8/11開幕|没後70年 溝口健二 回顧展の全貌
ベストカレンダー編集部
2026年7月14日 19:25
没後70年 溝口健二展
開催期間:8月11日〜12月13日
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溝口健二――没後70年、初の本格的回顧展が描き出す軌跡
世界映画史において重要な位置を占める映画監督、溝口健二(1898–1956)を取り上げる回顧展が、国立映画アーカイブで開催されます。没後70年にあたる2026年に合わせて企画された本展は、溝口の生涯と作品群、制作手法、国際的評価までを多角的に紹介する初の本格的な展覧会です。
溝口は東京生まれで青年期には画家を志しましたが、1920年に日活向島撮影所へ入社し、1923年の『愛に甦る日』で監督デビューを果たしました。以後、関東大震災による撮影所移転、日活京都・新興キネマ・松竹・大映などでの制作を通じて、独自の長回しや移動撮影、徹底した演出の姿勢を確立し、日本映画の芸術性を世界に示しました。
- 会期:2026年8月11日(火・祝)〜 12月13日(日)
- 会場:国立映画アーカイブ 展示室(7階)
- 主催:国立映画アーカイブ
章立てと展示資料――フィルモグラフィーと制作陣を手がかりに読む
展覧会は年代順と主題別の章構成で、溝口の初期から晩年までの活動を詳述します。各章では実物資料(脚本、スチル、ポスター、衣裳スケッチ、デスマスクなど)に加え、映像展示やデジタル資料、音楽展示が配置され、制作現場の状況や演出術を具体的に追体験できる構成です。
展示では特に溝口と密接に仕事をしたスタッフ群、いわゆる「溝口組」に焦点を当てます。脚本の依田義賢、撮影の宮川一夫、美術の水谷浩、音楽の早坂文雄、記録・助監督の坂根田鶴子、俳優の田中絹代らが遺した資料を通じて、溝口映画の技術的・美術的基盤を分析します。
第1章:日活向島時代(1920年代)
1920年に日活向島撮影所に入所し、『京屋襟店』(1922年、助監督参加)を経て、1923年2月公開の『愛に甦る日』で監督デビューを果たします。9月の関東大震災により向島撮影所は壊滅的被害を受け、溝口の向島時代は短期間で幕を閉じますが、その端緒となる資料群が展示されます。
当時の脚本断片、撮影メモ、スチルなどを通じて、映画界入り直後の溝口の志向性と、震災による影響が可視化されます。初期の職能経験がその後の作風形成にどのように寄与したかを読み解くコーナーです。
第2章:日活京都時代(1920年代後半〜1930年代)
日活は震災後に京都へ製作拠点を移し、溝口もこれに従って活動を継続します。『紙人形春の囁き』(1926年)はキネマ旬報ベスト・テン第7位に入るなど、成長期の主要作が並びます。『藤原義江のふるさと』(1930年)や『時の氏神』(1932年)ではトーキーへの早期挑戦も見られます。
この章では、作品のポスター、批評資料、受賞履歴などを通して、溝口の野心と表現実験を具体的に示します。来場者は当時の映画の受容や技術革新の文脈を理解できます。
第3章:第一の黄金期(新興キネマ時代/1932年頃)
1932年に日活を離れ新興キネマへ移った溝口は、入江たか子主演の『満蒙建国の黎明』(1932年)や『瀧の白糸』(1933年)で商業的成功を重ね、1936年の『浪華悲歌』『祇園の姉妹』で一つの頂点を築きます。これらの作品で示された徹底したリアリズム志向と関西弁を全篇に用いる実験的な演出が掲示資料でたどれます。
展示では当該作品のポスターやスチル、台本、舞台写真などを通じて、当時の制作状況と観客への訴求を再構築します。溝口の演出理念と俳優・スタッフとの関係性を立体的に紹介します。
第4章:松竹時代――戦中から戦後へ(1939〜1949年)
1939年の『残菊物語』は文部大臣賞を受賞し、古典芸能を題材にした一連の作品群や、1941–42年にかけて製作された空前の大作『元禄忠臣蔵』前後篇によって溝口は日本映画を牽引する存在となりました。本章では、巨大セットの設計図や衣裳スケッチ、脚本などの実物資料を多数展示します。
また戦時下の映画制作事情や検閲・製作環境の変動といった背景資料も併せて提示し、作品が作られた社会的条件を明示します。『残菊物語』脚本や『元禄忠臣蔵』のスチルなどが展示資料として含まれます。
第5章:第二の黄金期――大映京都時代(1950年代)
松竹離脱後、溝口は多くの配給・製作会社で作品制作を続けましたが、1952年の『西鶴一代女』が第13回ヴェネチア国際映画祭で国際賞を受賞して以降、1952〜1954年にかけて『雨月物語』『山椒大夫』と立て続けにヴェネチアでの入賞を果たし、国際的評価を決定的にします。これらは溝口後期の代表作として展示されます。
展示では各作品の海外版宣伝資料、受賞資料、上映台本、撮影現場のスナップなどを掲示し、国際批評の受容や海外配給の実際を示します。晩年の『赤線地帯』(1956年)についても衣裳スケッチや作品資料が紹介されます。
第6章:国際的評価と影響
ヴェネチアでの受賞以降、溝口の作品は日本映画の国際的な紹介を代表するものとなり、ヌーヴェルヴァーグやタルコフスキー、テオ・アンゲロプロスら世界の映画作家に示唆を与えました。本章では海外の宣伝資料のほか、溝口作品に影響を受けた諸作品の紹介を行います。
