『火垂るの墓』幻の脚本と線画フィルムを初公開 新潮社刊
ベストカレンダー編集部
2026年6月24日 15:21
新刊『火垂るの墓』発売
開催日:6月24日
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高畑勲監督の代表作に新たな資料が示す別の姿
2026年6月24日、株式会社新潮社から刊行された寺越陽子著『高畑勲と「火垂るの墓」 ─「幻の脚本」と「7冊の構想ノート」を読み解く─』は、NHK ETV特集として放送された取材をさらに進め、番組に収めきれなかった事実や放送後に判明した新発見を加筆した一冊である。刊行日は同日付で、配信元のリリースは11時00分に発表されている。
本書の内容は、6月17日に読売新聞社会面で紹介された「幻の脚本」の公開をはじめ、劇場公開時の未彩色フィルムの発見、制作スタッフが語る制作秘話の数々など、従来の研究や解説とは異なる一次資料の提示と詳細な読み解きに特徴がある。著者はNHKディレクターとしてETV特集を制作した寺越陽子氏であり、取材の過程で得た資料と証言を丹念に整理している。
高畑監督作品に新たな光を当てた三つの発見
本書で提示される主要な発見は大きく三つに分けられる。第一に「幻の脚本」の存在、第二に劇場公開時に彩色が間に合わず線画のままで公開された場面を含むフィルムの発見、第三に製作当時のスタッフ証言に基づく制作秘話である。これらは放送後も継続して行われた取材によって確認された。
放送の時点で紹介しきれなかった素材や新たに確認された物的資料を盛り込み、書籍として体系化することで、作品解釈や制作背景に関する理解が深化する。ただし著者は資料を一方的に断定することなく、原作小説や劇場公開版との比較を通じて検証を行っている。
(1)「幻の脚本」の発見と内容の読み解き
本書で初めて公開された「幻の脚本」は、脚本家・深沢一夫(2016年逝去)によって起こされたものである。深沢氏は高畑監督演出の『太陽の王子 ホルスの冒険』やテレビシリーズ『母をたずねて三千里』の脚本を担当したことでも知られ、野坂昭如の原作小説を基にした別案の脚本を残していた。
著者は深沢氏の遺族への取材を行い、脚本の筆致や構成を原作小説および高畑監督の映画版と対照しながら検証している。遺族の証言として、息子の勲夫さんが初めて目にした脚本のコピーに指先で文字をなぞる場面が書籍内に収められている。これにより、当時の脚本案がどのような発想に基づくものであったか、どの部分が後の映画版と異なっているかを具体的に示している。
- 脚本作者:深沢一夫(故)
- 出所:高畑監督没後に自宅から発見された資料
- 検証方法:原作小説、映画本編と比較し内容を読み解く
(2)劇場公開時のフィルムとその意義
二つ目の発見は、劇場公開時に制作が間に合わず、彩色されないまま「線画」で上映されたと思われる部分を含むフィルムデータの存在である。放送後にその詳細が確認され、著者は実際にデジタル化された映像を閲覧している。
確認された映像は修復やカラーグレーディングを施していないネガ特有の淡い色調のままであり、音声は付されていない。該当部分は本編から切り出された短い断片であり、88分の本編通しの形では視聴できないが、当時の劇場で観客が目にしたであろう状態を示す一次資料として評価されている。これらの映像から切り出した画像は本書の冒頭カラー口絵(8ページ)に2点掲載されている。
- 映像の状態:デジタル化はされているが修復は未実施
- 色調:補正前のネガ特有の淡い色
- 掲載箇所:書籍カラー口絵(8ページ)に2点
(3)制作スタッフが語る具体的な秘話
三つ目は、制作にかかわったスタッフの証言だ。著者が行った複数の取材の中から、演出助手の須藤典彦氏(アニメーション演出家)による時代考証のエピソードが紹介されている。須藤氏は高畑監督の指示で念入りに資料を集め、その過程で実物の焼夷弾の筒を購入したという。
須藤氏の証言では、吉祥寺近くのフリーマーケットで焼夷弾の筒が売られているのを見つけ、約2000円で購入してスタジオに持ち帰ったと記録されている。その実物は音響効果のために地面にぶつけるなどして効果音制作に活用されたという具体的な運用例も本書に記されている。
