ベストカレンダーのロゴ ベストカレンダー

ADRAS-J、世界初のデブリ接近撮影後に軌道降下開始

ADRAS-J軌道降下開始

開催日:3月25日

📅 カレンダーに追加:GoogleiPhone/Outlook

ADRAS-J軌道降下開始
ADRAS-Jって何したの?
ADRAS-Jはアストロスケールの商業デブリ除去実証衛星で、実物デブリへ接近して近距離撮影、50m・約15mまでの接近や周回観測などRPO技術を軌道上で実証しました。
運用終了ってどうなるの?
運用終了に向け軌道降下運用を開始し、今後高度を下げて5年以内に自然落下で大気圏再突入させて燃え尽きる計画です。ADRAS-J2は2027年度打上げ予定です。

日本発・世界初の接近撮影を果たしたADRAS-J、軌道降下運用を開始

持続可能な宇宙環境を目指す株式会社アストロスケールは、商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J(アドラス・ジェイ)」について、軌道上での運用終了に向けた軌道降下運用を開始したと、2026年3月25日 13時00分に公表しました。本衛星は、約1500日間の開発期間を経て打上げされ、軌道上で293日間にわたるミッションを実施しました。

ADRAS-Jは現在、5年以内に自然落下し再突入できる軌道へ高度を下げており、今後さらに軌道降下運用を継続し、最終的には大気圏に再突入して燃え尽きる計画です。今回の告知は運用終了に向けた計画開始の公表であり、同社はミッションの成果と運用経過を整理して発表しています。

宇宙ごみへの接近・撮影に成功し日本から世界初を成し遂げた人工衛星、運用終了へ 画像 2

実ミッションで示した到達点:接近、撮影、周回観測

ADRAS-Jは、JAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)の商業デブリ除去実証(CRD2)のフェーズⅠとして企画・開発された衛星で、RPO(ランデブ・近傍運用)技術の実証を目的としました。打上げは2024年2月で、以降、対象デブリに対する一連の近接運用および観測を実施しました。

対象は日本のロケット上段に相当する大型デブリで、サイズは全長約11m、直径約4m、重量は約3トンです。ADRAS-Jはこの非協力物体(接近や捕獲・ドッキングのための能力や機器を有さない物体)に対し、遠距離からの接近、近距離での撮影、50mでの定点・周回観測、15mまでの極近傍接近などを行い、複数回の近接アプローチに成功しました。

宇宙ごみへの接近・撮影に成功し日本から世界初を成し遂げた人工衛星、運用終了へ 画像 3

具体的な成果一覧

ミッションで確認された主な成果は次のとおりです。各項目は運用中の観測データと航法実績に基づいており、軌道上サービスとして必要とされるコア技術の検証につながるものです。

  • 遠方域の絶対航法(遠距離から対象を認識・位置特定)
  • 近傍域の相対航法(対象に対する高精度位置制御)
  • 複数回の近傍域到達(複数アプローチの実現)
  • 対象デブリから50mでの定点観測および周回観測の実施
  • PAF(Payload Adapter Fitting:衛星分離部)付近、約15mへの接近達成
  • 複数センサ・カメラによるPayloadの性能確認
  • FDIR(Failure Detection Isolation and Recovery)を用いた自律アボート(衝突回避機能)の実証

これらの実績によって、ADRAS-Jは「対象物体に安全、精密に接近する」ための基礎的技術を軌道上で実証し、日本発・世界初と位置づけられる成果を出しました(同社による調査、2024年12月時点の公開情報に基づく)。

運用の詳細と技術的説明

ADRAS-Jの運用は、軌道計画の立案から航法、センサ観測、衝突回避に至るまで多層的な設計と試験を経て実施されました。開発期間は約1500日、軌道上でのミッションは293日という短期間ながら集中した実験が行われています。

