを参照)。こうした再現性のある環境での評価は、製品の有効性を客観的に示す一助となっています。
現場で役立つアイテム群と具体的な使い方
ラインナップと価格帯(実物例)
XShelterシリーズはポロシャツ、フーディー、ショートパンツ、クライミングパンツ、ハット・キャップ、キッズ用フーディーなど幅広いラインナップで展開されています。価格帯は980円(キャップ)〜2,900円(フーディーなど)と、手に取りやすい設定です。ワークマン公式ストアの表示価格は、普段使いと作業着の両面で市場競争力を持たせる意図が見られます。
購入検討時は用途別に選ぶのが有効です。たとえば長時間屋外で作業する場合はフーディー+長めのパンツで肌面を保護するのが基本。短時間の外出やスポーツ利用なら半袖ポロ+ショートパンツの組み合わせで通気と冷却を優先するなど、活動内容に応じた選択が重要です。
実際の着用体験と応用テクニック
報道された体験会では、40℃環境でフーディーを着用したところ、腕や背中の冷感が明確に得られたとされています。特に内側に水を霧吹きで噴霧すると、その部分だけが気化冷却で冷たくなり、濡れたタオルに触れた時のような冷感を感じられたというレポートがあります。つまり「汗をかいてから」ではなく「事前に内側を少し湿らせておく」という使い方も、場合によっては有効です(ただし、濡れすぎは体温低下や不快感を招くため注意が必要)。
また、フードなしのジャケットやサイドファスナー付きモデルでは、ファスナーを部分的に開けてベンチレーション(風通し)を作ることで、外気を利用した換気と内部の気化冷却を同時に促進できます。動的な作業では、ストレッチ性のある素材が運動性を損なわない点も評価されています。
ペルチェベストや暑熱バンドとの連携利用
ワークマンは同時期に、より積極的に体温を下げる電動デバイス「ペルチェベスト PRO2」や、熱中症リスクを予測して知らせる「暑熱バンド」も発表しました。ペルチェベストはペルチェ素子により局所冷却(最大-28℃に相当する表面温度)を行う製品で、冷却プレート数が増えたことで上半身の冷却効果が高まりました。一方、暑熱バンドは深部体温の上昇をアルゴリズムで推定し、LED点灯や振動で注意・警告を出します。
これらとXShelterを併用すると、「衣服の受動的冷却+機器の能動冷却+デバイスによるリスク監視」という三層構造が構築できます。現場作業での例を挙げれば、真夏の屋外工事時にペルチェベストを下着の上に装着し、その外側にXShelterフーディーを羽織ることで、ペルチェの冷気を逃がしにくくしつつ、外部輻射熱からの保護と気化冷却を同時に得るといった運用が考えられます。
選び方、手入れ、安全面、そして購入後の活用法
用途別の選び方:仕事・レジャー・防災
選ぶ際は、第一に用途(作業種別・滞在時間・運動量)を明確にします。長時間の立ち仕事や移動の少ない作業では通気性よりも遮熱と気化冷却の持続性が重要です。一方、激しく身体を動かす作業では速乾性と伸縮性、ベンチレーションの確保が重要になります。
防災用途では、軽量で折りたたみやすく収納場所を取らないモデルが有利です。XShelterは軽量性と薄さを強みとしており、避難用の備蓄衣類としても実用的です。キッズサイズもラインナップされているため、家族全員分を揃えやすい点もメリットです。
洗濯や手入れのポイント
機能性素材は性能を長持ちさせるための取り扱いが重要です。XShelter製品は洗濯ネットの使用が推奨されており、強い漂白剤や高温乾燥は避けるべきです。ポリエステルとポリプロピレン混紡のため、完全に高温で縮む心配は少ないですが、柔軟剤の過度な使用は吸水性や気化特性に影響を与える可能性があるため控えめにしてください。
また、表面の遮熱・UV機能は使用や洗濯を重ねることで徐々に劣化するため、長期間同じ性能を期待する場合は定期的な買い替えや、日常的なメンテナンス(汚れの早期除去)を心がけると良いでしょう。
注意点と安全性:誤解しやすいポイント
重要な注意点は、「涼しい = 熱中症にならない」ではないという点です。たとえ衣服が体感温度を下げても、高温多湿な環境や長時間の労働、脱水の進行を止められるわけではありません。こまめな水分補給、休憩、そして暑熱バンドのようなリスク監視機器の活用が必要です。
また、過度に濡らしてしまうと体温が奪われ過ぎるリスクや、低体温症の危険性がある場面もあります。特に夜間や風の強い環境では注意し、状況に応じて被服の調整を行ってください。
購入のコツと在庫確認の手順