書籍の構成・著者と関連情報
本書『高畑勲と「火垂るの墓」』は、カラー口絵8ページを含み四六判・224ページで構成される。タイトルの副題が示す通り、「幻の脚本」と「7冊の構想ノート」を軸に、劇場公開時の状況やスタッフの証言、監督が遺した言葉を手がかりとして作品解釈を深める構成になっている。
目次は次の通りで、各章ごとに具体的な資料と証言の照合が行われている:
- カラー口絵8ページ
- はじめに
- 第1章 自宅に遺されていた構想ノート
- 第2章 ノート4冊目に記された「幽霊の清太」
- 第3章 高畑さんが「一番悩んでいたのは」
- 第4章 「幻の脚本」
- 第5章 戦後40年経ってのアニメーション映画
- 第6章 高畑監督も「清太」だった
- 第7章 土壇場でカットされた10分間と線画で公開された3つのシーン
- 第8章 ドキュメンタリー取材を受けない三つの理由
- おわりに——「これは反戦映画ではない」高畑さんが遺した問いかけ
著者と刊行データ
著者の寺越陽子氏はNHK首都圏局のディレクターであり、これまでにもジブリ作品の制作過程を追った長期取材記録など、映像ドキュメンタリーを中心に多数の作品を手がけている。今回の書籍は同氏の初の単著であり、ETV特集の制作経験を基にした取材成果をまとめたものとなる。
刊行に関する主要データは書籍データとして次のように整理される。発売日は2026年6月24日(水)で、定価は1,980円(税込)、ISBNは978-4-10-357081-3である。出版社は新潮社、四六判・224ページとなっている。出版社の紹介ページはhttps://www.shinchosha.co.jp/book/357081/ にある。
- タイトル
- 高畑勲と「火垂るの墓」 ─「幻の脚本」と「7冊の構想ノート」を読み解く─
- 著者
- 寺越陽子
- 発売日
- 2026年6月24日(水)
- 造本・頁数
- 四六判・224ページ(カラー口絵8ページ)
- 定価
- 1,980円(税込)
- ISBN
- 978-4-10-357081-3
本文で示された主要事実の整理と参照情報
本書は、NHKのETV特集を出発点としながら、放送後も継続した取材によって得られた新資料と証言を加えた増補版的な性格を持つ。劇場公開当時の物的資料や脚本案の新公開、制作現場の具体的なエピソードなど、従来の紹介や研究で見落とされてきた側面を補完している。
また、映画『火垂るの墓』そのものの解釈に関しても、著者は高畑監督が生前に繰り返し述べていた「これは反戦映画ではない」という言葉の意味を、多角的に検証している。作品の意図と制作過程を切り分けることにより、作品が生まれた文脈を詳細に描き出している。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 書名 | 高畑勲と「火垂るの墓」 ─「幻の脚本」と「7冊の構想ノート」を読み解く─ |
| 著者 | 寺越陽子(NHKディレクター) |
| 発売日 | 2026年6月24日(水) |
| 判型・頁数 | 四六判・224ページ(カラー口絵8ページ) |
| 定価 | 1,980円(税込) |
| ISBN | 978-4-10-357081-3 |
| 主要な新発見 | (1)深沢一夫による「幻の脚本」発見、(2)劇場公開時に線画で上映された部分を含むフィルムデータ、(3)制作スタッフによる具体的な制作秘話 |
| 関連報道・紹介 | 読売新聞社会面(6月17日)、NHK「おはよう日本」(6月17日)、ETV特集(放送) |
| 配信情報 | 映画『火垂るの墓』はNETFLIXで国内配信開始(配信開始日:7月15日、出典は書籍内および報道) |
| 出版社・URL | 新潮社/https://www.shinchosha.co.jp/book/357081/ |
以上が書籍とその背景に関する主要な事実の整理である。本書は一次資料の公開と綿密な取材に基づく読み解きによって、これまでにない視点で高畑監督と『火垂るの墓』の制作過程を提示している。資料の出所や根拠は本文中で明示されており、研究や鑑賞の補助となる構成になっている。