圧着トナーと構造色が評価 富士フイルムB.I.が学会受賞
ベストカレンダー編集部
2026年3月27日 14:09
日本画像学会受賞
開催日:3月27日
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画像形成技術が学会で相次いで評価された背景
富士フイルムビジネスイノベーション株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長・CEO:浜 直樹)が、日本画像学会より2025年度の「技術賞」および「論文賞」を受賞したことが発表されました。プレスリリースは2026年3月27日 11時10分に公表されています。
日本画像学会は、画像・印刷・電子写真・インクジェットなどの分野で学術および産業発展を目的に活動する専門学会で、各賞は独創性、学術的価値、実用性などの観点から厳正に選考されます。今回の選考対象は、同学会に所属する企業229社と大学など研究機関40機関であり、その中から両賞が選出されました。
選考の枠組みと受賞の意味
学会が授与する「技術賞」は実用化された技術的成果に対する評価であり、「論文賞」は学術的・研究的に優れた論文に対する評価です。今回の受賞は、実用化技術と基礎・応用研究の双方が高く評価された点に特徴があります。
受賞対象となった2件はいずれも印刷・表現分野におけるイノベーションに資するものであり、産業応用と学術的理解の両面での貢献が評価されたものです。以下では、それぞれの内容を詳細に整理します。
圧着トナー:印刷工程内で接着を完結させる新規トナー技術
「技術賞」として評価されたのは「電子写真用 新規圧力応答型粘着トナー(圧着トナー)の開発」です。本技術は無色透明の機能性トナーで、印字と接着(糊付け)をデジタル印刷工程内で一括して行える点に特長があります。
圧着トナーは、富士フイルムビジネスイノベーション独自のEA製法(Emulsion Aggregation:乳化凝集製法)により、内部に圧力に応答する樹脂を微細に分散させた構造を有しています。高い圧力が加わったときのみ粘着性を発現するため、印刷後に用紙同士を圧着することで接着剤の役割を果たします。
技術の詳細と工程上の利点
圧着トナーは通常の電子写真用トナーと同等の画像形成性能を維持しつつ、印刷後の別工程で必要だった糊付け作業を不要にします。これにより、工程短縮と生産性向上が期待されます。特に小ロット・多品種ジョブでの効率化に寄与します。
現場での使用例としては「圧着はがき」が挙げられます。従来は印字後の別工程で糊付けを行っていた圧着はがきの製作が、カラートナーによる画像印字と圧着トナーによる接着を同一工程で完結できるようになりました。印字後の乾燥や硬化などの後処理が不要で、圧着加工時の接着材のはみ出しが発生しない点が評価されています。
導入機種・活用上のポイント
- 導入機種:プロダクションカラープリンター「Revoria Press™ PC2120」「Revoria Press™ PC1120」で利用実績あり。
- 活用の利点:印字面のハンドリングは通常印字物と同様で、乾燥工程省略、接着材はみ出し抑制、小ロット対応の生産性向上。
- 設計上の留意点:版デザインの工夫により剥離時の破れ対策などの活用が進められている。
- 受賞者(技術賞)
- 富士フイルムビジネスイノベーション株式会社:北川 聡一郎、山崎 純明、三枝 浩、井上 敏司、山中 清弘
- 製法注記
- EA製法(Emulsion Aggregation:乳化凝集製法)により圧力応答型の樹脂分散を実現。
構造色インクジェットと色質感再現モデルの科学的成果
「論文賞」は「多角度分光計測をベースとした色予測モデルの構築と構造色インクジェット色質感再現シミュレーション」に対して授与されました。この論文は日本画像学会誌 Vol.64, No.2に掲載されています。
研究の主題は、視点や照明条件によって見え方が大きく変わる色や質感をデジタル上で高精度に再現・予測する色質感再現技術にあります。特に最近利用が進んでいる金・銀・透明色・蛍光色などの特殊色材や、観察角度で色相が変化する材料(構造色など)に対応する点が重要です。