ワークマンのオンラインストアでは各商品の店舗在庫確認や取り置き依頼が可能です。人気アイテムは季節により品切れになることがあるため、実店舗での試着や、オンラインのレビュー(実際の使用感が書かれていることが多い)を参考にするのがおすすめです。
また、コーディネートとしては、暑い日中はXShelterの上に薄手のシェルを重ねる、夕方は内部に保温レイヤー(薄手のインナー)を追加するなどのレイヤード戦略が有効です。
追加で知っておきたい関連情報と総合的な活用例
他の冷感・遮熱技術との比較
市場にはさまざまな冷感技術があります。接触冷感素材、ファン内蔵のファンウェア、保冷剤を入れるポケット付きの服、そして電動ペルチェ式のベストといったものです。XShelterの特徴は能動的な冷却装置を必要とせず、素材の仕組みだけで持続的な気化冷却と遮熱を両立する点にあります。電動式は強力な冷却を期待できますが、バッテリー管理や重量、動作音といった運用上の制約が生じます。
選択は「どの程度の冷却を必要とするか」「携行性」「連続稼働時間」「費用対効果」を判断軸にすると良いでしょう。例えば短期の強い冷却が重要な作業にはペルチェ系、長時間の軽減と携行性重視にはXShelter系が適している場合が多いです。
実務や日常での具体的な活用シーン
以下は現実的な活用例です。各シーンでどのように使うかを具体的に想定することで、製品選びと運用がより現実的になります。
- 建設現場:XShelterフーディー+ペルチェベスト(局所冷却)+暑熱バンドで作業者の安全管理。
- 配送・物流:薄手のXShelterポロ+通気性の良いパンツで動きやすさを確保しつつ熱負荷を軽減。
- アウトドア・観戦:帽子やキャップをXShelter素材にし、内側に軽く水を含ませておくと長時間の暑さしのぎになる。
- 災害時備蓄:軽量で折りたためるXShelterは避難用リュックに入れておくと有効(キッズサイズの用意も推奨)。
参考情報(ソース)
詳しい製品仕様やラインナップはワークマン公式商品ページに掲載されています。公式のXShelter製品情報はこちら:
XShelter 暑熱軽減ウェア(ワークマン公式)。
また、体験会や技術解説に関しては、Impressのレポートが具体的な体験記やペルチェベストとの併用例を詳述しています:
ワークマンの着たほうが涼しい「暑熱軽減ウェア」を体験してきた(Impress)。
参考:Impressの記事では40℃再現ルームでの体験結果や、XShelterの生地構造、ペルチェベストPRO2の冷却性能について実測に基づく記述がされています。
最後に:実践的なチェックリストと注意事項
購入前に確認すべきポイントをチェックリストとしてまとめます。これにより、実際の用途に最適な選択がしやすくなります。
- 主用途の確認(長時間作業/短時間外出/防災備蓄)
- サイズ感の確認(レイヤリングを考慮)
- 洗濯表示とメンテナンス方法の把握
- 併用を考える機器(ペルチェや暑熱バンド)の互換性・運用性
- レビューや店舗での試着で実際の着心地を確認
上記を踏まえて、利用場面ごとの最適解を選ぶことで、単に暑さを“我慢する”のではなく、テクノロジーと合理的な運用で暑熱リスクを下げることが可能です。
この記事の要点まとめ(表形式)
以下に、本記事で触れた主要ポイントを表に整理しました。購入や運用の参考にしてください。
| 項目 | 主な内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 素材構造 | 表:酸化チタン融合ポリエステル/裏:多層疎水ポリプロピレン | 表は遮熱・UV、裏は拡散・気化冷却を担当 |
| 代表的機能 | 遮熱・UVカット・気化冷却・超速乾・接触冷感など14機能 | 複合的に働くことで体感温度を低減 |
| 主な製品 | フーディー、ポロ、ショート/クライミングパンツ、帽子、キッズ等 | 価格帯:980円〜2,900円(2025年公表値) |
| 活用のコツ | 事前に内側を軽く湿らす/ファスナーでベンチレーションを作る | 濡らし過ぎは禁物。状況に合わせ調整を |
| 併用推奨 | ペルチェベスト(能動冷却)、暑熱バンド(リスク監視) | 三層構造で安全性と快適性を高める |
| 注意点 | 涼感は熱中症予防の全てではない。水分補給等が必須 | 気温・湿度・運動量の管理が重要 |
本稿では、XShelterの技術的背景、実際の製品ラインナップ、体験報告、他機器との併用法、選び方・手入れ・安全上の注意を幅広く解説しました。最新の暑熱対策は、衣類単体の性能だけでなく、運用方法や補助機器との組み合わせで最大効果を発揮します。用途に合わせた適切な選択と使い方で、夏の厳しい環境をより安全に、快適に乗り切ってください。