幅広い言語で作成された資料群を通じて、溝口映画の国際的な受容史と影響の広がりを可視化します。海外文献の抄録や翻訳資料も提示されます。
特集コーナー:溝口映画を支えたスタッフたち
各章合間に設けられた特集コーナーでは、脚本(依田義賢)、撮影(宮川一夫)、美術(水谷浩)、音楽(早坂文雄)など各職能に焦点を当て、それぞれの仕事を示す資料を集中的に展示します。個々のスタッフの旧蔵資料も多数公開されます。
ここでは制作現場での役割分担や、溝口の演出方針が具体的にどのように映像化されたかを、台本と完成映像の対照などを通じて分析します。
関連イベントとデジタル展示の構成
会場内のビジュアル展示は充実しており、実物資料のほか映像展示、デジタル資料、音楽展示を多数配置します。台本と完成映像を見比べられる展示や、撮影現場のスナップをまとめたビジュアル展示が来場者の理解を深めます。
デジタル展示は、当館の「アーカイブ中核拠点形成モデル事業」(運営:特定非営利活動法人映像産業振興機構〈VIPO〉)によるもので、オンライン・デジタル両面から資料にアクセスできる仕組みを導入します。
ゲストトーク(ギャラリートーク)
会期中には日本を代表する溝口研究者を招いたギャラリートークを実施します。展示品の解説や研究的な視点からの分析が予定されています。
- 開催日:2026年8月29日(土)/講師:佐相勉氏(溝口健二研究者)/場所:展示室ロビー(7階)
- 開催日:2026年10月31日(土)/講師:木下千花氏(京都大学大学院人間・環境学研究科教授)/場所:展示室ロビー(7階)
- 開催日:2026年11月14日(土)/講師:長門洋平氏(東京都立大学人文社会学部准教授)/場所:展示室ロビー(7階)
各回の詳細は後日、国立映画アーカイブのホームページ等で案内されます。
関連上映企画
展覧会期間中には上映企画も実施されます。東京国際映画祭との共催による「TIFF/NFAJクラシックス 没後70年 映画監督 溝口健二」が予定され、展覧会と連動した作品上映が行われます。
会期は2026年10月27日(火)—11月1日(日)、会場は国立映画アーカイブ 長瀬記念ホールOZU(2階)です。主催は国立映画アーカイブと東京国際映画祭。上映の詳細は後日発表されます。
開催情報、料金、アクセスおよび記事の要点整理
本展の会期・休室日・開室時間、料金体系、問い合わせ先等の実務情報を下に整理します。入場料には常設展「日本映画の歴史」の入場料が含まれます。団体料金や各種割引の条件、証明書の提示についても明記されています。
以下の表は本展で示された重要項目を一覧化したもので、会期中に必要な情報を迅速に確認できます。展覧会の主旨は、溝口の生涯と作品、制作スタッフの功績、国際的な評価を資料と映像で総合的に紹介する点にあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 企画名 | 没後70年 映画監督 溝口健二(英題 / Film Director Kenji Mizoguchi) |
| 主催 | 国立映画アーカイブ |
| 会期 | 2026年8月11日(火・祝)〜 12月13日(日) |
| 休室日 | 月曜日、9月8日(火)〜9月17日(木)、10月6日(火)〜10月11日(日)、11月24日(火)〜11月29日(日) |
| 開室時間 | 午前11時〜午後6時30分(入室は午後6時まで)。8/28、9/25、10/30の金曜日は午後8時まで(入室は午後7時30分まで) |
| 会場 | 国立映画アーカイブ 展示室(7階) |
| 料金 | 一般600円(団体480円)/大学生・65歳以上・高校生以下および18歳未満300円(団体240円)/障害者手帳所有者および付添者等の取扱あり。国立映画アーカイブのキャンパスメンバーズは無料 |
| 備考 | 料金は常設「日本映画の歴史」の入場料を含む。団体料金は20名以上。学生・65歳以上・障害者手帳所持者・キャンパスメンバーズは証明提示が必要。国立映画アーカイブ主催の上映会観覧券提示で1回に限り団体料金適用 |
| 関連上映 | TIFF/NFAJクラシックス 没後70年 映画監督 溝口健二(会期:2026/10/27〜11/1、会場:長瀬記念ホールOZU(2階)) |
| 主な出品資料 | 脚本、スチル、ポスター、衣裳スケッチ、デスマスク、撮影スナップ、海外宣伝資料、台本と完成映像の対照展示等 |
| ゲストトーク | 2026/8/29:佐相勉氏、2026/10/31:木下千花氏、2026/11/14:長門洋平氏(各回とも場所は展示室ロビー(7階)) |
| デジタル展示 | 「アーカイブ中核拠点形成モデル事業」(運営:特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO))によるデジタル資料展示を実施 |
| 問合せ | 050-5541-8600(ハローダイヤル) |
| 公式案内 | https://www.nfaj.go.jp/exhibition/mizoguchi2026/ |
本展は、溝口の劇的なキャリアと、その周辺で働いたスタッフたちの手仕事を豊富な資料で再現します。展覧会会場では視覚資料と映像・音響を組み合わせ、溝口映画の制作過程と表現の特色を包括的に理解できる構成になっています。詳細なイベント情報や最新の展示案内は、上記の公式案内ページで確認してください。