研究の手法と成果
本研究では、多角度分光計測値を用い、照明方向および観測方向を色再現のパラメータとして組み込んだ色予測モデルを構築しました。これにより光沢や用紙表面の粗さといった質感要素を含めた色質感を実験的に高精度で再現できることを示しました。
また、色素を用いず光の反射によって発色する「構造色」をインクジェット印刷で発現させる独自の構造色インクジェット技術を適用対象の一つとして扱い、視点依存性の高い構造色についてもデジタル上で制御・再現可能であることを確認しています。
応用例と社会的意義
この技術は、デザイン作成ツールへの応用や加飾印刷分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に寄与する可能性が示されています。実例として、構造色インクジェット技術は2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のシグネチャーパビリオン「いのち動的平衡館」の建物外観にも採用されています。
掲載誌および受賞者の情報は以下の通りです。
- 掲載誌
- 日本画像学会誌 Vol.64, No.2
- 受賞者(論文賞)
- 富士フイルムビジネスイノベーション株式会社:針貝 潤吾、桑田 良隆、佐々田 美里
富士フイルム株式会社:高田 勝之、河本 匠真
今回の受賞内容を整理する
ここまでの内容を、受賞技術の概要・適用例・公表情報などを含めて整理します。各技術の実用化状況や学術的な評価軸、関連機関や採用事例を明確にすることで、受賞の意義が把握しやすくなります。
以下の表は、本記事で取り上げた情報を項目ごとに整理したものです。受賞名、対象技術、主な特徴、適用機器・採用事例、受賞者(主要メンバー)、掲載・公表情報を網羅しています。
| 項目 | 技術/論文の内容 |
|---|---|
| 受賞名(技術賞) | 電子写真用 新規圧力応答型粘着トナー(圧着トナー)の開発 |
| 技術の概要(圧着トナー) | 印字と接着をデジタル印刷工程内で一括実行できる無色透明の機能性トナー。EA製法により圧力応答型の樹脂を微細分散し、高圧でのみ粘着性を発現。 |
| 適用例・導入機種 | 圧着はがき、プロダクションカラープリンター「Revoria Press™ PC2120」「Revoria Press™ PC1120」等で利用。 |
| 受賞者(技術賞) | 北川 聡一郎、山崎 純明、三枝 浩、井上 敏司、山中 清弘(富士フイルムビジネスイノベーション) |
| 受賞名(論文賞) | 多角度分光計測をベースとした色予測モデルの構築と構造色インクジェット色質感再現シミュレーション |
| 研究の概要(構造色/色質感再現) | 多角度分光計測を用いて照明方向・観測方向をパラメータ化した色予測モデルを構築し、光沢や用紙粗さなどの質感要素を含めた色質感を高精度で再現。構造色インクジェット技術の適用検証も実施。 |
| 採用事例・公開情報 | 構造色インクジェット技術は2025年大阪・関西万博シグネチャーパビリオン「いのち動的平衡館」外観に採用。論文は日本画像学会誌 Vol.64, No.2に掲載。 |
| 受賞者(論文賞) | 富士フイルムビジネスイノベーション:針貝 潤吾、桑田 良隆、佐々田 美里 富士フイルム:高田 勝之、河本 匠真 |
| 学会・選考対象 | 日本画像学会(企業229社、研究機関40機関を対象とした中から選出) |
| プレスリリース日 | 2026年3月27日 11時10分(富士フイルムビジネスイノベーション発表) |
以上の表は受賞技術の要点を整理したものであり、圧着トナーの実用化事例や構造色インクジェットの学術的検証と実展示への適用といった、技術の両輪が今回の評価につながっている点が確認できます。
今回の受賞は、印刷・画像分野における新たな表現方法と工程革新の両立を示す事例として位置づけられます。学術的な理論構築と実運用への橋渡しの両面が評価された点が、今回の特徴と言えます。