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製造業14社が語る 技術系留学生の採用戦略

採用戦略座談会

開催日:3月2日

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採用戦略座談会
日本語できない留学生って本当に採用されにくいの?
奈良先端大の提示ではN1・N2は就職に困りにくい一方、N5以下は就職実現率が約1割にとどまる。ITなど英語で業務可能な職場も増え、企業は要件見直しや受け入れ体制の整備を検討している。
企業側は留学生の定着にどう対応してるの?
オンボーディングやメンター制度、英語対応者の配置、採用スケジュールの別枠化などが議論された。大学や支援事業者と連携し、サロン設立など継続的な支援も計画されている。

製造業を中心に集まった採用担当者が語った「技術系留学生」の現在地

2026年3月2日に大阪市北区のAP大阪梅田東で開催された座談会には、製造業を中心とする14社の企業から人事・採用担当者18名が参加し、理系留学生の採用・定着について率直な議論が交わされました。本座談会は奈良先端科学技術大学院大学(以下、奈良先端大)と株式会社アカリクの共催で、企業側と大学側が直接対話する場として企画されました。

議論は、企業側の受け入れ体制や採用スケジュール、オンボーディングの方法論、そして留学生側が日本企業を選ぶ動機にまで及び、参加者間で現実的かつ具体的な課題認識の共有が行われました。以下では会の背景、議論の詳細、参加企業・出席者、そして大学とアカリクの取り組みを含めて整理して報告します。

座談会で掘り下げられた具体的な論点と示されたデータ

討議の中心となったのは、日本語能力採用スケジュールのギャップ定着の課題経営と現場の認識差、および留学生が日本を選ぶ理由の五つのテーマです。それぞれのテーマで大学側・企業側から示された実態や知見を順にまとめます。

各議題は、参加企業と奈良先端大教員の双方向の意見交換により、データや経験に裏付けられた具体的な示唆が出されました。以下の小見出しで各テーマの要点を整理します。

(1)日本語能力と採用要件

奈良先端大から提示されたデータでは、N1・N2レベルの留学生は就職に困らない一方、N5以下の場合は就職実現率が約1割にとどまるという実態が共有されました。企業側からは、社内の受け入れ体制が日本語前提で設計されていることが採用の主なハードルになっているとの指摘が複数ありました。

ただし、IT領域を中心に英語のみで業務を遂行できる環境が広がっており、職種や部署ごとに要件を柔軟に見直せる余地があることが報告されました。企業側では日本語能力の線引きを見直す試みと、現場の整備の両面が必要とされている点が確認されました。

(2)採用早期化と留学生

日本の新卒採用が早期化(夏季インターンシップから選考開始)する流れの中で、留学生がそのスケジュールに追いつけない現状が複数の企業から指摘されました。留学生向けに別スキームを設ける必要があるという意見が出る一方で、人事部門のリソース不足から実行が難しいという現場の声もありました。

企業側では採用スケジュールと留学生の生活・学業スケジュールの調整、インターン実施時期の工夫、あるいは別途選考周期の整備といった対策検討の余地が示されました。採用プロセス全体を見直すには部門横断的な調整が鍵になるとの認識が共有されました。

(3)定着とオンボーディング

複数の企業が指摘したのは、採用後の定着率の低さとその背景にある孤立化です。職場に英語対応可能な社員がいる環境では定着しやすい傾向が観察される一方で、語学やコミュニケーション面でのサポートが不十分だと離職に直結するケースが多く示されました。

また、失敗体験が蓄積されることで現場が留学生採用を敬遠する悪循環も指摘され、オンボーディングやメンター制度、チーム内での受け入れ準備といった実務的な対応策の重要性が強調されました。定着支援は採用と同等に優先順位を上げる必要があると議論されました。

(4)経営と現場のギャップ

グローバル人材の重要性を認識し採用を推進する経営層と、受け入れに不安を抱える現場との間に認識のズレがあることが共通課題として挙がりました。人事がこのギャップを埋める役割を担うべきだという意見が多く、社内の共通言語を作る必要性が確認されました。

先輩留学生の成功事例を可視化して発信することが、後輩の採用と定着の双方に効果を持つとの知見も共有され、事例ベースでの情報発信や社内教育の整備が有効である点が示されました。

(5)留学生が日本企業を選ぶ理由

奈良先端大の分析では、近年の留学生が日本を選ぶ理由としてコロナ禍以降に再認識された生活の安定感や、日本文化(ゲーム・アニメ等)への関心が大きいことが示されました。多くの留学生は最終的に母国への帰還を視野に入れているものの、まず日本で約10年程度スキルを蓄積したいと考えているケースが多いことも紹介されました。

企業側はこうした動機を踏まえ、長期的なキャリアパス提示やスキル向上支援を採用・育成施策に組み込む意義を再確認しました。留学生が持つ専門性と多様な視点をどう引き出すかが、今後の採用戦略の鍵となるとの結論が出されました。

