NGOが採点 日本製鉄とJFE、脱炭素で世界に出遅れ
ベストカレンダー編集部
2026年4月1日 07:52
鉄鋼企業スコアカード発表
開催日:3月31日
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世界の鉄鋼メーカーは「移行準備不足」と評価される
2026年3月31日、国際気候NGOのSteelWatch Stichting(スティールウォッチ)が初の「鉄鋼企業スコアカード」を発表した。調査は主に2024年度までに企業が公開したデータに基づき、対象となった18社を評価した結果、脱炭素への移行に必要な準備が整っていると判断できる企業は1社も存在しないという結論が示された。
本調査は、各企業の公開情報を用いて「気候対策実績」「目標設定と透明性」「社会・環境への影響」など計5つのカテゴリーで総合スコア(100点満点)を算出している。いずれの企業も50点を上回らず、石炭高炉への依存と低排出技術の普及遅延が共通の課題として浮かび上がった。
- 発表日:2026年3月31日(東京発)
- 出典:SteelWatch Stichting(スティールウォッチ)による「鉄鋼企業スコアカード」
- 評価対象:18社(世界29か国で事業展開)
- 評価期間の主なデータ:主に2024年度の公開レポート等
日本製鉄とJFEスチール──評価と背景にある石炭依存
スコアカードの結果では、日本最大手の日本製鉄(Nippon Steel)が18社中17位で、100点満点中16.8点を獲得した。一方、JFEスチールは12位で同23.4点だった。両社とも下位グループに位置しており、世界の同業他社に比べて低いスコアとなっている。
評価の背景として共通するのは、石炭高炉への依存度の高さである。日本製鉄は特に、石炭高炉の段階的廃止ではなく、既存高炉の延命技術に注力している点が問題視され、石炭消費量は増加傾向にあると報告書は指摘している。JFEスチールについても、同様に石炭依存の問題と低排出技術の拡大が遅れている点が評価を下げた要因となっている。
スティールウォッチ、アジア・リードのロジャー・スミスは、本スコアカードの評価結果を踏まえ「日本製鉄やJFEスチールのような影響力のある鉄鋼メーカーが、抜本的構造改革に向けた取り組みを加速することを期待する」と述べている。
スコアの内訳と主要調査結果:評価基準と具体的数字
スコアカードは総合スコア(100点満点)を、以下のような複数カテゴリーで評価した。各カテゴリーごとの実績と平均点は、企業の移行レディネス(移行準備度)を測る重要な指標として位置付けられている。
- 評価カテゴリー(抜粋)
-
- 気候対策実績
- 目標設定と透明性
- 社会・環境への影響
- 石炭からの脱却(石炭依存の解消)
- 低排出な鉄鋼生産の拡大(グリーンアイアン等)
- カテゴリ別の注目すべき平均スコア
-
- 「石炭からの脱却」:平均10.5点(25点満点)
- 「低排出な鉄鋼生産の拡大」:平均0.6点(25点満点)
これらの数値は、対象企業の多くが依然として石炭高炉へ投資を続けていること、そしてグリーンアイアンや再生可能エネルギーの利用拡大が極めて限定的であることを示している。報告書は、再生可能エネルギーに関する平均スコアやグリーンアイアン拡大の平均がいずれも低く、25点満点中1点未満にとどまる点を指摘している。
上位企業の特徴
上位に位置した企業は高炉の廃止やグリーンアイアン開発に関するより具体的な計画を掲げている点が共通している。スウェーデンのSSABは1位で、100点満点中46.2点を獲得し、再生可能エネルギー導入などで良好な実績が評価された。ドイツのティッセンクルップは2位で同41.9点となっている。
ただし、上位企業であってもグリーンアイアンの導入と規模拡大はまだ課題であり、完全な移行のためには更なる投資と実行が求められると報告書は述べている。
下位企業に共通する問題点
下位グループに位置する企業は、石炭を用いた高炉生産への高い依存、再生可能エネルギーに関する報告の不足、グリーンアイアン開発に向けた具体的取り組みの欠如が目立つ。報告期間中、これらの企業に大きな投資や決定的な行動は観測されず、移行レディネスギャップ(求められる水準と現在の取り組みとのギャップ)が著しく大きいとされる。
