Nordic Fuel Gauge v2.0が実現するIoT向け高精度SoH
ベストカレンダー編集部
2026年3月30日 11:47
Fuel Gauge v2.0発表
開催日:3月30日
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IoT機器のバッテリー管理に新たな水準をもたらす「Nordic Fuel Gauge v2.0」
ノルディック・セミコンダクター株式会社は、2026年3月30日付で、Embedded World 2026においてソフトウェアベースのバッテリー状態管理ソリューション「Nordic Fuel Gauge v2.0」を発表しました。今回の発表は、受賞歴のあるパワーマネジメントICであるnPM1300およびnPM1304向けの大幅なアップデートであり、バッテリーの状態(State-of-Health:SoH)の高度な推定、適応型バッテリーモデル、フリート全体の可視化といった機能を追加しています。
このアップデートの目的は、電力制約がある各種IoT製品に対して、高精度かつ低コストで長寿命化を支援するバッテリー管理機能を提供することです。メーカーは本ソリューションにより、製品設計段階から運用段階まで一貫してバッテリー情報を活用できるようになります。
- 発表日:2026年3月30日(Embedded World 2026で発表)
- 対象製品:nPM1300、nPM1304向けソフトウェア(Nordic Fuel Gauge v2.0)
- 主な追加機能:SoH推定、適応型バッテリーモデル、フリート分析(クラウド統合)
実環境に適応する高精度なバッテリーモデルと測定手法
Fuel Gauge v2.0は、従来の静的モデルや単純なクーロンカウンティングに依存する方式と異なり、バッテリーの初期プロファイルと実際の使用挙動を継続的に比較して補正する適応型モデルを採用しています。これにより、充放電サイクルや温度変動、長期劣化トレンドを反映した正確なSoH推定が可能となります。
さらに、Fuel Gauge v1.0で培われた高精度な充電状態(SoC)測定を基盤に、v2.0では長期にわたる経年変化や複数バッテリーを交換しながら使用する機器における個別SoH管理にも対応します。これにより、製品寿命の末期まで安定した精度を維持できます。
- 測定要素
- 電圧、温度、電流をnPM1300内蔵の測定機能で収集し、ホスト側のアルゴリズムで解析。
- アルゴリズムの特徴
- 適応型バッテリーモデルにより初期プロファイルと実使用データを継続的に比較・補正。
- 専用IC不要
- 専用のバッテリー状態管理ICを必要とせず、部品点数(BOM)削減とシステム簡素化を実現。
- 省電力性
- スリープ時の消費電力はゼロとされ、競合ソリューションに比べて省電力。
技術的メリットの整理
従来手法が抱える時間経過に伴う誤差蓄積問題を、適応型モデルと実環境データによる補正で改善します。これにより、ラボ環境での評価と現場での挙動の差を縮め、より信頼性の高い寿命予測と交換時期の判断が可能になります。
加えて、ホストMCU側でのアルゴリズム実装により、Nordic以外のホストを含めた幅広いデバイスでの適用が可能です。具体的には、nRF54シリーズやnRF91シリーズを含む任意のホストMCU/ワイヤレスSoCで動作し、OEMはほぼすべての接続機器に本機能を導入できます。
nRF Cloud(Memfault統合)によるフリート全体の可視化と運用支援
Fuel Gauge v2.0は、NordicのクラウドライフサイクルサービスであるnRF Cloud powered by Memfaultとシームレスに統合されます。デバイスは専用のクラウド基盤を用意することなく、SoH、SoC、各種性能指標を自動的にレポートでき、フリート全体のバッテリー状況を可視化できます。
この統合により、運用チームや開発チームは異常検出、充電パラメータの最適化、実環境データに基づくハードウェア設計改善などを行うためのデータを獲得可能です。Memfaultの技術を組み込むことで、スケーラブルなデバイスインサイトを用いた運用が実現されます。
- フリートレベルでの異常検出とアラート
- 充電/放電パラメータの最適化による保証コスト低減
- 実環境データを基にした将来ハードウェア設計の改善
- EU電池規則(2023/1542)など強化されつつある規制への対応支援