開催概要と出席者──事実関係の整理

本座談会の基本情報と出席者は以下のとおりです。開催日時、会場、主催、参加企業などの事実情報を表で整理します。

表の後に奈良先端大およびアカリク側の出席者名と、参加企業一覧を掲載します。参加企業は五十音順で表記され、総数は14社です。

項目 内容
名 称 技術系留学生の「ポテンシャル」を見抜く採用戦略座談会
日 時 2026年3月2日(月)14:00〜18:00
会 場 AP大阪梅田東(大阪府大阪市北区堂山町3-3 日本生命梅田ビル 5F)
主 催 奈良先端科学技術大学院大学/株式会社アカリク
参加企業 14社(五十音順)
出席者(大学側) 教育推進機構 キャリア支援部門 特命助教 谷口 直也、教育推進機構 キャリア支援部門 特命准教授 山下 俊英
出席者(アカリク) 代表取締役 山田 諒、ヒューマンキャピタル事業本部長 大久保 衞

参加企業(五十音順、座談会資料記載に準拠):

  • 株式会社アイシン
  • 大阪富士工業株式会社
  • 京セラ株式会社
  • 株式会社コメリ
  • セイコーエプソン株式会社
  • ダイドーグループホールディングス株式会社
  • パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社
  • 株式会社ブリヂストン
  • マツダ株式会社
  • 三井化学株式会社
  • 三菱ケミカル株式会社
  • ローム株式会社
  • ロート製薬株式会社
  • 他(上記を含む計14社)

参加企業の声と大学・アカリクの取り組み

参加企業からは、採用の目的の再確認や受け入れによる社内の英語力向上、DE&I(多様性・公平性・包摂)とイノベーションの推進といった具体的な示唆が寄せられました。以下にアンケートで得られた主な声を抜粋して提示します。

大学とアカリクの取り組みについては、これまでの連携実績や新たな施策の方針も共有され、産学連携による課題解決の可能性が議論されました。

  • 「外国籍の方に入社して貰う意味を改めて考え直すべきという点など、手段が目的化しないように採用活動を行う必要があることに気づかされた。他社様との交流も大変意義があると感じた」
  • 「留学生の受け入れにより周囲・受入側の英語力強化につながったという話は新たな視点でした」
  • 「DE&Iや事業のイノベーションを推進する上で、日本語習得レベルの壁を超えて、優秀な技術職留学生の方と働くことを通して既存の従業員の成長につなげるという発想は新鮮だった」

奈良先端大とアカリクの連携の現状

奈良先端大は大学院のみで構成される国立大学として多くの留学生を抱え、研究開発人材の輩出を全学戦略に掲げています。2026年4月には産学連携プラットフォームとして「外国籍博士人材の採用・育成サロン」を立ち上げ、全国の大学・企業と対話の場を創出する計画が示されました。

アカリクは2006年創業で、大学院生・研究者向けのキャリア支援を行う企業です。2023年10月には奈良先端大隣接の施設内にコミュニティスペース「アカリクラウンジ」を開設し、延べ6000名以上の学生が利用しています。2024年7月には就職支援・キャリア形成支援に関する連携協力協定を奈良先端大と締結しており、本座談会はその協定に基づく取り組みの一環として実施されました。

アカリクの主な事業と取組事例

アカリクの事業は、大学院生向け就活情報サイト「アカリク」の運営、分野別イベントの企画、若手研究者向けの人材紹介サービス、大学でのキャリアセミナー実施、Cloud LaTeXの提供など多岐にわたります。代表の山田 諒は政府の検討会に委員として参画するなど、博士人材の活躍促進にも関与しています。

地方大学との連携やコミュニティスペース設置、採用イベントの企画運営などを通じて、大学院生のキャリア形成を支援する実績が多数示されました。これらの活動は留学生の採用・定着に関する産学連携の基盤として機能しています。

要点の整理(表)と終わりのまとめ

本稿で扱った座談会の主要な事実と論点を下表に整理します。議論の焦点、参加者情報、大学と企業が今後取り組むべき課題を簡潔にまとめました。

項目 内容
開催名 技術系留学生の「ポテンシャル」を見抜く採用戦略座談会
開催日 2026年3月2日(月)14:00〜18:00
会場 AP大阪梅田東(大阪府大阪市北区堂山町3-3 日本生命梅田ビル 5F)
主催 奈良先端科学技術大学院大学/株式会社アカリク
参加企業 14社(企業名は本文参照)
出席者(大学側) 谷口 直也(特命助教)、山下 俊英(特命准教授)
出席者(アカリク) 山田 諒(代表取締役)、大久保 衞(ヒューマンキャピタル事業本部長)
主な議題 日本語能力の影響、採用早期化とのズレ、定着とオンボーディング、経営と現場のギャップ、留学生の日本選択理由
奈良先端大の動き 2026年4月に「外国籍博士人材の採用・育成サロン」立ち上げ予定。留学生のキャリア支援を全学戦略で推進。
アカリクの取組 アカリクラウンジ(2023年10月開設)、2024年7月に奈良先端大と連携協定締結。就職支援サイトやイベント運営等を実施。

座談会では、留学生と日本企業の双方にとっての構造的なミスマッチが改めて明確になりました。日本語能力要件や採用スケジュールの調整、受け入れ体制の整備といった具体的課題に対して、大学と支援事業者、企業が連携して取り組む必要性が示されています。産学連携を通じた採用・育成モデルの検討が引き続き求められており、今回の議論はその基盤構築に資するものと位置づけられます。