具体例として、現代製鉄(Hyundai Steel)は100点満点中21.2点、HBIS(中国)は同8.3点を獲得しており、これらは高炉依存やグリーンアイアン取り組みの不足がスコアに反映されたものである。
評価対象企業一覧と調査範囲、資料へのアクセス
スコアカードが評価した18社は以下の順(総合スコアランキング上位順)である。報告書では順位と一部企業のスコアが明示されているが、該当プレスリリース本文内でスコアが示されていない企業については、原資料での確認が必要である。
- SSAB(スウェーデン) — 46.2点(100点満点)
- ティッセンクルップ(ドイツ) — 41.9点
- アルセロール・ミッタル(ルクセンブルク)
- テルニウム(Ternium、ルクセンブルク)
- JSWスチール(インド)
- クリーブランド・クリフス(米国)
- NLMKグループ(ロシア)
- USスチール(米国)
- ゲルダウ(Gerdau、ブラジル)
- タタ・スチール(インド)
- 宝山鋼鉄(BaoSteel、中国)
- JFEスチール(日本) — 23.4点
- マグニトゴルスク製鉄(MMK、ロシア)
- オヤック(トルコ)
- ポスコ(POSCO、韓国)
- 現代製鉄(Hyundai Steel、韓国) — 21.2点
- 日本製鉄(Nippon Steel、日本) — 16.8点
- HBIS(河北鋼鉄集団、中国) — 8.3点
報告書はまた、評価対象企業の中で高炉の新設を実行しているケースはほとんどないと指摘している。SSABのように再生可能エネルギー導入での良好な実績が確認される企業もある一方で、多くの企業は直接還元鉄(DR iron)の生産能力を一部有するが、これをニアゼロ・エミッション鋼材の本格生産につなげるためにはさらなる規模拡大と投資が必要である。
評価対象外となった新プロジェクトについては、最終投資決定(FID)に至っていない、または評価期間以降に発表されたものが含まれ、これらは今後のスコアカード改訂で評価に反映される可能性があると報告書は述べている。
関連リンク:
- スコアカード(報告書全文): https://steelwatch.org/scorecard?lang=ja
- 各社の移行進捗を確認できる「鉄鋼企業移行トラッカー」: https://steelwatch.org/tracker/?lang=ja
- 写真や図表、企業スコア情報などの素材は、上記スコアカードのページからダウンロード可能
記事の要点整理(表)
以下に本記事で触れた主要事項を表形式で整理する。発表日、評価対象数、主要な数値などをまとめ、内容を確認しやすくした。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表日 | 2026年3月31日(SteelWatch Stichting 発表) |
| 評価対象企業数 | 18社(世界29か国で事業展開) |
| 評価期間の主なデータ | 主に2024年度までの企業公開データ |
| 総合スコアの目安 | 18社いずれも50点未満。上位SSAB 46.2点、ティッセンクルップ 41.9点 |
| 日本企業の結果 | 日本製鉄(Nippon Steel)17位 16.8点、JFEスチール 12位 23.4点 |
| カテゴリ別の注目点 | 「石炭からの脱却」平均10.5/25、「低排出な鉄鋼生産の拡大」平均0.6/25 |
| 主な結論 | 対象企業にニア・ゼロエミッションへ十分に軌道に乗っている企業は存在せず、石炭依存とグリーンアイアン拡大不足が移行を阻む主要要因 |
| 報告書全文・トラッカー | https://steelwatch.org/scorecard?lang=ja、https://steelwatch.org/tracker/?lang=ja |
本記事はスティールウォッチが公表した「鉄鋼企業スコアカード」の内容を基に、発表日、評価方法、主要な数値と指摘事項、各社の順位やスコア(プレスリリースに記載のもの)を整理して伝えた。評価の多くは公開情報に基づくため、新規プロジェクトやその後の進捗は将来の評価で反映される可能性がある。