Nordic Semiconductorソフトウェアサービス担当VPでMemfault創業者のFrançois Baldassariは、Fuel Gauge v2.0とnRF Cloudの統合について「Memfaultは、あらゆるハードウェアチームが高度なデバイスインサイトを活用できるよう設計されました。Fuel Gauge v2.0をnRF Cloudとシームレスに接続することで、企業はフリート全体のデバイス挙動を理解・改善するための強力かつスケーラブルな手段を手に入れます」と述べています。
また、NordicのPMIC製品ディレクターであるGeir Kjosavikは、「実際の現場でのバッテリー挙動はラボでの測定結果と一致しないことがほとんどです。Fuel Gauge v2.0により、これまでハイエンドのコンシューマー機器に限られていた適応型の実環境インテリジェンスをIoT分野に提供します。これは数十億台のバッテリー駆動デバイスにとってゲームチェンジャーとなるでしょう」と説明しています。
導入時期、規制対応、Nordicの背景情報
Nordic Fuel Gauge v2.0は現在顧客向けにベータ提供中であり、正式提供は2026年6月
このソリューションは、製品のライフタイム中にエンドユーザーが容易にバッテリーを取り外し・交換できることを求めるEU電池規則(2023/1542)などの規制強化に対応する支援を目的としています。適切な交換時期の判断が可能となることで、修理する権利(Right to Repair)への対応や保証コスト削減、製品信頼性向上につながります。
| 会社名 | Nordic Semiconductor(ノルディック・セミコンダクター株式会社) |
|---|---|
| 設立年 | 1983年 |
| 従業員数(目安) | 約1,450名(グローバル) |
| 関連買収 | 2025年にMemfaultを買収し、チップからクラウドまでの提供価値を強化 |
NordicはBluetooth Low Energyのパイオニアとして知られるほか、セルラーIoT、Wi‑Fi、Matter、Thread、Zigbee、DECT NR+、衛星通信(NTN)など多様なワイヤレス技術へ製品領域を拡張しています。Fuel Gauge v2.0はそのソリューションポートフォリオの一部として、ハードウェア・ソフトウェア・クラウドを横断する機能を提供します。
まとめ:主なポイントの整理
以下の表に、本記事で紹介したNordic Fuel Gauge v2.0に関する主要な情報を整理しました。製品の機能、対応ハード、提供時期、関連規制、期待される効果などを一目で確認できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 製品名 | Nordic Fuel Gauge v2.0(ソフトウェアベースのバッテリー状態管理) |
| 対象ハードウェア | nPM1300、nPM1304(PMIC)を利用。ホストはnRF54シリーズ、nRF91シリーズを含む任意のMCU/SoC(Nordic以外も可) |
| 主な機能 | SoH推定、適応型バッテリーモデル、SoC測定、複数バッテリー個別管理、フリート分析(nRF Cloud/Memfault統合) |
| 省電力性 | スリープ時消費電力はゼロを実現(競合比で大幅な省電力) |
| 導入時期 | ベータ提供中(顧客向け)。正式提供は2026年6月予定 |
| 規制対応 | EU電池規則(2023/1542)などのバッテリー交換義務化に対する対応支援、Right to Repairとの整合性支援 |
| 期待される効果 | 製品信頼性の向上、保証コスト削減、BOM削減、実環境データに基づく設計改善 |
| 参考リンク | https://www.nordicsemi.jp/news/nordic-semiconductor-introduces-precise-adaptive-battery-health-monitoring-for-iot-devices/ |
以上はNordic Semiconductorが発表したNordic Fuel Gauge v2.0に関する主要な情報の整理です。本ソリューションは、デバイス設計段階から運用までを見据えたバッテリーインテリジェンスの提供を狙いとしており、実環境に最適化された状態監視とクラウド統合によるフリート管理機能を通じて、IoT機器の長寿命化と運用効率化に寄与することが期待されます。