磯野真穂の新刊『社会が壊れるその前に』発売 孤独と競争を人類学で考える
ベストカレンダー編集部
2026年9月28日 13:21
書籍発売 | 開催日:9月28日
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メアリ・ダグラスの古典から現代社会を読み解く
人類学者の磯野真穂さんによる新刊『社会が壊れるその前に メアリ・ダグラスの人類学』が、2026年9月28日に新潮社から発売されました。刊行レーベルは新潮選書で、四六判変型ソフトカバー。本体定価は1,980円(税込)、ISBNは978-4-10-603953-9です。
本書が手がかりにするのは、イギリスの人類学者メアリ・ダグラス(1921-2007)の著書『ナチュラル・シンボル(Natural Symbols)』です。人類学がビジネス分野でも注目される一方、この古典は存在自体が広く知られているとは言いがたい一冊だといいます。刊行から約半世紀を経た議論を、現代社会を読み解く方法論として捉え直すのが本書の試みです。
ダグラスの議論が照らし出すのは、苛烈な競争社会や能力資本主義、そこから強まる孤独や不安です。また、ひとりひとりの価値を重んじる考え方と、民族や国家のような大きな存在に救いを求める考え方との間で社会が分断されていく様子も扱います。個人の力だけでは抗いにくい状況に置かれた人が、自分を超える何かに救済を求め、熱狂していくという見方が、現代の風景と重ねられています。
本書では「象徴」を軸に、セカイ系のようなジャンルの誕生や、推し活の広がり、自分の身体を変えることへの意識にも目を向けます。宗教や儀式の束縛から離れ、自由で優しくなったはずの社会で、なぜ強い不全感や孤独感が生まれ、終わりのない自己研鑽や社会変革へと人々が駆り立てられるのか。こうした問いを、人類学の古典と現代の具体的な現象を結びつけながら考察します。
象徴と境界をめぐる、磯野真穂さんの問題意識
磯野さんは刊行にあたり、『急に具合が悪くなる』と、それに続く『他者と生きる』の刊行後に抱いた違和感を紹介しています。偶然性や境界をなくすこと、複雑性に耐えることを称揚する本が献本され、そうしたテーマについて話してほしいという依頼も多く寄せられた一方で、分類や境界を設けること自体を問題視し、既存の制度を壊せばより善い社会が訪れるという期待も含まれていたといいます。
磯野さんが指摘するのは、分類や境界があるからこそ、そこにはまり込まない存在が価値を持ち、構造という必然があるからこそ偶然が光を放つという関係です。前者を否定すれば後者も消えてしまう。その点が、批判を急ぐ中で忘れられているのではないかという問題意識が、本書の出発点にあります。
約半世紀前に同様の問題を警告した人類学者として、磯野さんはメアリ・ダグラスを挙げます。ダグラスは象徴という観点から、人間が構造と非構造の間をどのように行き来し、社会を存続させてきたのかを、狩猟採集民から産業社会までを横断して論じました。本書はその議論を現代に即してアップデートし、「ひとりひとりが輝けば社会はよくなる」という価値観と、「国家や民族を守り抜けば社会はよくなる」という価値観が、どのような象徴のもとに立ち上がるのかを考えます。
「はじめに」では、日本国憲法第一章第一条に記された「象徴」という言葉を入口に、象徴とは何か、どう生まれ、人々をどう統合し動かすのかを問いかけます。磯野さんは、象徴の力が働くとき、人は論理ではなく情動によって動くと述べ、善い社会をつくろうとする歩みが社会の息吹を消してしまう可能性にも触れています。社会をよくしようとする試みさえ、社会を悪くしているように感じる人に本書が届けば、というのが著者の思いです。
新刊の発売にあわせて、「はじめに」全文と第三章冒頭の試し読みも公開されています。「はじめに」の題は「あなたは象徴の力を知っているか?」。象徴に巻き込まれている自分を内省することが、社会が壊れる前に考えるべきこととして提示されています。
著者の歩みと書籍情報
磯野真穂さんは長野県安曇野市出身の人類学者で、東京科学大学リベラルアーツ研究教育院教授です。早稲田大学人間科学部スポーツ科学科を卒業後、トレーナー資格取得を目指してオレゴン州立大学スポーツ科学部に学士編入しました。その後、自然科学のアプローチに違和感を覚えて文化人類学に専攻を変更し、同大学大学院で応用人類学修士号を取得しています。
IT企業で2年間の派遣社員を経験した後、早稲田大学大学院文学研究科に入学し、2010年に博士(文学)を取得。早稲田大学文化構想学部助教、国際医療福祉大学大学院准教授を経て、2020年から在野の研究者として活動し、2024年より現職です。専門は文化人類学と医療人類学です。
著書には『なぜふつうに食べられないのか:拒食と過食の文化人類学』『医療者が語る答えなき世界:「いのちの守り人」の人類学』『ダイエット幻想:やせること、愛されること』『他者と生きる:リスク・病い・死をめぐる人類学』『コロナ禍と出会い直す:不要不急の人類学ノート』があります。『コロナ禍と出会い直す』は第33回山本七平賞を受賞。宮野真生子さんとの共著『急に具合が悪くなる』は濱口竜介監督によって映画化され、今年のカンヌ国際映画祭で最優秀女優賞を獲得したことでも注目されています。
書籍の基本情報と、刊行元が案内する詳細ページは以下の通りです。価格、判型、ISBNを確認しながら、本書が扱うテーマとあわせて内容を把握できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 書名 | 社会が壊れるその前に メアリ・ダグラスの人類学 |
| 著者 | 磯野真穂 |
| 発売日 | 2026年9月28日(月) |
| 刊行 | 新潮選書(新潮社) |
| 造本 | 四六判変型ソフトカバー |
| 本体定価 | 1,980円(税込) |
| ISBN | 978-4-10-603953-9 |
| 書籍詳細 | https://www.shinchosha.co.jp/book/603953/ |
象徴の力を手がかりに、孤独や不安、競争、推し活といった現代の姿を人類学から考える一冊です。メアリ・ダグラスの古典を通して、社会の仕組みと個人の感情がどのように結びつくのかを見つめ直す内容となっています。
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