12月31日開業予定「米林邸」能美の窯業拠点に
ベストカレンダー編集部
2026年8月31日 07:59
米林邸オープン
開催日:12月31日
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1400年にわたる土と火の記憶を継ぐ場所としての出発点
株式会社CACLは、壊れた陶磁器片に漆塗りなどの伝統技術を掛け合わせて新たな価値を見出す活動を続けてきました。2026年8月31日付の発表によれば、その集大成かつ新たな挑戦として、石川県能美市内にある自社工房をリノベーションし、2027年度内に文化発信のための複合施設をオープンする計画です。
この拠点が位置する能美の地は、古墳時代に始まる須恵器生産から、珠洲焼、九谷焼へと続く窯業文化の源流のひとつとされます。工房周辺からは約1400年前、7世紀前半の辰口マルヤマ窯跡とみられる遺構が見つかり、須恵器のかけらが地中から出土するという事実が、現在の活動との不思議な連続性を示しています。
リノベーション対象の建物は、昭和から平成にかけて活躍した彫刻家・米林勝二氏の旧自邸兼工房で、素材感やディテールが残る築きの深い空間です。CACLはこの場所の歴史性と建物の持つ時間の痕跡を重視し、過去の創作の営みを受け継ぎつつ、地域や国内外の人々が集う「開かれた創造の場」を目指して計画を進めます。
施設の構成と設計方針—「米林邸(Yonebayashi-tei)」という名称
新しい複合施設の名称は、建物のルーツを引き継ぐ形で「米林邸(Yonebayashi-tei)」とされました。建築設計は永山祐子建築設計が担当し、これまでのCACLとの協働実績を踏まえ、素材の再利用や地域資源の活用を設計に反映していきます。
館内には以下の主要機能が設けられる予定です。用途ごとに空間を分けるのではなく、<制作・保存・体験・就労>が重なり合うことを意図した構成です。
- 漆芸工房:漆を用いた接合や造形の実践の場。
- 陶磁器片の保管・活用ラボラトリー:収集したかけらの分類・保存・研究を行う拠点。
- 体験型ミュージアムカフェ:能美古墳群や「土と火の文化」を紹介する展示と軽飲食を融合した場。
- 就労支援(B型)事業所:障がいのある方の就労機会を地域の産業と結びつける事業拠点。
- 定期プログラム:金継ぎワークショップ、焼き物文化の歴史体験や展示を含むイベント。
永山祐子は、これまで九谷焼のかけらを使ったテラゾーベンチ(玉川髙島屋S・C)や、能登瓦をLIXILと組んで建材化するなど、CACLと素材実験を重ねてきました。米林邸ではこれらの試行が「場所」そのものへと広がり、建物に残る時間や地域文化と人々の出会いを促す設計が進められます。
建材とアップサイクルの実践
米林邸の改修では、廃材や陶磁器片を建材やプロダクトに転換するこれまでの実績を生かす方針です。能登の黒瓦や九谷のかけらなど、地域に連なる素材を建築資源として活用する手法が設計に組み込まれます。
具体的には、既存の素材に新たな用途や美意識を付与するプロセスを設計段階から検討し、素材の持つ歴史やテクスチャーを建物内部や家具、展示什器に反映させる計画が示されています。
CACLの歩みとプロジェクトに込める問い
CACLの活動は、規格外として捨てられる陶磁器片に価値を見出すところから始まりました。代表の奥山純一は、陶磁器の破片と障がいのある人に向けられる視線に重なりを見て、株式会社CACLを設立しました。ここから「失われたもの」に対する再評価の試みが始まります。
主な活動は大きく三つに整理できます。いずれも素材や人材の再接続を通じて新たな表現や価値を生み出すことを目的としています。
- Rediscover project
- 輪島塗の技術を用いて破片同士を漆で継ぎ合わせるプロジェクト。修復を目指すのではなく、欠けたもの同士が出会うことで新たな造形や美を生むことを意図します。金沢21世紀美術館での展示や国際的な共同制作も展開してきました。
- KAKERA
- 震災や製造過程で生じた陶磁器片を回収し、建材やプロダクトへと転換する取り組み。ジバンシイのプレート制作、ハイアット金沢での5周年記念オブジェ、福島県双葉町のホテル「FUTATABI FUTABA FUKUSHIMA」などでの採用実績があります。
