ルクセンブルク万博パビリオン、資材80%再利用達成
ベストカレンダー編集部
2026年4月13日 16:24
パビリオン資材再利用
開催日:4月13日
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ルクセンブルクパビリオンが示した「サーキュラー・バイ・デザイン」の実践
2025年大阪・関西万博に出展したルクセンブルク大公国のパビリオンは、閉幕後の解体と再利用を前提に設計された「サーキュラー・バイ・デザイン」(循環型設計)に基づき、建築のライフサイクル全体を通して循環経済の実現を目指しました。設計段階から再利用を想定し、施工・解体・再利用に至るまでの詳細な計画と現場での工夫を重ねた結果、万博会期中および閉幕後に決定した再利用先を合算すると、パビリオン資材全体の少なくとも80%の循環が達成されました。
この取り組みは国際博覧会事務局(BIE)の「サステナビリティ賞」にも評価され、パビリオンのコンセプトと実践が国内外で注目されました。パビリオンのテーマは「Doki Doki – ときめくルクセンブルク(Doki Doki – The Luxembourg Heartbeat)」で、敷地面積は1750㎡、総面積1120㎡の中規模自前建設パビリオンとして会期中に延べ37万8千人の来場者を迎えました。
- 設計:ルクセンブルクの建築事務所STDM、空間デザインはjangled nerves。
- 協働設計・参加事務所にみかんぐみなど。
- 施工:株式会社内藤ハウス(総合建設事業)、大日本印刷(内装工事)ほか。
- 演出・AV:BeWunder(AVL演出)、コンストラクション・マネジメント:フロンティアコンストラクション&パートナーズ。
主要部材の設計思想と具体的な再利用先
ルクセンブルクパビリオンは構造設計の段階から、解体後に部材を切断・加工せずに回収・再利用できるよう配慮されました。特に外壁に使用した型枠パネルは通常の用途どおり切断せずにそのまま外壁材として利用され、閉幕後は従来の型枠材として再使用されています。
パビリオンの躯体を構成する主要4要素である膜屋根、コンクリートメガブロック、外装パネル、鉄骨構造が全体重量のおよそ80%を占めることから、これらを解体時にそのまま回収できる構造とすることで、資材の大部分を循環させることが目標でした。設計チームと日本の施工パートナーの協力により、これらの再利用先が確定し、目標を達成しました。
主要4部材の行先(概要)
下記は主要4部材それぞれの再利用先と取り扱い方法の概要です。各社・団体が用途に合わせて受け入れ、アップサイクルや再設置が進められています。
膜屋根はテキスタイル素材としての特性を生かした商品群へ、コンクリートの巨大ブロックは構造材として別施設へ、外装パネルはそのまま型枠材として再利用、鉄骨構造は一部を公共施設の建設に活かす計画です。
- 膜屋根
- 株式会社モンドデザインがバッグ類(ボストンバッグ、ショルダーバッグ、財布、メガネケース)にアップサイクルし販売。
- コンクリートメガブロック
- 株式会社船場のプロデュースにより、兵庫の株式会社ネスタリゾート神戸にて全量再利用予定。
- 外装パネル
- 京都の有限会社神工建設がコンクリート構造物の型枠として再利用(切断や加工をせずにそのまま使用)。
- 鉄骨構造
- 一部が大阪府交野市にて子育て支援施設建設に使用される計画(2027年度予定)。
内装・家具・植栽の再活用詳細
主要躯体以外にも、パビリオンで使用された内装材、家具、備品、植栽について可能な限り再利用先を特定し、循環を徹底しました。家具や備品は販売・寄贈・寄託など多様な方法で受け手が決まり、植栽も複数の事業者・自治体で再定着されています。
具体的にはボウリングレーンの寄贈や、デザイナーズ家具の再販・完売、内装木材の3Dプリントによる椅子へのアップサイクルと大学への寄贈など、多彩な事例が生まれています。
- ボウリングレーン:フロンティアコンストラクション&パートナーズへ寄贈。三重県鈴鹿市の「三重県立鈴鹿青少年センター(愛称:スズカト)」で活用予定。
- VIPルームのデザイナーズ家具:株式会社イー・ユニットが楽天市場で再販し完売。
- 内装木材:大日本印刷が3Dプリンターで椅子にアップサイクルし、上智大学へ寄贈。
- 家具・建具等:大阪府岸和田市へ寄贈され、地蔵浜のマルシェ(2026年秋オープン予定)で使用予定。
- 備品:一般社団法人demoexpoが蚤の市やイベントで再活用。
- 植栽:株式会社内藤ハウス(山梨県韮崎市)、平田運輸(兵庫県加西市)、京都府南丹市へ引き渡し・移植。
記録と情報発信:連載『解体から再生へ』
ルクセンブルク貿易投資事務所(LTIO)は、今回の循環経済実践を記録・発信するため、日本向けの連載企画『「解体から再生へ」―ルクセンブルクパビリオンが挑んだ循環の物語』をウェブサイトでスタートしました。本連載では設計意図、解体作業の手順、部材ごとの再利用プロセス、関係者インタビューなどを順次公開します。