以下の用語解説はプレスリリースに記載された注釈を整理したものです。実際の運用や将来機の設計を理解するうえで重要な概念です。

RPO
Rendezvous and Proximity Operationsの略称。ランデブ・近傍運用。対象に近接・周回・接触するための航法および運用技術。
CRD2
Commercial Removal of Debris Demonstrationの略称。JAXAによる商業デブリ除去実証プログラム。
PAF
Payload Adapter Fittingの略称。ロケットと衛星を接続する台座で、ADRAS-J2の捕獲箇所としても想定された対象部位。
FDIR
Failure Detection Isolation and Recoveryの略称。衛星が内部や相対挙動の異常を検知し、自律的に異常対応(例:アボート)を行うシステム。
非協力物体
接近や捕獲、ドッキングに必要な応答能力や機器を持たない物体。ADRAS-Jの主要な挑戦対象。
アボート
衝突回避のためにマヌーバを行って安全距離まで退避する行動。

観測データと機器構成

ADRAS-Jは複数のセンサとカメラを搭載し、遠距離・近距離双方での観測性能を確認しました。周回観測時にはデブリと地球を一緒に撮影した画像や、デブリの周回観測を記録したタイムラプス映像などのデータ取得に成功しています。

観測映像やまとめ動画は以下のリンクで公開されています。詳細はミッションページで随時更新されます。

関係者のコメントと今後の計画・協力体制

ADRAS-Jプロジェクトマネージャーの新栄次朗氏は、プロジェクトの難易度と得られた知見について言及しています。新栄氏は「存在しない技術を一から生み出し、非協力物体へのフルレンジRPOに挑むという前例のない取り組みは想像を超える困難を伴いましたが、すべての航法は期待を上回る性能を示しました」と述べ、アボートを経ながらも安全なRPOを実現した点を強調しました。

また、アストロスケール代表取締役社長の岡田光信氏は、本ミッションの成功により同社が軌道上サービス市場で優位性を得たと述べ、JAXAやパートナー、投資家、サプライヤー、社員らへの感謝を表明しています。岡田氏はさらに、マーケティングパートナーとして7社と連携している点を明示しました。

  1. ヒューリック株式会社
  2. 郵船ロジスティクス株式会社
  3. 株式会社みずほ銀行
  4. 株式会社アイネット
  5. 株式会社三技協イオス
  6. 株式会社セック
  7. 株式会社キッズステーション

同社はADRAS-Jでの観測を踏まえ、PAF付近の状態把握に成功した点をADRAS-J2に活かす計画です。ADRAS-J2はデブリの捕獲や軌道離脱も行うことを目的としており、打上げは2027年度に予定されています。現在、機体の開発や試験が進められています。

今回の発表の要点整理とデータの一覧表

以下の表は、本記事で取り上げたADRAS-Jミッションに関する主要な事実と数値、関連リンクを整理したものです。記事本文で紹介した内容を一覧で確認できます。

項目 内容
公表日時 2026年3月25日 13時00分
開発期間 約1500日間
軌道上ミッション期間 293日間
対象デブリの概要 日本のロケット上段:全長約11m、直径約4m、重量約3トン
主な達成事項 遠方域絶対航法、近傍相対航法、複数回接近、50mでの定点/周回観測、約15mへの接近、FDIRによる自律アボート実証、複数センサの性能確認
軌道降下の状況 5年以内に自然落下・再突入可能な軌道へ高度を降下中、今後さらに降下運用を継続
次段ミッション ADRAS-J2(デブリ捕獲・軌道離脱を目標、2027年度打上げ予定)
プログラム枠組 JAXAの商業デブリ除去実証(CRD2)フェーズIの契約相手として開発
マーケティングパートナー ヒューリック、郵船ロジスティクス、みずほ銀行、アイネット、三技協イオス、セック、キッズステーション(計7社)
参考リンク ADRAS-Jミッションページ / 周回観測タイムラプス / まとめ動画 / ADRAS-J2ページ / JAXA CRD2

以上が本件の要点表です。ADRAS-Jの軌道上での一連の実証は、軌道上サービス技術の成熟と日本発の商業的先導において重要な節目となりました。本記事では公表された数値、経緯、関係者コメント、関連リンクを網羅的に整理しているため、ミッションの全体像と得られた成果、次段計画の位置づけを確認することができます。