プライバシーデー (記念日 9月28日)
- 判決日
- 1964年(昭和39年)9月28日
- 損害賠償額
- 80万円
- 原告
- 有田八郎(元外務大臣)
- 被告
- 三島由紀夫・新潮社
- 提訴年
- 1961年(昭和36年)
- 審理期間
- 約4年
損害賠償額は80万円。1964年(昭和39年)9月28日、東京地裁の判決文には「プライバシー権」という言葉が日本の司法史上初めて明記され、私生活の保護が法的権利として認められました。
事の発端は、1960年(昭和35年)に新潮社から刊行された三島由紀夫の長編小説『宴のあと』です。料亭の女将と元外務大臣の恋愛と結婚、そして政界進出の失敗を描いたこの作品は、発表直後から「実在の人物を描いたものではないか」との声が上がりました。モデルとされたのは、外務大臣や衆議院議員を歴任した政治家・有田八郎。有田はその翌年、三島由紀夫と新潮社を相手取り、プライバシーの侵害を理由として謝罪広告の掲載と損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしました。
裁判では「表現の自由」と「私生活をみだりに公開されない権利」という二つの価値がぶつかり合いました。三島側は小説としての創作性を主張しましたが、原告側は登場人物の設定や具体的なエピソードが実際の私生活に酷似していることを指摘しました。約4年に及ぶ審理の末、東京地裁は有田側の主張を認め、三島由紀夫に80万円の損害賠償支払いを命じる判決を下しました。
判決文の中で裁判所は、日本国憲法が依拠する個人の尊厳という思想を根拠に、「プライバシーの権利」を「私生活をみだりに公開されない法的保障ないし権利」として初めて実定法上の権利として位置づけました。この定義は、その後の日本におけるプライバシー法制の礎となり、現代の個人情報保護法やインターネット上の削除請求をめぐる議論にまで連なる法的概念の出発点となっています。
「宴のあと」事件は、文学と法律、表現の自由と個人の尊厳という普遍的なテーマを正面から問い直した裁判でもありました。小説の発表から60年以上が経過した今も、創作物のモデル問題やフィクションにおける実在人物の描写をめぐる議論は続いており、この裁判が示した問いの根深さを改めて感じさせます。9月28日が「プライバシーデー」として記念されているのは、その歴史的判決が刻まれた日付であり、権利意識の変遷を振り返る機会として意味を持ち続けています。
9月28日の他の記念日
9月28日のカレンダー情報
9月の二十四節気・雑節
- 白露(はくろ) 9月7日(月)
- 秋分(しゅうぶん) 9月23日(水)
- 秋の彼岸(ひがん)入り 9月20日(日)
- 二百十日(にひゃくとおか) 9月1日(火)
- 二百二十日(にひゃくはつか) 9月11日(金)
- 秋の社日(しゃにち) 9月23日(水)