連載の狙いは、万博という舞台で実現した具体的な循環の事例を公開することにより、建築分野におけるサーキュラー・エコノミーの実践方法を示すことです。以下に投稿予定の各回とリンク(公開先)を列挙します。
- 第1回 パビリオンは終わらない——ルクセンブルクの循環への挑戦
リンク: https://luxembourgtradeandinvest.com/ja-jp/news/luxembourg-pavilion-circular-journey-01 - 第2回 「サーキュラー・バイ・デザイン」とは何か
リンク: https://luxembourgtradeandinvest.com/ja-jp/news/luxembourg-pavilion-circular-journey-02 - 第3回 部材編① 膜屋根があなたの手元にー大人気バッグコレクションへの変貌
リンク: https://luxembourgtradeandinvest.com/ja-jp/news/luxembourg-pavilion-circular-journey-03 - 第4回 部材編② 地中から掘り起こされた巨大ブロックの行方
- 第5回 部材編③ 外装パネルが新たなの建物の建築現場に
- 第6回 部材編④ 鉄骨構造がつなぐ未来
- 第7回 部材編番外 ボウリングレーンの意外な再出発
- 第8回 家具・備品編 家具と備品がつなぐ万博とその後の時間
- 第9回 植栽編 植栽が根付く次の場所
- 第10回 循環の哲学と実践を議論する:循環経済カンファレンスの開催
協働した組織一覧と連絡先、成果の整理
設計・施工・再利用に関わった組織は多岐にわたります。設計事務所、施工会社、再利用パートナー、自治体などが連携し、それぞれの専門性を持ち寄って循環の仕組みを実装しました。以下に主要な関係者を役割別に示します。
また、本件に関する公式の問い合わせ先としてルクセンブルク貿易投資事務所(LTIO)の担当者情報も公開されています。
- 建築事務所:STDM、みかんぐみ
- 空間デザイン:jangled nerves
- 施工業者:株式会社内藤ハウス(総合建設事業)、大日本印刷(内装工事)
- AVL演出:BeWunder
- コンストラクション・マネジメント:フロンティアコンストラクション&パートナーズ
- 循環経済コンサルタント:+ImpaKT
- 再利用パートナー:株式会社モンドデザイン、株式会社ネスタリゾート神戸、株式会社船場、有限会社神工建設、大阪府交野市、楽天グループ株式会社、株式会社イー・ユニット、上智大学、三重県立鈴鹿青少年センター、株式会社内藤ハウス、平田運輸、一般社団法人demoexpo、大阪府岸和田市、京都府南丹市など
問い合わせ先(ルクセンブルク貿易投資事務所)
- 担当者
- 松野・星
- TEL
- 03-3265-9621
- yuriko.matsuno@mae.etat.lu / ayae.hoshi@mae.etat.lu
| 項目 | 内容 | 再利用先・備考 |
|---|---|---|
| パビリオン規模 | 敷地面積1750㎡、総面積1120㎡ | 2025年大阪・関西万博出展(テーマ:Doki Doki – ときめくルクセンブルク) |
| 来場者数(述べ) | 378,000人 | 会期中の来場実績 |
| 循環率(目標・達成) | 目標:パビリオン資材の80%循環、達成:少なくとも80% | 主要4部材が全体重量の約80%を占める点が鍵 |
| 膜屋根 | テキスタイルを活かしたアップサイクル | 株式会社モンドデザインがバッグ・小物類として販売 |
| コンクリートメガブロック | 大型コンクリート部材 | 株式会社船場プロデュースでネスタリゾート神戸へ全量再利用予定 |
| 外装パネル | 型枠パネルをそのまま使用 | 有限会社神工建設が型枠材として再利用 |
| 鉄骨構造 | 構造用鋼材の一部 | 大阪府交野市の子育て支援施設建設に採用予定(2027年度) |
| 内装・家具 | デザイナーズ家具、内装木材など | 楽天市場で再販(完売)、大日本印刷が椅子へアップサイクルし上智大学へ寄贈、岸和田市のマルシェで使用予定 |
| 備品・小物 | 備品類の再配布 | 一般社団法人demoexpoが蚤の市・イベントで再活用 |
| 植栽 | パビリオンで使用された植物 | 株式会社内藤ハウス(山梨県韮崎市)、平田運輸(兵庫県加西市)、京都府南丹市へ移植・引き渡し |
この記事では、ルクセンブルクパビリオンが掲げた「解体後も終わらない建築」という設計思想と、その実現に向けた具体的な手法・再利用先、関与した組織や連載による記録公開までを整理しました。各部材は用途に応じて国内の企業や自治体で再活用され、建築の循環経済が設計段階から実働へと移行した事例として記録されています。詳細や連載記事の更新はルクセンブルク貿易投資事務所のウェブサイトや各再利用パートナーの公表情報を参照してください。