月遅れ盆迎え火 (年中行事 8月13日)
- 別名
- 盆迎え火、精霊迎え
- 実施日
- 8月13日夕刻(月遅れ盆)/7月13日夕刻(旧盆地域)
- 主な道具
- おがら(麻幹)、焙烙(素焼き皿)
- 年中行事として定着
- 江戸時代
- 関連行事
- 盆提灯、御招霊(おしょうれい)
- 対となる行事
- 送り火(8月16日)
「死者の霊は煙に乗ってやってくる」——迎え火に麻幹(おがら)が使われる理由は、この古代からの信仰にあります。麻の茎を乾燥させたおがらは清浄な植物とされ、その煙が浄土と現世をつなぐ道標になると考えられてきました。毎年8月13日の夕刻、日本各地の玄関先で小さな炎が揺れるのは、千年以上にわたって受け継がれてきた祖先迎えの作法です。
お盆の起源は仏教の盂蘭盆会(うらぼんえ)にさかのぼりますが、迎え火という習慣は日本固有の祖霊信仰と融合する形で育まれました。霊は自ら帰路を見つけられないという考えから、家の者が火を灯して道を照らす——この発想は農耕社会における共同体意識と深く結びついています。年中行事として広く定着したのは江戸時代とされますが、それ以前から各地に類似の慣行が存在していたことが文献から確認されています。
本来の日程は旧暦7月13日ですが、明治5年(1872年)の太陽暦導入にともない、現在は多くの地域で「月遅れ」の8月13日に行われます。東京など一部の都市部では旧暦に近い7月13日のまま続ける地域もあり、地域によって日程が異なるのはこの改暦の名残です。
作法は地域によって差があるものの、一般的には素焼きの皿「焙烙(ほうろく)」の上でおがらに火をつけ、夕暮れ時に玄関先や門口で焚きます。煙が立ち上るあいだ、家族は手を合わせて先祖の霊を迎え入れます。火が落ち着いたら、その炎を盆提灯のろうそくへ移すのが習わしとされています。
盆提灯は迎え火の変形ともいえる存在です。先祖の霊が迷わず帰ってこられるよう掲げる目印であり、同時に「霊がここに滞在している」ことを示すしるしでもあります。精霊棚(盆棚)とともに室内に置かれる提灯の灯りは、お盆の期間中、亡き人の気配を家のなかに宿らせる役割を担っています。地域によっては「御招霊(おしょうれい)」と呼ばれる行事のように、松明や篝火を用いて集落全体で霊を迎える大掛かりな形式が残っており、家庭の小さな炎から地域の祭事まで、迎え火はスケールを変えながらも「火で道を照らす」という本質を保ち続けています。
現代の都市生活では、マンションのベランダで行う代替方法や、盆提灯のみで迎え火を省略するケースも増えています。しかし形が変わっても、先祖の霊を家に招き入れるという意識は失われていません。8月13日の夕刻に炎を灯す行為は、生者と死者のあいだにある見えない距離を、確かに縮めようとする営みです。
8月13日の他の記念日
8月13日のカレンダー情報
8月の二十四節気・雑節
- 立秋(りっしゅう) 8月7日(金)
- 処暑(しょしょ) 8月23日(日)