- CACL Factory
- 障がいのある方の就労機会と産地の人手不足を同時に解決する場づくり。就労継続支援A型事業所「CACL Factory」や、小松マテーレ構内の「CACLジョブスクエア in 小松マテーレ」などを運営しています。
これらの活動は単なるリサイクルにとどまらず、素材や背景にある記憶、作り手の技術を受け継ぎながら新しい関係性をつくる営みです。米林邸はそのすべてが混在し、問いを開いたままにする拠点として位置付けられます。
現場・地域・産業をつなぐ役割
関係者からのコメントも、プロジェクトの方向性を示しています。永山祐子は素材を通じた試行が場所へ拡張する点に期待を示し、石川県陶磁器商工業協同組合副理事長の北野広記は、CACLの取り組みが産地の人手不足や九谷焼の未来に意義があると評価しています。
LIXILの羽賀豊は、廃材の再利用にとどまらず文化や歴史を次へつなぐ活動である点を指摘し、多様な人々が交わることによる創造性の発露を期待するコメントを寄せています。
事業スケジュールと支援体制、発信の予定
本プロジェクトは、文化庁の令和8年度「文化資源活用事業費補助金(全国各地の魅力的な文化財活用推進事業)」に採択され、補助を受けながら開業準備を進める計画です。公告では、まず2027年2月頃に施設名称や空間概要をまとめた公式サイトをローンチし、その後2027年末までに複合施設の開業を目指す旨が示されています。
開業準備や今後の情報発信は、公式のインスタグラムアカウントで随時行われる予定です。最新情報は以下のアカウントで確認できます。
複合施設公式アカウント: https://www.instagram.com/yonebayashi__tei
開業に向けては設計・実施設計、素材調達、就労系事業所の体制整備、展示・プログラムの企画など多数の工程が並行して進行する見込みです。文化庁の補助は、文化財的価値との両立や保存・活用の好循環を目指す支援枠組みの下で行われます。
今後の見通しと留意点
発表では具体的な完成イメージの一部や運営方針が示されましたが、建物改修に伴う保存整備や地域調整、就労支援事業所の運用基盤の構築など、実務的な課題も残されています。それらは補助金の伴走支援や専門家の助言を得ながら進められる見込みです。
施設は単なる展示空間ではなく、⼀次産業や伝統⼯芸、福祉、建築といった多様な領域が交差するプラットフォームとして機能することが期待されています。
要点の整理
以下の表は、本記事で紹介したCACLによる「米林邸」プロジェクトの主要項目を整理したものです。施設の目的・機能・スケジュール・関係者等を一覧化しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 事業主体 | 株式会社CACL(代表:奥山純一) |
| 施設名称 | 米林邸(Yonebayashi-tei) |
| 所在地 | 石川県能美市内(自社工房をリノベーション) |
| 背景・歴史性 | 地域は須恵器生産に遡る窯業文化の源流。辰口マルヤマ窯跡(約1400年前)出土の事実あり。建物は彫刻家・米林勝二氏の旧自邸兼工房。 |
| 設計 | 永山祐子建築設計(これまでのCACLとの共同実績あり) |
| 主要機能 | 漆芸工房、陶磁器片ラボラトリー、体験型ミュージアムカフェ、就労支援(B型)事業所、ワークショップ等 |
| CACLの主な事業 | Rediscover project、KAKERA、CACL Factory 等(展示・プロダクト制作・就労支援) |
| 補助金・支援 | 文化庁 令和8年度「文化資源活用事業費補助金(全国各地の魅力的な文化財活用推進事業)」に採択 |
| スケジュール | 2027年2月頃に公式サイト(施設名称・空間概要)を公開予定。2027年末までに複合施設開業を目指す。 |
| 情報発信 | 公式インスタグラム: https://www.instagram.com/yonebayashi__tei |
以上が発表された計画の要点整理です。米林邸は、地域の長い技術と記憶を受け継ぎながら、素材・人材・技術の新しい出会いを生み出す場として設計されています。開業に向けた詳細やプログラムの内容は今後公式告知にて順次公開される予定です。